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雑談のプロが「雑談力」をつけるためにやっている「観察グセ」「言葉貯金」とは?

ノート
良い言葉や口ぐせを集めていく(Ph/photoAC)
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苦手意識を持っている人の多い「雑談」。雑談力を上げるには、さまざまなテクニックを覚えたり、まめに話題をチェックしたりといった努力が必要そうに思えますが、コミュニケーションコンサルタントで『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)の著者・ひきたよしあきさんは、普段のちょっとした習慣で雑談力を上げることができると言います。詳しく教えてもらいました。

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プロがすすめる雑談上手になるための習慣とは

雑談で使える話題やリアクション、考え方など、雑談上手になるためのテクニックはさまざまなものがありますが、普段のちょっとした習慣でも雑談上手に近づくことができるのだそうです。

日ごろから声を出す

チャットやメール、LINEなどでやり取りする機会が増え、実際に声を出す機会は減っていますが、普段声を出す機会が少ないと、とっさのときにも声が出づらくなります。「日ごろあまり声を出していないと感じたら、声の筋トレをはじめましょう」とひきたさん。例えば、次のような形で声の筋トレができます。

・朝晩、本を2~3行、朗読する
・親や友人に、メールではなく電話をしてみる
・ペットやぬいぐるみに、声を出して話しかける

「実際に声を出せるなら、なんでも構いません。声を出せば、口もよく開くようになる。呂律もしっかり回るようになるはずです」(ひきたさん・以下同)

声を出す女性
雑談力を上げるためには声を出すことが大切(Ph/photoAC)
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観察グセをつける

ひきたさんがすすめる、雑談上手になるためのもう一つの習慣は「『観察グセ』をつけること」。相手の特徴や魅力、変化などに気が付いて、それをきっかけに雑談するには、相手に興味を持つ必要があります。そこで、人を観察する力をつけると、人に興味を持てるようになるとひきたさんは言います。

「電車に乗ったときや、お店の中で、周りの人を見て、『この人と、ほかの人との違いはなんだろう』『この人の、こだわりポイントはどこだろう』と考えてみてください。正解はありませんから、あなたの気づいたままでよいし、むしろ、想像を交えてでかまいません」

カフェにいる女性
電車やお店で周りの人を観察して雑談力アップ(Ph/photoAC)
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繰り返し練習することで、自然と人の個性やこだわりが見えるようになり、雑談のなかで相手が喜ぶポイントをすばやく見つけることができるようになります。

言葉をストックする「言葉貯金」

さらに雑談上手になるために、ひきたさんがすすめているのが「言葉貯金」です。言葉貯金とは、響いた言葉や上手いと思った表現などをメモし、言葉をストックしていくこと。過去には単語カードや英単語帳、専用のノートなどを使って言葉貯金をしていたそうですが、今は利便性を加味してスマホのメモアプリで言葉貯金をしているそうです。

「カテゴリーなどで細かく分けるとあとで面倒になるので、時間ごとに、言葉のメモをしていけばいいと思います。その語彙やフレーズに出会った時間で分けると、『あぁ、あの暑い日に出会った言葉だな』なんて、記憶にも残りやすいのです。言葉貯金は、『1日3つ、カテゴリーにこだわらず、新しい語彙を書き込む』ことを、当初の目標にしてはどうでしょうか」

「よい口ぐせ貯金」で話し上手の人の真似をする

何かを習得するとき、上手い人の真似をするというのはよくある手法ですが、話し方についても上手い人を真似るのが上達への近道です。「話が上手い人たちから、話し方のポイントをどんどん盗んでください」とひきたさん。相手が知人であれば、直接コツを聞いてみるのもおすすめです。

「もし、話を聞くのが難しい場合は、観察です。周りにいる『人から、なぜか好かれる人』『話を盛り上げるのが上手い人』、そんな人を見て、『この人は、なぜ好かれるのか』という視点で観察し、分析してみましょう」

観察するうちに、「この人は、他の人より『ありがとう』と言う回数が多いな」といった傾向が見つかるはずです。

Thank youのプレート
好かれる人は「ありがとう」が口ぐせになっていることも(Ph/photoAC)
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「このように、観察、分析で発見した話上手な人の『口ぐせ』をストックしておくのはおすすめです。メモして、リストにして、『よい口ぐせ貯金』をしてみてください。こういった習慣が、あなたの雑談力を上げることになります」

「言葉のマグネット」で自分らしい言葉を使う

言葉の貯金を続けていくと、「使える言葉」はどんどん増えていきますが、やはり相手の心に伝わりやすいのは、自分らしい言葉での表現。自分らしい言葉を使うためのコツとしてひきたさんが教えてくれたのは、あるテーマを「言葉のマグネット」にして、自分の思いや言葉を集めるという方法。

例えば、「生きる」をテーマとしたとき、どんな言葉を思い浮かべるでしょうか。「知らないものに出会うこと」、「日常に戻るということ」など、人それぞれいろいろな言葉が出てくると思います。「生きる」などの、テーマにした言葉をマグネットにし、そこに吸い寄せられる思い、浮かんでくる情報、経験、考えなどを集めていくことをひきたさんは「言葉のマグネットをつくること」と呼んでいます。

「大切なのは、ふだんから『自分の心の中にあるもの』を、できるだけ言語化し、そうした言葉を意識してストックしておくこと。そして、それを習慣化すること。これを続けていけば、必ず、それを使うときがやってきます」

◆教えてくれたのは:コミュニケーションコンサルタント・ひきたよしあきさん

ひきたよしあきさん
コミュニケーションコンサルタント・ひきたよしあきさん
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大阪芸術大学芸術学部放送学科客員教授。早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種、世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授。著書に『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)など。https://smilehikita.com/

雑談が上手い人が話す前にやっていること

『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)

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