ひと昔前に耳にした「定年後は悠々自適な暮らしを」は、いまの65才以上には通じない。物価高で収入は上がらず、老後2000万円問題に危惧、日々の窮屈な生活にうんざり。旅行なんて夢のまた夢――と思っているあなたに贈りたい! 65才以上だからこそリッチな旅をリーズナブルに楽しめる裏技があるんです。乗り鉄歴約50年、“オバ記者”こと野原広子さん(67才)に、その方法を聞きました。
鉄道旅は「大人の休日倶楽部」を使い倒す
ライターの野原広子さんは、乗り鉄歴約50年というまさに“鉄人”。鉄道旅が大好きな野原さんが「使い倒している」というのが、50才から入会できるJR東日本の「大人の休日倶楽部」。入会すると、年3回指定される期間中に東日本・北海道全線が5日間乗り放題になる。さらに65才以上なら全国のJRで入会できる「ジパング倶楽部」の割引まで適用される。
「JR東日本と北海道の全線が新幹線も含めて5日間乗り放題で2万6620円よ。使わない手はないでしょ」(野原さん・以下同)
野原さんが実践する「大人の休日倶楽部」の使い倒し方は、“日帰り旅行”に何度も行くのがポイント。
「5日間乗り放題だからといって、3~4泊しようとすると旅費が高くなるし、旅のハードルが上がるでしょ。そもそもこの年齢になったら夜は自分のベッドで寝たいじゃない? だから私は期間中、日帰り旅を繰り返しているというわけ」
「サフィール踊り子」に乗って伊豆日帰り“オバ旅”のリアル旅程表
◇11:00 出発
東京駅から「サフィール踊り子」に乗車。
◇12:36 伊東着
道の駅「伊東マリンタウン」で日帰り温泉へ(平日20時まで大人1000円)。マッサージを受けたり、3階の休憩室で本を読んだり、昼食を食べて買い物をしたり。
◇17:00頃 帰路へ
帰りは普通列車のグリーン車でのんびり帰路に。超豪華な列車とちょっと豪華な普通車のどちらも楽しめる。
野原さんの5日間のスケジュールはこうだ。1日目は早朝に東京駅から上越新幹線に乗り新潟県・越後湯沢駅へ。朝食を食べて日帰り温泉に入り、エキナカの「ぽんしゅ館」で唎酒をしたら、日本酒や米を買って帰宅。2日目はこれまた早朝から山形新幹線に乗車。かみのやま温泉駅で降りて共同浴場で温泉を堪能したら、JR奥羽本線と仙山線(東北新幹線でも)を乗り継いで仙台へ。昼食を楽しんだら、秋田新幹線で秋田駅へ。ここで米や野菜を購入して帰宅。3~4日目は体を休めるため、旅は一時中断。
「65才を過ぎると体力が続かないから、旅のために無理はしないようにしているの」
とはいえ、この休み中でも、東京―大宮間など、近場の移動に新幹線を使い、贅沢に過ごす。そして5日目は東北新幹線で新青森駅まで行き、駅近くの市場などで新鮮な魚介類を購入。
「本来なら片道だけで2万円前後する新幹線。これを贅沢に活用して出かけるんだけど、お土産に買って帰るのは200~300円の魚介のアラ(笑い)。そうやって買い集めた米・酒・魚介を調理して、自宅で一杯やりながら旅をしめくくるのが醍醐味なのよ。とにかく“旅に行くぞ”と気合を入れて初日から飛ばしちゃだめ。私の場合の旅って日常の一部。新幹線に乗って全国のスーパーマーケットに買い出しに行く感覚なのよね」
「サフィール踊り子」でのひとり旅がいま最高!
とにかく電車に乗ること自体が楽しいという、鉄道オタクの野原さん。最近ハマっているのが、6人収容の個室をひとりで占有するという超贅沢な鉄道旅だ。
「東京と伊豆を繋ぐ観光特急列車『サフィール踊り子』はすべてがグリーン車。どの席に座ってもリッチな気分が味わえるんだけど、そもそも予約が取れない。だからこまめにみどりの窓口(「ジパング倶楽部」を利用して運賃30%引きで予約するには、みどりの窓口での手続きが必要)で聞いているんだけど、この3月に6人部屋の個室が取れたの!」
個室をひとりで使用した場合の個室料金は1部屋1万8240円。「大人の休日倶楽部」でも割引されないが、運賃は30%引きになるため、往復で3220円になったという。
「個室にはコンシェルジュがつくの。まさに動く高級ホテルだったわ。せっかくの旅なんだから、誰かに気兼ねすることなく、好き放題したいじゃない」
65才からの旅は、ひとりで気ままにストレスなく、そしてお得に、というのがいいようだ。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
取材・文/番匠郁
※女性セブン2024年7月25日号