健康・医療

冬に陥りやすい「冷えむくみスパイラル」 その原因と日常のちょっとした動きでできる対策

むくみ
冷えむくみの原因と対策を医師が解説(Ph/photoAC)
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冷え性の人にはつらい、寒い季節がやってきました。夕方、ブーツを脱ごうとすると足がパンパンになっている、お風呂に入ったのに手足が冷え切って夜も眠れない…。それは「冷えむくみ」が原因かもしれません。医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんに、冷えむくみの原因と対策を聞きました。

冷えと運動不足が「冷えむくみスパイラル」を招く

冷えむくみとは、体が冷えることで体内に水が停滞してむくむ症状です。

「体が冷えると血液循環が滞りやすくなります。すると、血管の周りの結合組織に水分が少しずつ漏れていって、回収しきれなくなるとむくみが生じます。また、筋肉が硬直することでも血流は悪くなります。むくみは男女ともに起きますが、男性に比べると筋肉量が少ない女性のほうが血液を心臓に戻す力が弱いため水分が滞り、むくみやすいのです。

街並み
筋肉量の少ない女性の方がむくみやすい(Ph/photoAC)
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また、女性の場合は靴下やタイツを重ね履きしたり、ロングブーツを履いたりするなど、足首周囲が動きにくく筋肉を十分に使えない機会が増えます。すると血流が悪くなり、余分な水分や老廃物が溜まって、むくんでしまいます」(福田さん・以下同)

原因は冷えと運動不足

冷えむくみの主な原因は、冷えと運動不足です。冬場は「寒いので動かず運動不足になる→筋力が落ちて血流が悪くなる→冷えむくみになる→だるくなって動かずにいるとさらににむくむ」といった「冷えむくみスパイラル」に陥りやすくなります。

日常生活でちょっとした運動を意識するだけで、「冷えむくみ」対策に

冷えむくみ対策で一番効果的なのは「運動」だと、福田さんは話します。

「特に足の筋肉を使う運動が効果的です。ふくらはぎは“第二の心臓”と呼ばれ、重力に逆らって血液を心臓に戻すポンプの役割をしています。筋力が落ちるとポンプ作用が低下するので、ふくらはぎを鍛えることが血液循環の助けになります」

ふくらはぎに手をあてている女性
ふくらはぎを使うことが冷えむくみ防止に(Ph/photoAC)
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階段利用や家事中に“ながら運動”

筋肉を使うといっても、本格的な筋肉トレーニングをする必要はありません。

「通勤をしている場合、駅ではエスカレーターに乗らずに階段を利用する、オフィスでも数階なら階段で移動するなど、足を動かしましょう。隙間時間にアキレス腱伸ばしをするのも、ふくらはぎも伸びて効果的です。ストレッチをするだけでも筋肉が目覚めて、スムーズに動くようになります。

階段を上る女性
階段を使うだけでもながら運動になる(Ph/photoAC)
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デスクワークなどで座っている時間が長い場合は、座ったままかかとやつま先を上げ下げすると、多少は血行が良くなります。足元に台を置けるなら、その上に足を乗せて膝を伸ばすのもいいですね。可能なら、1時間に1回は立ち上がって歩いてください。

専業主婦のかたは、掃除をするときに足を意識してください。廊下の雑巾がけで床を蹴ったり、ガラス窓を磨くときに背伸びをしたりするのも、いい運動になります。近場で買い物をする際にも、荷物が重くない日であれば、車や自転車ではなく徒歩で行くのもいいですね」

湯船に浸かることで血流改善

外出するときには帽子や手袋を身に着けて、体を冷やさないようにしましょう。それでも冷え切ってしまった体は、バスタイムにしっかりと温めたい。

浴槽にお湯を注いでいる
湯船に浸かることが大事(Ph/photoAC)
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「湯船に浸かることで体が温まって毛細血管が広がり、血行が良くなります。また、水圧が足をマッサージしてくれます。体の表面だけではなく血管にも圧力が加わるので、ますます血液の循環が促進され、足に滞っている水分を心臓方向に戻します」

深部体温が下がるときに眠気が起きるので、就寝する1~2時間前に入浴すると、スムーズに眠ることもできます。

コロナ禍の“座りっぱなし生活”を見直そう

コロナ禍以降、動画配信サービスを長時間視聴する習慣がついた人や、在宅ワークで通勤していた頃より机に向かっている時間が伸びた人もいるかもしれません。これは、「冷えむくみ」になりやすい環境と言えます。

ストレッチ中の女性
1時間おきに立ち上がったりストレッチを(Ph/photoAC)
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「長い時間、座りっぱなしでいることは、筋肉代謝が低下するだけではありません。“第二の心臓”が停止しているので血流が滞り、血管トラブルが起きやすくなります。血栓が血管の中で詰まる静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)、肺で詰まるエコノミークラス症候群などにより、死亡リスクまで上がってしまうという研究結果もあります。

1時間おきに立ち上がるのがベストですが、画面を見ながらでもストレッチをして、座りっぱなし癖を解消していきましょう」

◆教えてくれたのは:医学博士・健康科学アドバイザー・福田千晶さん

医学博士・健康科学アドバイザー・福田千晶さん
医学博士・健康科学アドバイザー・福田千晶さん
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1988年に慶應義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、1996年より、フリーランスの健康科学アドバイザーとしてテレビやラジオ番組への出演、執筆、講演などで活動。『そもそも血糖値ってなんですか?』『高たんぱく質レシピ151』 (ともに主婦の友社)、『危ない! 命を縮める健康法』(アントレックス)など著書・監修書多数。https://fukuda-chiaki.com/

取材・文/小山内麗香

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