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《追悼》家族と将棋を愛した加藤一二三さん 「20歳で結婚」「対局前にステーキ」「暴走気味の子育て」「教会で結婚講座」…惜別の盤外エピソード 

肺炎のため86才でこの世を去った加藤一二三さん
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「ひふみん」の愛称で親しまれた将棋棋士・加藤一二三さんが1月22日、肺炎のため86才でこの世を去った。62年の棋士生活で生み出してきた名勝負の中でも、2016年12月の藤井聡太六冠(23才)との対局は語り草だ。

「それまでの加藤さんの記録を塗り替え、史上最年少の14才2か月でプロ入りした藤井さんのデビュー戦という、運命的な対局でした。

 結果は藤井さんの快勝。対局中の加藤さんについて、“おやつを食べる仕草がかわいらしかった”と述べた藤井さんに対して、加藤さんは“デビュー戦なのにすごい余裕です”と感服していた。60才以上年下から“かわいい”なんて言われたらムッとしそうなものですが、加藤さんの度量の大きさが表れていました」(将棋ライター)

 勝負師の半面、バラエティー番組で見せた柔和さのように、家庭的な顔も持ち合わせていた。中学校時代に知り合った夫人は、すでにプロ棋士として活動していたため学校を休みがちだった加藤さんに、授業のノートを届けてくれた。結婚は20才のとき。対局前は決まって、夫人の手作り料理で送り出された。

「牛肉のステーキに、にんじんやじゃがいも、クレソンが添えられた勝負メシでした。加藤さんは常々、奥さんの手料理が“パワーの源だよ”と話していました」(前出・将棋ライター)

 対局に勝った日には、電話でいの一番に夫人に勝利を報告。負けた日には、「また、頑張ればいいと思うよ」という夫人からの励ましに奮い立った。

「2017年6月の最後の対局では、記者会見や対局相手と戦いを振り返る感想戦をすることなく帰宅しました。『引退する』ことを最初に夫人に報告するためでした」(前出・将棋ライター)

 夫人とは、1男3女に恵まれた。三女は長年、加藤さんのマネジャーを務め、将棋はもちろん晩年のタレント活動を支えた。次女は仙台白百合女子大学の学長を務めている。

「長男は医療系の仕事だそうで、長女はとあるヨーロッパの国の在日大使館に勤めており、その国の文化を日本に広める仕事をしているそうです」(将棋関係者)

藤井六冠(右)との対局は将棋の歴史に残る一局だ
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 加藤さんは言うなれば“元祖イクメン”だった。

「対局のある日でも、お子さんを幼稚園に送り届けてから会場に向かうこともありました。そういった日は、不思議と指す手が好調だったといいます。“子供たちがつまずいて転ばないように、道に落ちている石をどかしていた”という子煩悩な話もあるくらいでした」(前出・将棋関係者)

 子育てでもわが道を進む加藤さんは、時に“暴走気味”でもあったという。

「運動会や授業参観などの学校行事に参加するのは当たり前。お子さんの大学入試や、就職試験でも会場に入る一歩手前までついていったそうです。さすがにお子さんたちも戸惑ったようですが、加藤さんなりの愛情表現だったのでしょう」(前出・将棋関係者)

 敬虔なクリスチャンだった加藤さんの通夜と告別式は、都内の教会でしめやかに執り行われた。

「洗礼を受けたのは加藤さんが30才の頃。対局前日に教会に行ってお祈りすると、素晴らしい将棋が指せたことで“神様はいる”と確信し、以来お祈りはもちろん、教会で結婚を予定しているカップルに夫婦のあり方や体験談を話す『結婚講座』も続けていました」(加藤さんの知人)

 家族と将棋を愛した勝負師は、かつてあるインタビューで、《将棋をやめたいと思ったことは一度もありません。(中略)一番いい手を考えているときが何より楽しいのです。単純な勝ち負けの問題ではありません》(『THE21』、2018年3月号)

 と語っていた。天国でも、次なる一手を模索しているのだろう。

女性セブン2026212日号 

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