
こんなことで病院に行くべきではないかも──そう悩んでいる間に、病気は静かに進行しているかもしれない。今回は専門家に、頭から足先まで「放っておくと危ない痛みと違和感」を部位別に取材した。【全3回の第3回。第1回から読む】
「お腹」夜の痛みは内臓系の病気を疑う
消化不良や食べすぎなどと片づけがちなお腹の痛み。しかし、腹部には消化器や血管など生命維持に不可欠な臓器が集まっているため、さまざまな病気が潜んでいる可能性がある。きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんが指摘する。
「お腹が急激に痛くなる場合は大動脈解離や腸ねん転、卵巣ねん転など重篤な病気が考えられます。放置するのは危険なので、ためらわずに病院で診察を受けてください」
病気の種類を見分ける重要なヒントになるのは、痛み方や症状が出るタイミングだ。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんが言う。
「胃やみぞおちあたりがきりきり痛むなら、胃・十二指腸潰瘍の可能性がある。空腹時や食後すぐに痛みやすいのが特徴です。進行して胃や腸に穴があくと、猛烈な痛みに襲われます」

昼間は平気なのに、寝る前になると必ずお腹が痛くなる。そんな症状をがまんしてやり過ごすのも危険だ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。
「“夜だけ痛い”“寝るときに痛む”場合は、気をつけた方がいい。夜は体がリラックス状態になって、副交感神経が優位になるので、日中に意識していない痛みや違和感が出てくることがある。夜だけ咳が出ることがあるのはそのためです。
夜の痛みは胃腸の動きが変化することにより、内臓系の病気の影響が出やすくなったからかもしれません。潜在的な病気が隠れている可能性があります」
がんでは、出血が重要なサインとなる。東京大学医学部附属病院の放射線科特任教授・中川恵一さんが指摘する。
「性行為後の出血は子宮頸がんが疑われます。血尿は膀胱がん、腎臓がんの可能性があり、見てすぐにわかる鮮紅色のものから、黒茶色、薄いピンクがかったものまである。胃がんや大腸がんなら血便です。胃からの出血なら便の色は黒くなり、肛門に近い直腸がんなら赤い血便になる。血便を痔だと決めつけないこと。がんは痛みが出にくいので、痛くないからといって違和感をそのままにしないことです」
「手・足」握力の低下やしびれは要注意
手足の痛みやむくみ、冷えは「血の巡りが悪い」「年のせい」と考えがちだが、こうした末端の異変こそ全身の「赤信号」かもしれない。足がむくむときは、心臓か腎臓の病気の可能性がある。菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁さんが語る。
「心不全で血液が心臓に戻りにくくなってむくむ場合と、腎機能が悪化して血液中のたんぱく質が尿に漏れてむくむ2パターンがあります」
靴下の痕がくっきり残る、朝起きてもむくみが引かないといったときは、心臓や腎臓が悲鳴をあげているかもしれないということ。老化で足腰が弱くなったと思っていたら、大きな病気だったということもある。
「足の動脈硬化が進んで血管が詰まる閉塞性動脈硬化症は、症状が足の痛みやだるさなので、老化のせいにしがちです。歩いているとふくらはぎが痛くなって歩けなくなり、しばらく休むと歩けるようになるが、また痛くなるという人は、閉塞性動脈硬化症かもしれません」(菅原さん)

菅原さんは手や腕のまひも軽視すべきでないと言う。
「体の片側がしびれたり、動きが悪いときは、脳梗塞の可能性がある。握力の低下や手にしびれが出たら頸椎ヘルニアも疑われます」
爪の付け根が盛り上がって丸くなり、指先がスプーンのように形が変わる「ばち指」も、大病のサインだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。
「肺がんや間質性肺炎などになると、指先の柔らかい組織が異常に増殖することでばち指が引き起こされると考えられています」
体の異変を見逃さないために何よりも覚えておきたいのは、自己判断しないこと。今日感じた違和感を気のせいで片づけず、体の声にしっかり耳を傾けよう。



※女性セブン2025年12月4日号