
「やる気が出ない」「めまいがする」といった症状は、春バテのサインかもしれません。春バテとは、春特有の気候の影響で生じる不調のこと。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、「春バテは生活習慣の見直しで改善する可能性がある」とのこと。そこで、春バテにおすすめの食材と漢方薬について教えてもらいました。
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春に起こりやすい「気象病」とは?
春バテが起こる原因は「気象病」だと考えられています。気象病とは、天気や気圧、気温、湿度などの変化によって引き起こされる不調の総称です。

症状は、頭痛、めまい、疲労感、関節痛、気持ちの落ち込みなどさまざまです。春は短い周期で気圧が変化したり、1日のなかでも気温の変動が大きかったりと、気象病が起こりやすい季節といえます。
気象病には「耳」が深く関係している
気象病の詳しいメカニズムは研究中ですが、耳の奥にある「内耳(ないじ)」が深く関係していると考えられています。内耳は気圧の変化を感知することが知られていて、「何らかの原因でセンサーが過剰に反応すると、自律神経のバランスが崩れ症状が出る」という説が有力です。

不規則な生活などによる自律神経の乱れも原因の1つ
また、普段から自律神経が乱れやすい人は気象病を発症しやすいとの報告もあります。自律神経のバランスを乱す要因として、就寝・起床の時刻が不規則、生活活動量が極端に少ない、欠食がある、ストレスなどが挙げられます。生活習慣の見直しをするだけでも、気象病の軽減が期待できます。
春の気象病対策におすすめの食材
気象病が心配な人におすすめの食材は「ごま」です。ごまには、ビタミンB1、B2、葉酸、ナイアシンなどのビタミンB群が多く含まれています。ビタミンB群は自律神経のバランスを正常化し、機能を維持する重要な役割を持つ栄養素です。

さらに、ごまはセサミンなどのポリフェノールが豊富。ポリフェノールには抗酸化作用があり、ストレスなどで受けるダメージから神経細胞を守る働きが期待できます。
ただし、体はカロリー(エネルギー)がなければ活動できません。たんぱく質、脂質、炭水化物のバランスを意識しながらしっかりカロリーを摂ったうえで、献立にごまを取り入れるのが、気象病の予防や改善に効果的です。
ごまの皮は意外と硬く、咀嚼や消化が不十分だと、消化・吸収されずにそのまま排出されてしまう場合もあります。そこで、おすすめしたいのがすりごまを使うこと。あらかじめ皮ごとすりつぶされているので、栄養の吸収率がアップします。

ごま和えや白和えなど野菜の和え衣にしたり、味噌汁などの汁物に振りかけたり、炒飯や担々麺のトッピングにしてもおいしく食べられますよ。
春の気象病対策には漢方もおすすめ
気象病にお困りの人には漢方薬もおすすめです。心と体全体のバランスを整える漢方薬は、自律神経の乱れの改善を得意としています。自律神経が整うことで、睡眠の質やイライラ、気分の落ち込みなどに悩まされない体質を手に入れることができます。
自然の生薬からできている漢方薬は、体に下記のようなアプローチを行い、根本から気象病になりづらい体を目指すことができます。
・気分の落ち込みを改善する
・興奮を鎮める
・血流をよくして自律神経の乱れを整える
・消化・吸収機能を改善して体の内側から心を元気にする

気象病でお困りの人におすすめの漢方薬2つ
・柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
「気(エネルギー)」をめぐらせることで、たまった熱を冷やして気持ちを落ち着かせる漢方薬です。ストレスによる精神症状や動悸、高血圧などに用いられます。
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
「気(き)」(エネルギー)、「血(けつ)」(栄養)をめぐらせることで、自律神経のバランスを整え、血行を促す漢方薬です。気分の落ち込みやイライラ、肩こりなどに用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。