
思いがけない病気やけがで、日々の生活は一変する。先が見えない闘病生活の中、一度絶望を味わった人たちはなぜ立ち直ることができたのか、その強さはどこにあるのか。壮絶なリハビリを経て、社会に復帰した体験を聞いた。
「手術後、それほど時間もかからず普通に歩けるようになると思っていましたが、想像以上にリハビリはつらかったです……」
そう振り返るのは歌手の伊東ゆかりさん(78才)。中尾ミエ(79才)、園まりさん(享年80)とともに「3人娘」として人気を博した彼女の股関節が悲鳴をあげたのは2015年の夏だった。
「右足の付け根あたりが急に痛くなり、右足を地面につけただけで激痛が走りました。痛み止めで一時は収まったけど、年が明けるとがまんできない激痛に襲われ、整形外科を受診したら様子を見ましょうと言われました。けれど、痛みが止まらないのでセカンドオピニオンをとってみたら、骨が粉々に砕けたレントゲン写真を見せられて“大腿骨頭壊死です。すぐに手術した方がいい”と告げられました」(伊東さん・以下同)
2016年10月、股関節を人工関節に交換する手術を受けると、リハビリ開始。「手術すれば治るでしょ」と安易に考えていた伊東さんにとって地獄の日々が始まった。
「関節を置き換えた右足がすごく痛くて重かったけど、すぐに動かさないと筋肉が固まるからと手術の翌日からリハビリが始まりました。担当の理学療法士さんは顔は優しいけれど指導は厳しく、“上がらなくてもいいから、まず30回足上げをしましょう”と告げられた。でもね、自分では足を上げようと思っても神経に伝わらないのか、どうしても上がらない。あまりに足が動かないから、元通り歩けるようになるのか不安になりました」
リハビリをきちんと行わないと回復に時間がかかり、後遺症が残ることもある。1日30分のリハビリは日を追うごとにハードになった。

「あまりにキツいから先生がいない隙に足を上げる高さをちょっと低くしてラクしたら、遠くから見ていて“ちゃんとやってください! 早く歩きたいでしょ”と怒られました(苦笑)。“お部屋でも足上げをしてください”と言われて、先生が抜き打ちで病室に来ることもありました」
多少足が上がるようになると歩く練習が始まった。
「これがまた大変で、“右足を出したら左足を出す”という自然な歩き方をなぜか忘れているんです。だから右、左と意識して足を出し、慣れてきたら短い階段を歩く練習をしました」
入院2週間である程度歩けるようになると、退院して自宅でリハビリを始めた。リハビリ生活を支えたのは愛犬のヨークシャー・テリア「トム3」だった。
「ひとりだとリハビリをサボってしまいがちですが、トム3を散歩させる必要があるので毎日外出していました。杖をついて歩く私の状況をトム3もわかっていてゆっくり歩いてくれたのでリハビリがはかどり、手術から1か月後には舞台に復帰できました。トム3は私の命の恩人です」
現在は3か月に1度の定期検診のほか、リハビリを兼ねて電車移動を心がけている。目標は「舞台に上がり続けること」ことだ。
「苦しいリハビリを続けられたのは、やっぱり仕事をしたかったからです。自分の足で舞台のセンターに立つことを目標にがんばれたから、同じような症状で苦しむ人にも目標を持つことをすすめます。いまもピンヒールを履いている女性を見るとうらやましくて、自分も高いヒールを履きたいという憧れがあります。だけど、まだ無理だから安定する低めのヒールでがまんしています」
※女性セブン2026年3月26日・4月2日号