
収入が容易に増えないなか、貯金を殖やすために何をすべきか。真っ先に「節約」が思い浮かびますが、問題はその方法です。削るべきは食費か、お小遣いか、通信費か……。『90日で「貯める力」をつける本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、これまで2万4000件の赤字家計を再生させてきた家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、家計の支出削減のコツについて聞きました。
家計の支出には2種類ある
「お金を貯めるには、出ていくお金(支出)を抑えなければいけません。まず、支出の内容には2種類あります。毎月支払額がきっちり決まっている家賃や保険料などの『固定費(固定支出)』と、食費や光熱費など、月ごとに支払額が変わる『変動費(変動支出)』です。
実は、家計の支出削減には、変動費を抑えてケチケチ節約するより、固定費をカットするのが早道です」(横山さん・以下同)

食費、光熱費の節約がダメな理由
「ほとんどのみなさんは、やりくりで低く抑えられるかもしれない(食費や光熱費などの)変動費にばかり目がいきがちです。しかし、やりくりの出来に左右されるのですから、安定した支出削減効果は望めません」
なぜ固定費カットが先決なのか
「一方、固定費は毎月決まった金額なので、一度削ぎ落とせば、その分は安定した結果が伴います。裏返せば、固定費はカットしない限り、永遠にお金が出ていくものだとも言えます。ちなみに、使わなくても必ず支出が生じる携帯代やインターネット通信料は固定費として意識する必要があります」
まず、自分にとっての固定費には何があるのか、どうして支払っているのかなどを自分できちんと納得することが大事だと横山さんは言います。
固定費は「便利」「お得」なものが多い
見直すべき固定費について考える時、横山さんがキーワードに挙げるのが「便利」や「お得」な商品やサービスについてです。

固定費を見落としがちな理由
「私たちがふだん目にしているモノや情報には、必要としている『便利さ』だけではなく、何らかの『仕掛け』が施されています。『お得』『今だけ』『初回無料』などのフレーズが使われている時、その商品やサービスは“固定的な支払い”を伴うことが多い点に注意しまししょう。
毎月定額で使い放題、などのサービスは魅力的かもしれませんが、その仕組みに当たり前のようにつきあっていると貯金どころか家計がうまく維持できなくなるのも当然です」
固定費とは、企業と利用者の利害が一致した状態とも言え、そのせいで見落としがちになる、と横山さんは指摘します。
ムダになりがちな固定費
「見落としがちだからこそ、固定費の見直しで得られるメリットは大きい。転職や副業、昇進などによる年収増を目指すより、はるかに効率的で簡単な収入アップ方法です」
横山さんがこれまでに相談を受けた2万4000件の家計診断から、「ムダになりがち」な支出項目を挙げてもらいました。

2万4000件の家計診断によるワースト5
「多くの人が抱えがちなムダな固定費を順位づけすると、【1位】必要以上のデータ量を契約している携帯代、【2位】生命保険の不要な保障、【3位】当たり前に利用してしまう割高なデリバリー代、【4位】契約して忘れてしまっているサブスク代、【5位】週に1度しか乗らない自動車の駐車場代、任意保険料となります。
これらは多くが『浪費』に該当するもの。思い当たる項目があれば、積極的に削り落としましょう。それだけでも、収入アップの第一段階は完了です」
上記で挙げた他にも、「ポイント目当てに支払いが増えるクレジットカード払い」「ほとんど行かないスポーツクラブの月(年)会費」「活用できていないオンラインサロンの会費」「定期的に届くサプリメントや飲料水代」などがムダになりがちです。この機会に固定費のムダを見直し、サイズダウンした生活を目指していきましょう。
◆教えてくれたのは:家計再生コンサルタント・横山光昭さん

株式会社マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタントとして赤字家計の抜本的解決、確実な再生を目指す。個別相談・指導では独自の貯金プログラムを活かし、これまでに2万4000件以上の赤字家計を再生。著書『年収200万円からの貯金生活宣言』はシリーズ累計100万部、『はじめての人のための3000円投資生活』はシリーズ90万部のベストセラーに。2022年10月、『90日で「貯める力」をつける本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版。https://twitter.com/chokin_myfp