
「説明言葉やナレーションが少ない」「目線やしぐさの演技が多い」など、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は従来の朝ドラとは逆の演出で人気を博し、朝から視聴者をテレビに釘付けにしている。小泉八雲の妻・セツをモデルに描いたストーリーは、さまざまな悩みを抱えた現代人の胸を打つ。制作統括の橋爪國臣プロデューサーに取材し、作品の魅力を深掘りする。
大反響のオープニング裏話 「秘密の松江ロケ」で自然体に
主題歌・ハンバート ハンバートの『笑ったり転んだり』に乗せ、写真家・川島小鳥氏によるトキとヘブンのツーショット写真が流れるオープニング映像も話題に。

撮影は物語の舞台・島根県松江でのオールロケで行われた。川島氏に自由に撮影してもらうため、撮影場所にはスタッフを一切立ち入らせず、川島・高石・トミーの3人のみに。トキとヘブンのこれから先の幸せを感じることができる、自然体な写真に仕上がっている。

橋爪氏によると「もともと川島さんにはポスター写真のみ撮影してもらう予定だったのが、いい写真がたくさん撮れたので、オープニングにも使うことに決めた」そう。
「ハンバート ハンバートさんは、渡していた台本をあえて読まずに歌詞を作ったそうです。すると見事に『ばけばけ』の世界観にマッチしていたので、映像は説明しすぎず、静止画で充分だとも思いました。曲も歌詞も写真も、いい連携が取れていると思います」(橋爪さん)。
念願の紅白初出場!

主題歌を担当する夫婦デュオ、ハンバート ハンバートが『第76回NHK紅白歌合戦』に初出場。妻の遊穂は記者会見で「例年、家で見るものだと思っていたので、緊張して寿命が縮むのでは。本番まで体調に気をつけたい」コメント。
《時代考証の細かさ》史実をさりげなく表現
時代考証が細かく、史実をさりげなく表現しているのも本作の魅力の1つだ。
明治初期は半襟を見せるのが流行

登場する女性たちの衣装で気になるのが半襟。現代の着付けに比べ広すぎるが、当時は刺繍や柄入りの半襟が流行し、その柄を見せるために半襟を広くしていたのだという。

宍道湖の朝日に礼

穴道湖に昇る朝日を拝むシーンは小泉八雲が著書に記した通りの拝み方。
「すべてを史実通りにできるわけではないが、八雲さんとセツさんの精神性は汚さないように意識しています」(橋爪氏)
割子そばは四角い器

佐野史郎演じる島根県知事・江藤が食べていた割子そば。現代は丸い器で食べるのが一般的だが、明治以前に使われていた四角い器を再現。
今後はラブストーリーが加速!プロポーズのシーンは美しいものに
橋爪氏は、制作にかける思いをこう語る。
「いままでの朝ドラは、朝の忙しい時間にさまざまな年代の人が見ることを念頭において、わかりやすさが大事とされてきました。でも今回われわれは、時代に取り残されてしまった市井の人たちの生き様をリアルに描きたかった。説明をあえて省略したり、家のセットに屋根を設置して、明るすぎない光を演出しています。王道の逆をいく内容は、放送するまではドキドキしていましたが、好評でうれしいです」
役者陣の演技も見どころだ。
「髙石さんは、演技をしていないような自然体な演技が魅力。トミーはわれわれも知らなかった小泉八雲の資料まで読み込み役作りをしています。そんな2人の演技を、吉沢くんが助演としてしっかり受け止めてくれています。英語も猛特訓して流暢に話しています」
気になる今後の見どころは?
「いよいよトキとヘブンのラブストーリーが加速していきます。特にプロポーズのシーンは美しいものが出来上がったので、楽しみにしていてください」

連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜~土曜 NHK総合午前8:00~8:15ほか
※土曜は一週間の振り返り
取材・文/井上明日香
※女性セブン2025年12月11日号