
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第3話:いじめられる原因と父の話【前編】
「どん!」
克弥は背中に衝撃を受けてしゃがみ込んだ。見ると足元にこぶし大の石が転がっている。終戦から12年が経った昭和32年、ある日の小学校の帰り道である。
「やーい白ブタ!」
振り向くといじめっ子たちが克弥めがけて石を投げてくる。復興から発展へと国民の生活向上を謳う時代だったが、ここ一色の田舎町では皆が食うに困り、痩せ細っていた。そんな中でただ一人、裕福が故に色白でぽっちゃりとしていた克弥のことを町の誰もが「白ブタ」と呼んだ。大人も子供もである。それ故、年賀状は住所を書かずとも「一色町 白ブタ様」と書けば克弥の元に届いた。
石を投げたいじめっ子たちが走り寄り、うずくまる克弥を農水路に蹴り落とす。泳げない克弥がもがく。実に悲惨だが、これが当たり前の毎日だった。いじめの原因は容姿や裕福さへのやっかみだけではない。克弥の性格にも大いに問題があったのだ。
「どうだん、まいったかん?」
いじめっ子が問い詰める。
「お前ら愚民になんぞまいるもんか!」
克弥は、実に良くないことにクラスメートはおろか町中の人を「愚民」と呼んでいた。しかもこれまた良くないことに「グミン」の意味がその町の子供には分からない。仕方がないから親に聞くと親も分からない。翌日、いじめっ子たちの家族が総出で克弥を待ち伏せて、愚民の意味を問い詰めた。克弥は得意げに答える。
「愚かな民と書いて愚民。言うなれば諸君は猿のようなものだ」
克弥はその場にいた全員に袋叩きにされた。

家康のおかげで江戸時代が終わるまで年貢を免除された高須家は、戦後の農地改革で多くの土地を奪われたがそれでも裕福で、克弥はおぼっちゃまとして育てられた。豊かな食事が彼に脂肪を与え、専属の家庭教師が知識を与えた。得た知識はどうせなら大勢の前で披露したい。授業は格好の舞台だった。
「先生、またそこ、答えが間違ってますよ。僕は平気ですが、このままでは先生のバカが皆に感染るのではないかと心配です」
実に嫌な子供である。小学1年生の時の担任は30代前半の女性だった。その先生が克弥に近寄り、問いただす。
「今、何て言ったの?」
「先生はバカだと言いべヒッ! ブバッ! ヒゲッ!」
言い終わる前にビンタが3発飛んできた。静まり返る教室。睨み合う先生と克弥。すると突然先生の目が潤み、滴となって落ちた。
「ねえ、高須君。何で先生がぶん殴ったか分かる?」
正解は「愛の鞭」という問答に、克弥は大声で答える。
「分かります。先生はオールドミスのヒステリーで、嫁に行けない苛立ちを僕にぶつけているからです」
先生はブルブルと震え出し、絶叫した。
「ちがう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
そして克弥の顔面に前蹴りを入れた。授業以外はいじめっ子と戦い、授業中は先生と戦うのだから克弥は戦いっぱなしである。
そんな訳で一歩家の外に出ればこの町には克弥の味方は誰もいない。まさに自業自得なのだが、こんな過酷な境遇でも克弥は態度を改めることなく胸を張り、道の真ん中を歩いた。
「お前は特別な子なんだ」
事あるごとに聞かされる祖母、イマの教えが克弥にこの異常なる精神力と、なぜか「人をとりあえず見下す」という間違った思考を与えた。また父親の存在も克弥の性格に大きな影響を及ぼした。(後編につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年6月18日号
※作中には、現在では不適切な表現がありますが、当時の会話を再現する意図でそのまま掲載しています