最後にストッキングをはいたのは、もうずいぶん前のこと、という女性も少なくないだろう。かつての女性にとっての必須アイテムは、今や40代を境に需要が減っている。だが、私たちを締めつけるばかりと思っていたストッキングに、思いがけない効果があるとしたら…!?
ストッキング人気が落ちている理由
レッグウエア大手のアツギが、16年ぶりに苦戦を強いられている。ストッキングなどレッグウエア商品の販売不振に伴い、2019年3月期の連結最終損益が31億円の赤字に転落した。
女性の社会進出が定着し、結婚や出産後も働く女性が増えているなか、通勤着のマストアイテムとされたストッキングの需要が減っているのはなぜなのか――。
日本靴下協会によると、パンティーストッキングの国内生産量は、バブル絶頂期の1980年代には10億足を超えていた。ところが、バブル崩壊後の“生足ブーム”のあおりで、2000年前半には半減。現在は約1億2000万足にまで落ち込んだ。
レッグウエアに主軸を置くアパレルメーカー、ナイガイ企画開発部の土屋聡子さんは、働く女性の制服廃止が1つのきっかけだったと語る。
「働く女性が増える一方で、女性たちが働く企業では、制服がなくなっていきました。銀行や百貨店などは今でも制服ですが、それ以外の業態では1990年代から廃止する企業が増加。弊社でも、私が入社した1980年代には女性は全員制服を着ていましたが、1990年代には完全廃止に。職場での自由な服装が認められるようになると、ストッキングやパンプスをはかず、パンツスタイルなどカジュアルな服装で通勤する女性が増えました」
日本では女性のたしなみとされてきたストッキングも、海外ではあまり日常的にはく文化がないとファッションジャーナリストの日置千弓さんは言う。
「日本は海外に比べ、湿度が高いことが影響しています。じめじめした気候で素足に靴を履けば、おのずと足はムレます。さらに靴擦れで足を痛め、靴も早く傷みやすくなります」
ほかにもストッキングをはく風潮には、日本人らしい保守的な文化が影響していた。
「日本人には慎み深い文化もあって、”過度な露出はしない=ストッキングで肌を覆う〟ことが好まれたのです」(日置さん・以下同)
“黒船”上陸、そして靴下をはくことが定番に
その風潮に変化をもたらしたのが、ファッションやライフスタイルの欧米化だ。1990年代中頃以降には、海外ファッションブランドの『GAP』や『ZARA』が続々と日本に上陸し始めた。
「欧米人のような、生足にハイヒールといったスタイルが、トレンドに敏感な層から『かっこいい』ととらえられ、ファッション誌でもそうしたスタイルが取り上げられました。そして2000年代にはすっかり生足スタイルが市民権を得るようになったのです」
それより少し前の1990年代後半には、当時ファッションリーダーだった安室奈美恵さん(41才)の、ミニスカートに厚底ブーツといったファッションが流行し、本格的にストッキング離れが加速した。
「1990年代に青春時代を過ごしたルーズソックス世代がやがて大人になり、2010年頃からは靴下をはくことが定番となりました」
職場の服装はぺたんこ靴やスニーカーへ
そして時は経ち、2018年には政府が”スニーカー通勤“を推奨。SNSでは職場でのパンプス強要を訴え、“靴”と“苦痛”をかけた「#KuToo」への共感が広がり、職場での服装はぺたんこ靴やスニーカーへと時代が大きく移り変わった。また、共働き世帯の母親が朝夕の子供の送り迎えで自転車や車に乗る際、パンプスを履くのは不便で、実用性にも欠ける。
「スカートよりもパンツの方が運転しやすいし、自転車のペダルをこぐにも車のブレーキを踏むにもパンプスより、スニーカーやぺたんこ靴の方が安全です。ぺたんこ靴なら素足でそのまま履く方がかわいいし、リゾート感も出てファッションとしてもキマる。ここ数年来は、ワイドパンツが流行っており、女性のパンツ率が飛躍的に高まっているのも大きい。それに輪をかけて、特に今年はスニーカーが大ブレークし、一般的にはストッキング離れが進んでいます」
ストッキングの効果は?むくみ解消や“足痩せ”も
そんななか、ストッキング離れに待ったをかける人がいる。日本で唯一の足病専門医療機関「下北沢病院」理事長の久道勝也さんだ。
「ストッキングをはくと、脚全体に圧がかかり、ふくらはぎの筋肉がポンプ機能として働きます。よって、脚の血液が心臓へ戻りやすくなり、むくみが緩和。下半身全体の引き締め効果や正しい姿勢矯正が期待できます。立ち仕事や座りっぱなしの人、普段運動をしない人は血流が滞ってむくみやすいので特におすすめしたい。また、経産婦の半数が下肢静脈瘤(静脈の血流が滞り、こぶ状に膨らむ症状)を持っているというデータもあり、出産経験のある女性にもおすすめです」
近年女性患者が増えている水虫対策にも、ストッキングは一役買うという。
「これからは梅雨や暑い夏の季節で素足の人が増えるので、共用のスリッパや家屋の床で、水虫のもと・白癬菌に感染してしまうリスクが高まります。ストッキングをはいていれば菌に直接足が触れず、ガードしやすい。ただし足のムレも水虫菌を増やす要因となるので、ストッキングを選ぶ際は、通気性のよいものを選ぶのがポイントです」(久道さん)
“美脚効果”を支持する声も
ストッキングをはくことで脚の“アラ”を隠せる点も、20代には支持されている。
「虫刺されやあざ、すね毛なども隠れて脚がきれいに見えることで、若い世代の敏感な美意識を満たしている。ストッキングには、光を乱反射させて筋肉のラインを美しく見せる効果もあります。それ以外にもUV効果や抗菌防臭効果、サラサラとしたはき心地を追求するなど、ストッキングは日々進化しています」(土屋さん)
実際に、ストッキング離れと逆行し、若い世代では好んではいている人が増えているというデータがある。『シティリビング』のウエブアンケートでは、全世代のうち20代のみストッキング着用率が半数を超え、62%が「仕事でも私生活でもはいている」と回答。一方30代は46%、40代では38%といった結果となった。
かつて“大人の女性としてストッキングをはかないのは失礼”といった意識から、“脚を美しく見せるためにはく”という機能性重視へ、動機が変わってきている。働く女性の服装の多様化に伴い、ストッキングをはかなくても成り立つファッションが選ばれるなど、足元の自由化が進んでいるのは事実。
一方で最近のストッキングの高機能性を知ると、久々にはいてみるのも悪くないと思えてくるだろう。
※女性セブン2019年6月13日号
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