ケース【2】義実家が重い→パートナーだけ帰省
ただし、ここで立ちはだかるのが「夫婦の壁」。夫婦が同じ目線を持っているとは限りません。黒川さんはこう話します。
「夫婦は得てして話がかみ合わないもの。感性が真逆といってもいいくらい。なぜなら、感性が全く違う二人がつがうことで、より豊かな遺伝子の組み合わせを残せるから」
ゆえに、夫に「あなたの実家に行くのは気が重い」と相談したところで、「1年のうち、たった2~3日泊まるぐらい、いいじゃないか」などと取り合ってもらえない可能性も。
「その場合、自分は用事がある、体調が悪いなどの理由をつけて、夫だけ自分の実家に帰ってもらうようにするのが一番です」
夫婦で帰省する場合、実家の親にくぎを刺しておいてもらう
あるいは、夫にあらかじめ、配慮してもらいたいことを具体的に伝える手も。
「自分にとっては気の置けない実家でも、パートナーにとっては遠慮が多いのが義実家だということを言葉にして伝えるのです。そのうえで、お互いのために過度な気遣いは不要だ、と姑に伝えてらうのもよいでしょう。
私自身は姑の立場ですが、たまにお嫁さんに会うと、話しかけ過ぎてしまうんです。『疲れたでしょ。コーヒー入れようか?』『あ、お菓子もあるわよ』『他にも何か食べたいものある? 後で一緒に買い物行かない?』などとのべつ幕無しに。そうすると、お嫁さんも息が抜けないみたいで(苦笑)。こういう姑がいる場合は、『疲れているから、夕飯までは自室でゆっくりさせて。おしゃべりは夕飯の楽しみにしよう』と夫の方から言ってもらうよう、根回しをしておくといいですね」
また、食の好みにおいてもあらかじめ伝えておくと吉。
「細かいことですが、連れて行くパートナーの苦手な食材も、一覧表にしてLINEで伝えておいた方がのちのため。苦手な食材が出てきたとき、『これ、本当においしいのよ、食べて』とすすめられているのを断るのは勇気が要ります。相手をおもんばかって無理して食べて、ますます義実家への足が遠のいてしまう方が、お互いにつらいですよね」
いずれも妻目線の話ですが、妻と夫、立場が逆転しても同じこと。うまく立ち振る舞って「実家の壁」を低くするか、行事を簡略化して「壁」の数を減らし、夫婦ともに心穏やかに過ごしたいものです。
◆教えてくれたのは:人工知能研究者、脳科学コメンテイター・黒川伊保子さん
1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、”世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)『思春期のトリセツ』(小学館)『60歳のトリセツ』(扶桑社)など多数。
取材・文/桜田容子 撮影/浅野剛