健康・医療

実は「春は快眠しづらい」、医師が語るその理由と”薬に頼らず”睡眠の質を上げる方法

不眠イメージ
春は快眠しづらい季節? 睡眠の質を上げる方法をアドバイス(Ph/photoAC)
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「春眠暁を覚えず」という言葉があるように、温かくなる春はぐっすりと眠れるイメージがあるのではないでしょうか? しかし実は、春は快眠になりづらい季節だともいえるのです。そこで、この春に快適な睡眠をとる方法を、登録者数60万人を超えるYouTubeチャンネルで人気のドクターハッシーこと内科医の橋本将吉さんに教えてもらいました。

なぜ春は快眠しづらいのか

手足の冷たさや冷えからくる尿意で夜中に目覚めていた人は、寒い冬が終わって安堵しているかもしれません。ところが、春になったのに「夜中に目覚める」「起床時にスッキリしない」「昼間に眠気がある」という睡眠トラブルが解決しない人もいるのではないでしょうか。そこには春特有の“罠”があります。

「春は年度替わりで多忙になり、睡眠時間が不足しやすい季節です。また、人間関係や環境の劇的な変化があると自律神経が乱れます。すると睡眠の質が下がって、せっかく睡眠時間を確保していても、疲れや眠気がとれないことがあります。さらに、春はだんだんと日照時間が長くなります。眠りを誘うホルモンであるメラトニンは暗くなると脳内で分泌されるので、冬に比べて春はメラトニンの量が低下することも、寝付きにかかわります」(橋本さん・以下同)

朝と夜のイメージ
ストレスやメラトニン低下が睡眠に影響している(Ph/photoAC)
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花粉症が睡眠に影響も

花粉症の人は、1年のうちで最も寝苦しい季節かもしれません。

「春はスギなどの花粉、黄砂、PM2.5など、アレルギー症状を引き起こす物質が大量に飛散します。鼻詰まりで息苦しく寝付けなかったり、夜中にくしゃみで目を覚ましたりすることもあるでしょう。花粉症の薬の副作用で、昼間に頭がぼうっとしたり、眠気に襲われたりすることもあります」

スギ花粉イメージ
花粉症が原因という場合も…(Ph/photoAC)
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花粉症の場合は、室内にアレルギー物質を持ち込まない、できるだけ薬に頼らない工夫をすることで緩和できそうです。そのほかの理由の場合は、どんな解決法があるのでしょうか。

薬に頼らず睡眠の質を上げる方法

寝付けない、すぐに目覚めるので不眠症だと薬に頼る前に、生活習慣を整えてほしいと橋本さんは話します。

「メラトニンは太陽の光を浴びてから15時間前後に分泌されると言われているので、朝起きたらカーテンを開けてしっかり日に当たると、季節に関わらず夜に寝付きがよくなります。また、メラトニンの分泌は光によって左右されます。夜はスマートフォンやパソコンを控えよう、照明を暖色系の電球色にして部屋を暗めにしよう、と言われるのはこのためです」

運動や入浴も「いい睡眠」には欠かせない

運動をするのも、質のいい睡眠には不可欠です。

「どんなに眠れない人でも、体を動かして疲れたら熟睡できます。人はエネルギーを使いすぎると免疫力が下がって体が危険信号を出すので、回復するために眠るようにできているのです。眠れないと相談に来る患者さんに、昼間はなにをしているのか尋ねると“ぼうっとしてます”と回答されることは少なくありません。こういう患者さんは、運動することで睡眠が改善されます。

運動イメージ
適度な疲労が熟睡につながる(Ph/photoAC)
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また、昼間に眠たくなるからと、昼寝をしている場合もあります。どうしても眠たくなった場合は15分以内に抑えることがポイントです。30分以上昼寝をすると、夜の睡眠に関わります」

就寝前に入浴して体を温めることも、快眠につながります。

「湯船に浸かると体力を消耗しますし、ぬるめのお湯なら副交感神経を優位にして、寝つきがよくなります。また、私たちの体は体温が下がるときに眠気を感じるようにできているので、眠る2時間くらい前に入浴するのがベストです」

アルコールを睡眠導入剤代わりにしている人もいるかもしれませんが、お酒は睡眠の質を下げてしまいます。

ホットミルク
就寝前はアルコールはNG。ホットミルクなどの温かい飲み物を(Ph/photoAC)
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「お酒は寝付きはよくなりますが、眠りが浅くなってしまいます。カフェインなどの刺激物を多く含むコーヒーやエナジードリンクはNGです。睡眠前のおすすめの飲み物は、体が温まるホットミルクや、薄味の味噌汁。特に、体を温めながら穏やかな眠りへと導く成分である硫化アリルを含む長ネギを刻んで入れた味噌汁はイチオシで、何人もの患者さんから睡眠薬を取り上げてきました(笑い)」

◆教えてくれたのは:内科医 ・橋本将吉(ドクターハッシー)さん

内科医 ・橋本将吉(ドクターハッシー)さん
内科医 ・橋本将吉(ドクターハッシー)さん
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東京都出身。高齢者向けの訪問診療『東京むさしのクリニック』院長。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念の元、リーフェホールディングス(旧リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場 』(https://igakuseidojo.com/)の運営や、YouTuber『ドクターハッシー(内科医 橋本将吉)』として健康情報の発信。2022年9月に健康や医学を医師から学ぶ事のできるサービス『ヘルスケアアカデミー』 (https://healthcare-academy.co.jp/)をリリース。2か月で300人を突破。

取材・文/小山内麗香

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