
資産形成の中で大切なことは、「長期・積立・分散」です。この中の「積立投資」が具体的にどういうものなのかはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、積立投資の仕組みやメリット、注意点を詳しく教えてもらいました。
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積立投資は決まった金額で継続的に行う投資
積立投資とは、その名の通り毎月金融商品を購入し続けていく投資方法のことです。例えば不動産投資などでは、物件購入のタイミングでまとめて資金を投入するケースもありますが、積立投資では、例えば毎月何日に1万円で投資信託を買うなど少額から設定することができ、それ以降継続的に投資をしていきます。
積立投資は値動きの影響を受けにくい
積立投資の最大のメリットは、少額からスタートできて毎月コツコツと長期的に積み立てることで「買うタイミングの分散」ができることです。
つまり、一般的な投資では価格が下がるとマイナスになりますが、積立投資の場合は価格が下がったらその分安く買えるとも考えることができ、値下がりのリスクも分散することができます。そして価格が上がったときに売ると利益になります。これを「ドルコスト平均法」とも言います。
最初に設定さえすれば、後はほったらかしでOK?
積立投資は最初に積立設定をする必要がありますが、ほったらかしておいたとしても自動的に口座やクレジットカードから購入金額が引き落とされて、投資が完了します。

個別株も少額から挑戦できる
積立投資の投資先としては投資信託を選ぶ方が多いですが、実は個別株も積立投資が可能です。まず、個別株には売買可能な単位である「単元株」という考え方があり、基本的に100または1000株で1つの単元株となります。つまり、1株1000円で1単元100株の株であれば、1度の最低取引量(取引額)は100株(約10万円)です。
一度に必要な額が大きいため、少額ずつ購入する積立投資には組み込みにくいのですが、証券会社によっては、1単元未満の株式の取引を可能にしており、例えば毎月1株ずつ購入していくというやり方が可能になっています(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/ols/)。ただし、証券会社によっては手数料が割高になる場合もあるので注意が必要です。
個別株の積み立てを継続すれば株主優待ももらえる
株主優待がある株では100株以上の保有者を対象としているケースが多いですが、積立購入を継続して保有数が対象になる株数をこえれば、もちろん株主優待も受け取ることができます。一方、配当金は1株から対象です。

100株ごとの単位株で売買する場合と比べると手数料が高くなりやすい点や、そのときの相場で柔軟に売買ができない点はデメリットですが、お試しで株式投資を始めてみたい方や値動きのリスクを平準化して株式投資を行いたい方にとっては、有効な選択肢となるでしょう。
手軽に積立投資をしたいならロボアド投資も
投資の基本は「長期・積立・分散」です。つまり長期間、積立をしながら投資をする商品を分散させることです。自分自身で積立投資をする場合は、金融商品の分散化をすることで急激な相場の変化にも対応することができます。
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があります。これは、卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということです。
投資に置き換えると、特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教えです。

自分自身で積立投資をする場合は、国内外の株式や投資信託、不動産投資信託(REIT)や金など商品や地域を分けて投資をします。これをポートフォリオと言います。
この後にも詳しく説明しますが、時々内容を見直して、金融商品を増やしたり減らしたりとリバランスを行います。この作業が面倒だと感じるのであれば、これらを全自動で行ってくれるロボアド投資を検討しましょう。ロボアド投資では、投資に回す金額を決めた後は、購入する商品を自動で決めてくれるため、ポートフォリオを考える必要はなく、売買も自動で行われます。ただその分、手数料が1%程度かかります。
自身で行う積立投資の場合は、ポートフォリオを自分で考え、購入する商品を選び、売買のタイミングを決める必要があります。一方、信託報酬などの投資信託を保有すると必ず発生する手数料以外の手数料は基本的にかかりません。

ポートフォリオの考え方
株や債券、不動産など、世の中にはさまざまな金融商品がありますが、株ひとつとっても、日本の株なのか、アメリカの株なのか、日本の株のなかでもどの会社の株なのか、考え出すと商品の数はキリがありません。
こうした複数の商品に一度に投資できるのが投資信託ですが、投資信託も日本株が中心のもの、世界中の株が中心のもの、債券も組み込んだもの、不動産も組み込んだものなど種類があります。それぞれリスクとリターンが異なるため、自分にとって最適なリスク・リターンとなる組み合わせを目指すのがポートフォリオを組むときに大切なことです。
初心者のポートフォリオに全世界株とS&P500の投資信託
そうはいっても何を選べばいいかわからない、という方におすすめなのが、新興国も含めた世界中の株式に投資をする「全世界株式(オール・カントリー)」の投資信託と、米国の代表的な株価指数であるS&P500に連動する「米国株式(S&P500)」の投資信託です。
オール・カントリーであれば、世界中の経済に対して分散投資をすることができますし、S&P500連動型であれば、世界の経済をけん引する米国株に分散投資をすることができます。もちろん値下がりのリスクはありますが、両者ともパフォーマンスが比較的良好である(https://info.monex.co.jp/fund/guide/sp500-beginner.html)うえ、インデックスファンド(株価指数に連動する投資信託)のため、保有にかかる手数料が小さいのも魅力です。リスクを抑えたい場合は、さらに債券中心の投資信託を組み合わせて購入しましょう。

慣れてきたらポートフォリオの組み換え(リバランス)を
投資に慣れてきたら、ポートフォリオの組み換えも考えましょう。組み換えといっても複雑に考える必要はなく、米国株の割合が多いなと思ったら米国株の割合を減らして新興国株の割合を増やしたり、もう少しリスクを押さえたいなと思ったら株式の割合を減らして債券の割合を増やしたり、といった程度からで大丈夫です。
証券会社のマイページやアプリで自分の資産状況とポートフォリオの割合を見ることができるため、ときどきチェックするようにしましょう。
積立投資の注意点
比較的リスクが小さく投資初心者にもおすすめできる積立投資ですが、大恐慌が起きたときにはやはり価格が大きく下がりますし、その状態で売却すると損をする可能性も高いです。
2~3年後に使う資金を貯めたい、という場合には、売却時に値下がりしている可能性もあるため、一概に積立投資はおすすめできません。一方、例えば孫が生まれたタイミングで、約18年後の大学資金を準備しておきたいと考えたときには、積立投資で少しずつ貯めながら増やしておくのがいいでしょう。

また、預貯金は金利が付かないからといって、完全に預貯金の代わりとしてしまうのも考えもの。値下がりのリスクもありますし、商品を売却してから手元に現金として入ってくるまでにタイムラグもあります。
投資にはリスクがつきものということを理解したうえで、何のために、いつまでにお金を用意しておきたいのか、ということを考えて投資を検討してみてください。
◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん

節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
構成/新藤まつり