マネー

「新NISA」とはどんなもの?「今、投資を始めるべき理由」を家計再生のプロが語る

新NISAのイメージ
2024年1月から始まる新NISAについて知っておこう(Ph/photoAC)
写真7枚

2024年1月から始まる「新NISA」。テレビやネットでも話題になっているため、興味がある人も多いのではないでしょうか。とはいえ、投資やNISAの仕組みをよく知らない状態ではなかなか手を出しづらいもの。そこで、『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)の著者で、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、新NISAの仕組みと投資を始めるべき理由を教えてもらいました。

* * *

2024年1月から始まる「新NISA」とは?

2024年1月から始まる「新NISA」は、2014年1月にスタートした「NISA(少額投資非課税制度)」と、2018年1月にスタートした「つみたてNISA」を進化させた制度。まず、この「NISA」というのはどういう制度なのでしょうか。

「NISAは、専用の口座で投資信託や個別株式などの金融商品を買った場合、それを運用して得られた利益(値上がり益、配当金、分配金など)に税金がかからないというもの。つみたてNISAは、専用の口座で積み立てて投資信託を買った場合、それを運用して得られた利益に税金がかからないというものです。

通常の口座は『課税口座』であり、そこで買った投資信託や個別株式などを運用し年間20万円以上の利益を受け取ると、その利益に対し約20%の税金がかかります」(横山さん・以下同)

新NISAの非課税期間は無期限

投資で得られた利益を非課税にする制度であるNISA。しかし、従来のNISAやつみたてNISAでは、非課税の期間が決まっているうえ、制度が使える期間(口座開設期間)にも限りがあるなど、さまざまな制限がありました。

さらに、非課税投資枠も従来のNISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円と、資産形成を考えると十分とは言い難い額です。こうした制限を大幅に緩和し、使いやすくしたものが新NISAであると横山さんはいいます。

お金が増えるイメージ
新NISAの制度では非課税枠が広がる(Ph/photoAC)
写真7枚

「新NISAの制度は、なんと恒久的に利用でき、非課税期間は無期限です。年間に購入できる額は、つみたて投資枠(投資信託を積み立てで買う枠)が120万円まで、成長投資枠(投資信託や個別株式、ETFなどを買う枠)が240万円までと大幅にアップします」

新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に。総額も大幅アップ

非課税期間が無期限となり、ぐっと使いやすくなった新NISA。さらに従来の制度では、個別株式などを購入できるNISAか、積み立てができるつみたてNISAか、いずれかしか選べませんでしたが、「新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を両方利用することが可能となるのです」と横山さん。

「そして、非課税となるトータルの投資額(生涯投資枠)は、NISAが最大600万円まで、つみたてNISAが800万円までだったのに対し、新NISAは1800万円(うち、成長投資枠は1200万円まで)と、やはり大幅にアップします」

新NISAでは非課税投資枠の再利用も可能に

自由度の上がった新NISAでは、非課税投資枠で買った金融商品を売却すると、翌年以降に再びその非課税投資枠を利用できるのだそう。非課税投資枠の再利用とは、具体的にはどういうことなのでしょうか。

「たとえば簿価(金融商品の取得価格。ざっくりいうと、元本のこと)で500万円分の商品を売却した場合、従来の制度だと、以後非課税で運用できるのは、残りの1300万円分の商品だけでした。ところが新NISAでは、500万円分の商品を売却すると、翌年以降、新たに500万円分の商品を買うことができます」

500万円の札束
非課税投資枠の再利用について解説!(Ph/photoAC)
写真7枚

1800万円の枠のなかで、金融商品の売買が自由にできるようになったのですね。

「売却した後、500万円分の枠が復活しないとすれば、現金化するのに躊躇してしまいますが、枠が復活するのであれば、安心して現金化できます。つまり、投資で増やしたお金を適宜、必要なタイミングで使えるようになったのです。貯金のように使い勝手が良く、貯金よりもはるかに効率よく資産を増やすことができる。それが新NISAなのです」

老後資金は2000万円必要? 利息のつかない今こそ活用したい新NISA

2019年には、「老後資金は公的年金のほかに、一人あたり平均2000万円が必要である」といった金融庁の報告書が大きな話題となりました。これまでは、まじめに働いていれば順調に収入が増え、預貯金と年金があれば定年後も心配不要、といった考え方が多くありましたが、昨今はその定説が崩れつつあります。

コインと老夫婦の人形
資産を増やさないと老後資金が足りなくなる人も…(Ph/photoAC)
写真7枚

「国税庁の民間給与実態調査によると、23年前は460万円を超えていた日本人の平均年収は、ここ10年、414~443万円の間で推移しており、金融広報中央委員会発表が2022年に行った『家計の金融行動に関する世論調査』によると、年代別、世帯構成別の平均貯蓄額(保有している金融資産の額)のうち、最も多い『60代の二人以上世帯』で1819万円、『60代独身世帯』で1388万円と、いずれも2000万円に及びません」

預金でお金は増えない時代。預貯金以外の投資が必要

銀行預金の利息が8%だった時期もあるなど、かつての日本では銀行や郵便局にお金を預けるだけで、みるみるお金が増えていきました。しかし、バブル崩壊後、利息はどんどんと低下。

下がる棒グラフのイメージ
バブル崩壊後、低下していった金利(Ph/photoAC)
写真7枚

「2023年3月時点の預金金利は、0.001~0.3%程度です。今は、『収入を増やす』『貯金をする』といったことによって資産を増やすことが非常に難しい時代であり、金融庁の提唱通り、預金以外の投資によって自己資産を増やし、老後に備えることが必要なのです」

新NISAでの投資は税金のかからない貯金のようなもの

貯蓄から投資へ時代が移り変わるなか、以前と比べて投資信託の質も上がっているそうです。「とても安全性の高い(失敗する可能性が低い)投資の場合でも、基本的には6~7%程度の利回りが見込めます」と横山さん。加えて、新NISAを使えば、その利益には税金がかかりません。

「預貯金をしてもほとんど利息がつかない、この超低金利社会において、新NISAを利用して投資信託を運用することは、『お金が増えるのに、税金がかからない貯金』をするようなものなのです」

投資を始めることでお金持ち体質に

さらに、投資を始めることで、よりお金が貯まる、お金持ち体質になれる可能性が高まると横山さんはいいます。超低金利環境の今、預貯金ではなかなか資産が増えず、節約によるフラストレーションが貯まりやすいですが、投資の場合は少しずつ増えていく可能性があり、無駄遣いしそうなときでも、「このお金を投資にまわそう」という考え方ができるようになるためだそうです。

お金が増えていくイメージ
投資を始めることでお金持ち体質になれる(Ph/photoAC)
写真7枚

「『投資できる額が増える』と思えば、節約にも身が入るようになるでしょう。投資を始めた結果、『ただ貯金をしていたときよりも、貯金体質になった』という人が意外と多いのです」

2024年から始まる新NISAで着実に資産を増やし、お金持ち体質を目指していきたいものです。

◆教えてくれたのは:家計再生コンサルタント・横山光昭さん

スーツを着た男性
家計再生コンサルタントの横山光昭さん
写真7枚

よこやま・みつあき。株式会社マイエフピー代表取締役。司法書士事務所勤務後、家計の「負債重視型」コンサルタントとして借金・ローン問題に取り組み、リバウンドの少ない再生を実現。借金家計の改善とともに、マイナス家計がゆとりある家計に変化するよう、低所得者や借金に悩む方でも貯蓄に向かっていけるサポートに注力。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)など。https://ameblo.jp/myfpyokoyama/

構成/新藤まつり

●「投資・保険でやってはいけないこと」と貯蓄を増やすお得ワザを経済ジャーナリストが指南

●投資で金融機関に言われたら要注意!「あなたにだけ用意…」など危険なセールストーク5つ

関連キーワード