英ケンブリッジ大学の研究チームによる最新の調査で《食欲が強いか弱いかは、遺伝子で決まる》ことが明らかになった。
また、朝昼晩の食事のバランスが崩れて夕方以降に集まってしまう夜間摂食症候群の人が増えているという。
食べ物を活用して食欲を制御する工夫を
“遺伝子”と“夜食症候群”。2つの最新研究に通じるのは、「食欲」である。遺伝子研究に詳しいKDDI総合研究所の小林雅一さんが言う。
「もちろん肥満になるかどうかは、代謝の高低や脂肪細胞の多寡も関係するが、食欲を抑えられるかどうかが大きい。食欲が旺盛であればあるほど食べる量は増え、脂肪がついてメタボになりやすいが、食欲がなければ必要最小限の食事で済み、むだなカロリーを摂取することはありません」
つまり食欲さえうまく抑制できれば、つらい運動や煩わしい食事管理をすることなく、ダイエットできるということ。工藤内科でダイエット外来を行う工藤孝文さんは食欲を抑える方法として、緑茶とコーヒーを1:1で割った「緑茶コーヒー」を推奨する。
「緑茶とコーヒーには自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを安定させる作用があるため、割って飲むことで、食欲を抑える効果が期待できます。さらに双方に含まれるカフェインや、コーヒーのクロロゲン酸、緑茶のカテキンを掛け合わせることで、脂肪燃焼効果も高まるうえ、緑茶には神経を鎮める作用のあるテアニンも含まれており、抗ストレス作用により過食を抑制してくれる効果もあるのです」
お腹が空いてイライライしたら、まずは緑茶コーヒーを一杯飲んでみよう。工藤さん自身も、緑茶コーヒーを飲み続けて10か月で25kgの減量に成功。ほかにも、実践したダイエット外来の患者100人以上が、1か月で平均約6kgダウンに成功しているという。
緑茶コーヒーを飲みほしてもなお何か食べたくなったら、「おからヨーグルト」の出番だ。
「幸せホルモンの“セロトニン”の90%は腸内にあるため、腸内環境を整えるためにもヨーグルトは効果的。おからを加えると、胃の中で5倍に膨らむので満腹感が得やすくなります」(工藤さん)
マインドフルネスによって食欲を止めることも
瞑想することで自分の食欲と向き合う「マインドフルネス」によって食欲を止める方法もある。
工藤さんは簡単にできる方法として「レーズン・エクササイズ」を推奨する。1粒のレーズンを通じて“食べる”という行為を見つめ直すことが目的で、粒チョコや小さめの梅干しなどで代用することも可能だ。
「まず、レーズンを親指と人差し指で挟み、押したり見る角度を変えたりして、その弾力や表面の形、色、光の反射具合、凹凸などをよく観察してください」(工藤さん)
次に手のひらに置き、転がして動きや表面の様子などをじっくり観察する。再び親指と人差し指で挟み、ゆっくりと鼻に近づけながら、どんなにおいがするか、どのくらいの強さなのかを認識する。終わったら、今度はゆっくりと鼻から離しながら同じように観察する。
「その後、レーズンをゆっくりと口に含みます。最初はかまずに舌の上で転がし、表面の状態や風味を意識してください。さらに、ゆっくりとかんでレーズンの風味が口の中いっぱいに広がっていくのを味わったあと、かみながら口当たりが変化していくのを感じ取る。そしてゆっくりとのみ込み、のどの奥から食道、胃へと移動していくことを感じます。
食欲を抑制するレーズンエクササイズのやり方
【1】レーズンを1粒用意して、親指と人差し指で挟んでよく観察する。
【2】手のひらに置いて転がし、動きや表面の様子などを観察する。
【3】親指と人差し指で挟み、ゆっくりと鼻に近づけたり離したりしながら観察する。
【4】ゆっくりと口に含んでかまずに舌の上で転がし、味や風味の広がりを感じたら、かみながらそれらの変化を観察し、のみ込む。
食欲が抑えきれず“ドカ食い”してしまう人にとって、食べることは単に胃を満たしてセロトニンを出すための行為になっています。それを見直す意味で、食に向き合うエクササイズはとても有効だと考えられます」(工藤さん)
心理に働きかけて食欲抑制する方法も
「食べること」を意識できたら、次は何を食べるべきかを考えたい。ダイエットカウンセラーの伊達友美さんは食欲を抑えるコツは「自分が今本当に食べたいもの」を心に問いかけることだと主張する。
「本当に自分が欲するものを食べないと、いつまでも心が満たされず、過食は終わりません。ですからお腹が空いたら、まず自分が“何を食べたいのか”をよく考えることです。空腹を感じたら手当たり次第にスーパーで買っておいた安売りのお菓子を食べてしまう人がいますが、それでは満たされない。自分が本当に食べたいものをリストアップし、週に1回お休みの前の日など、日時を決めてその時に食べる、という風にきちんと計画を立てること。高カロリーなパフェやケーキでもかまいません。ただし、どこの店のパフェとか、どこの何ケーキなのかまで限定すること。食べるものにこだわって、趣味として楽しむようにすれば満足感が高まります」
食欲と向き合い、“食べたい”という気持ちを抑えることができたら、最後はしっかり睡眠をとって一日を終わらせたい。
一見、ダイエットとは関係がないように思われるかもしれないが、睡眠と食欲は深い関係があると工藤さんは言う。
「睡眠をしっかりとることで、食欲抑制ホルモンのレプチンがきちんと分泌されることがわかっています。眠る時間が足りなければ、ホルモンバランスが崩れて食欲が増進し、肥満につながりやすいばかりか、ストレスが増えてスイーツや炭水化物が食べたくなる傾向がみられます。睡眠時間は7時間がベスト。早めに布団に入りましょう」
食欲をコントロールして今夏こそ、スリムな体で夏を迎えたい。
イラスト/ニシノアポロ
※女性セブン2019年5月30日号
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