気温の上昇に伴い出番が少なくなってきた暖房器具や加湿器。そろそろしまい始める人もいるでしょう。家電ライターの田中真紀子さんは、「正しくしまわないと、カビが生えたり、本来の加湿性能が発揮できなかったりと、来年のオンシーズンで稼働しづらくなる恐れがあります」と警鐘を鳴らします。田中さんに「正しいしまい方」を教えてもらいました。
加湿器はお手入れを怠ると、内部にカビが発生して不衛生に
春に押し入れにしまう季節家電には、冬に活躍した暖房器具や加湿器などがあります。
「これらは一度しまうと、次に使うのが10月以降と半年近く期間が空きます。ここできちんとお手入れしておかないと、汚れが落ちにくくなったり、内部にカビが発生して不衛生になったりします。場合によっては内部清掃や点検のためメーカーによる分解修理が必要になる場合もあります」(田中さん・以下同)
加湿器の水タンクやトレイは、クエン酸水に浸してから洗う
では、具体的にどうお手入れをしたらよいのでしょうか。
「まず、加湿器は内部をしっかり洗ってからしまいましょう。洗う場所は加湿方式によって異なりますが、主に水タンク、トレイ(水受け)です。気化式(温風気化式含む)の場合は、加えてフィルターものお手入れも必要です。
基本的には水洗いで問題ありませんが、加湿器は水道水を使うため、カルキが固まると水路が狭くなったり詰まったりしてしまい、本来の加湿性能が発揮できません。ですので、しまうときには40℃以下のお湯にクエン酸を溶かし入れ、1時間程度浸してカルキを落としやすくしてから、やわらかいスポンジで洗うのがおすすめです。クエン酸水の目安は3リットルあたり20g(大さじすりきり2杯程度)です」
カビが生えていたら重曹水に漬け込む
もしカビが生えていたら、さらなるケアが必要に。
「日常的に水洗いをしていればカビは生えにくいのですが、すでにカビが生えてしまっている場合は、重曹水に30分程度浸けてみましょう。重曹水は40~60℃のお湯4リットル程度に重曹約150g(大さじ約7.5杯)を溶かし入れればできます。いずれも最後は水でしっかりすすぎ、完全に乾かします。乾燥が足りないと、保管中に再びカビや悪臭を発生させる原因になりかねません。どうしてもカビが落ちない場合はパーツ交換も検討を」
暖房器具は汚れやホコリの除去が基本
一方、暖房器具は水を使わず、乾いた布や掃除機でのお手入れが原則。
「暖房器具の場合も種類によって異なりますが、基本的には全体に溜まった汚れやホコリを乾いたやわらかい布で拭き取ります。ファンヒーターは、フィルターにホコリが溜まっている場合があるので、あらかじめ掃除機で吸い取っておくとお手入れしやすくなります。汚れが落ちにくい場合は、ぬるま湯で薄めた台所用中性洗剤などに浸した布を固く絞って拭き取りましょう。分解できるところも種類によって異なりますが、手が届く範囲で行いましょう」
石油ストーブは、必ず灯油の抜き取りを
注意すべきが、石油ストーブ。
「石油ストーブで絶対に行わなければいけないのが、タンク内に残った灯油を抜き取ること。灯油は時間が経つと酸化したり変質したりしてしまうので、次のシーズンでそのまま使うと異臭の原因になるだけでなく、うまく稼働しなくなり、修理が必要になる場合もあります。
ポンプで抜き取った灯油を、『もったいないから』と次シーズンに使うのも厳禁です。最後まで使い切った場合でも、微量が残っている場合がありますのでスポイトなどで吸い取り、新聞紙に染み込ませて捨てましょう。油フィルターがある場合は、ゴミを取り除きます。石油ファンヒーターの場合は、フィルターのホコリ取りも忘れずに」
しまい場所の「湿度」にも要注意
さて、それぞれ汚れを除去したら、きちんと“保護”してしまいます。
「しまうときはホコリをかぶらないようビニール袋をかけ、購入時の箱に入れると傷や破損を防げます。カビ対策として、できるだけ湿気がたまりにくい場所がベターです。押し入れなどに入れる場合も定期的に換気するなど、湿気対策に努めましょう」
出し入れやお手入れが面倒な人は通年使える「1台〇役」な家電がおすすめ
ただ、こうしたステップを踏むことにわずらわしさを感じる人もいるかもしれません。そんな人は、1年中使える1台〇役型の家電製品を買うのもおすすめだと田中さんは言います。
「例えば加湿器なら空気清浄機付き、暖房なら、夏は扇風機になる製品があります。1台〇役型の加湿器を選ぶ際には、夏のエアコンによる乾燥対策で使う人もいますので、出しっぱなしでも目障りにならないデザインを選ぶといいかもしれません。
もちろん、月額料金を払って必要なときだけ借りる、家電のレンタルサービスを利用するのもひとつの手です。ただし、これらは長く使うことで価格的なデメリットを回収できる場合が多いので、短期間での貸し出しを繰り返すのはコスパが悪くなります」
できるだけ負担を減らしたい人は、やはり通年使える“1台〇役”タイプの家電を買うことが得策のようです。次の2点がその例です。