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樹木医として注目の後藤瑞穂さん「庭木を剪定するのは人間のエゴ」、その真意とは?

後藤瑞穂さん
樹木医である後藤瑞穂さんに仕事や剪定の仕方について伺った
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街中に当たり前のようにある樹木は、定期的にメンテナンスされている。その役割を担っているのが樹木医だ。雨の日も風の日も樹木の健康診断をしてカルテを作成している。そんな樹木医として注目を集める後藤瑞穂さん(55歳)に、仕事のやりがいや、樹木を傷つけない剪定のコツを教えてもらった。

樹木腐朽診断機器「ピカス音波計測器」を日本初導入

瑞穂さんは熊本県女性第1号の樹木医であるとともに、樹木腐朽診断機器「ピカス音波計測器」を日本に初導入した、この業界のトップランナーでもある。

「樹木医の業務は基本的に野外で行われ、力仕事も少なくありません。そのためか、約9割は男性です。女性は男性と比べて体力も筋力も少なく、仕事量が少なければ収入も減ってしまいます。そのハンデを補うためにも、最新の樹木診断装置を導入することを決めました。

ドイツのメーカーなのですが、問い合わせたらドイツからデモに来てくれて、最初は仲間と共同で購入しました。それまでの樹木診断といえば、中が空洞かどうかハンマーで叩いて、音や手応えで判断していたんです。ピカスなら音波による計測で画像化してくれるので、樹木を痛めることなく客観的に診断することができます」

後藤瑞穂さん
ドイツから最新の計測器を購入。女性でも無理なく仕事ができ樹木を痛める心配もないという
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かつては「勘」で診断されることも

過去には樹木医の「勘」で診断され、不確かな処置をされることもあった。

「木に聴診器を当てて、水が上がってくる音で健康か判断する偽の業者もいました。木の中で水が進むスピードは、1時間に30cmぐらいなので、ゴウゴウとかサラサラとか音がするはずないんです。昔はそれを真剣にやっていたわけですね。

間違った処置でいうと、空洞にコンクリートや土などを詰めること。かえって湿気がこもり、腐朽が拡大してしまいます。本来は腐朽部を除去して殺菌乾燥を行い、殺菌剤を塗布する必要があります」

庭木を剪定するのは「人間のエゴ」

瑞穂さんはハウステンボス建設事業、鎌倉樹ガーデン景観アッププロジェクトなど、さまざまな企画に携わってきた。そのなかでも印象深いのは、2019年の鹿児島県奄美群島瀬戸内町の諸鈍デイゴ回復事業だという。

「諸鈍の海岸線には、樹齢300年余りの大木を含む62本のデイゴ並木があって、町文化財に指定されています。映画『男はつらいよ』のロケ地としても知られる観光名所です。このデイゴの木は本来85本あったのですが、外来種デイゴヒメコバチやキクイムシによる被害などで衰弱し枯死して減ってしまったんです。

過去に医師である祖母が赴任していたこともあり、奄美大島にはご縁がありました。最初はボランティアで回復事業をしていたのですが、仕事として取り組めるようになって、今ではライフワークになっています。デイゴたちはかなり元気になりました。地元の方には感謝していただけるし、5月ごろに深紅の花を咲かせると、言葉にできないくらい幸せな気持ちになります」

後藤瑞穂さん
弱った木が元気になることはこれ以上ないほどの喜び
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そんな貴重な保存樹から庭の大木まで扱っている瑞穂さんは、庭木を剪定するのは「人間のエゴ」だと話す。

「木は何も足し引きしない自然の姿が完全形なんです。大きくなって邪魔だから切るというのは人間の都合です。みんながそういう意識に変わってほしいと思っています。

みなさん木の枝や葉を、人間でいう髪の毛のようなものだと思っているんです。切っても血が出ないし痛みもない、また伸びるものだって。でも枝や葉っぱは“腕” や“口”なんです。切れば傷つくし、そこから菌が入れば腐ってしまう」

できるだけ樹木を傷つけない剪定のやり方

とはいえ、庭木を伸びるまま放置するわけにはいかない。できるだけ樹木を傷つけないポイントを聞いた。

「コツは、枝の途中で切るのではなく、分岐の元で切るようにするとダメージが少なくすみます。時期は冬がいいですね。春夏の葉が茂っている時期は植物は光合成をしていて、エネルギーを作って蓄えています。それを切ってしまうと、エネルギーが作れず枯れてしまうわけです。人に例えると、血液不足になるわけですね。

また、切ったところから菌が入り込むと樹木を腐らせしまうのですが、冬は比較的、菌が少ない。ですから、剪定をするなら冬がおすすめです。できればプロに任せていただきたいのですが、枝を切る位置や時期を知っているだけで、かなり樹木の負担を減らせます」

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