
会話には「対話」と「雑談」の2つがありますが、対話は相談することであり、雑談は教えてもらうことである、と話すのは、コミュニケーションコンサルタントのひきたよしあきさん。『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)の著者であるひきたさんから、雑談で相手に「教えてもらう」コツや会話を盛り上げるテクニックを詳しく教えてもらいました。
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雑談は相手に「教えてもらう」場
雑談と聞くと、積極的にいろいろな話題を提供し、相手を飽きさせずに楽しませるような会話をイメージしやすいのではないでしょうか。しかし、雑談を上手くいかせる極意の1つは、雑談で「相手を『教える立場』にしてあげる」ことだとひきたさんはいいます。
「雑談は、決まった目的やゴールがない会話です。雑談で大切なことは、相手に気持ちよくなってもらい、親睦を深めること。だから、雑談では、相手に『教えてもらう』という態度を示すことは、極めて有効です」(ひきたさん・以下同)
雑談で相手が教えたいことを「教えてもらう」
具体的にはどんなことを教えてもらえばいいのでしょうか。「コツは、『自分が聞きたいこと』ではなく、『相手がしゃべりたそうなこと』を探すことです」とひきたさん。ポイントは、「認められたい」「ほめられたい」「共感、同情されたい」といった気持ちをくすぐるような質問をすることだそうです。
「毎回、相手の気持ちにジャストフィットする質問ができるわけではありません。ひょっとして、外れちゃうことのほうが多いかもしれません。でも、そこでがっかりしないでください。相手の気持ちになって考えた経験は、確実にあなたの雑談レベルを上げています」
相手の本音を引き出すには、とにかく話を聞くこと
そうはいっても、「認められたい」「ほめられたい」といったポイントがなかなか見えないことはあると思います。そんなときは、とにかく話をよく聞くこと。そこで、「大変」「苦労している」といった言い回しが出てきたら、そこが認めてほしい、ほめてほしいポイントです。

例えば、「好き嫌いの多い子供のために、毎朝お弁当を作るのが大変」と話している人がいた場合、「毎朝お弁当を作っている自分」が認めてほしい部分であり、「好き嫌いの多い子供のために工夫している」点がほめられたいポイントと推測できます。推測できたら、今度は「毎朝きちんと起きるための工夫」や「子供のための献立のポイント」などを質問してみましょう。
「相手の話したそうなことに対して、『教えてほしい』という態度を示せば、相手は『待ってました!』とばかりに話してくれるはずです。それで、いいのです。雑談は、目の前の相手がマイクを握り続けて、いい気持になることなのですから」
話していてなんだか楽しい「会話のトスを上げ続ける人」
面白い話ができる人や、テンションが高く盛り上げ上手な人とは話していて楽しいですよね。しかし実はもう1つ、楽しい会話ができるタイプの人がいます。それは、「会話のトスを上げ続ける人」。
「一緒にいると会話が弾むのだけど、よくよく考えてみると、相手は『会話のトス』を上げてくれているだけで、つい自分がおしゃべりになって話してしまう。こういうタイプの人です。話すのが苦手ならば、会話のトス=相手に聞く、質問することで雑談に加わればいいわけです」
相手に質問する時は「5W1H」で
会話のトスを上げ続けるポイントは、答えが「YES・NO」で終わってしまう質問を避け、英語の「5W1H(When、Where、Who、What、Why、How)」を使った質問をすること。時間、場所、人、モノ、理由、手段という6つの切り口を意識しましょう。
「質問をゼロから考えるのではなく、まず『6つの切り口』に当てはめて質問する。相手が、質問に答えるように話してくれたら、その内容から、また『6つの切り口』を考える。これであなたは、会話のトスを相手に出し続けることができます」

自分の話の最後に必ず質問をつける
会話のトスを上手く上げるもう一つの方法は、「自分の話の最後に、必ず質問をつけること」。自分の意見や自分の話の後に「あなたはどう思いますか?」といった問いかけをし、会話を回していくイメージです。
「会話のトス役に徹すると、特に自分から話さなくても、口下手に見えません。それどころか、話を回しているように見えます。ぜひ、質問を上手く使って、相手の話を盛り上げる技を身につけてください」
会話を盛り上げる鉄板リアクション
会話を盛り上げるのに最も簡単な方法といえば、「リアクション」です。自分の話に相手がいいリアクションをしてくれれば、自分の話を楽しんでくれている実感を持つことができ、さらに楽しく話すことができますよね。
「テレビ番組で、タイミングよくリアクションする芸人が重宝されるのは、それが番組を盛り上げることになるからですが、雑談が盛り上がるのと同じ理由です。それくらい、リアクションは大切な要素なんです」

「あ行」と「す」から始まる鉄板リアクション
ひきたさんが効果的だと話すのは、次のような「あ行」と「す」から始まるリアクションです。
【1】ありがとう!
【2】いいね!
【3】うまいね!
【4】えらい!
【5】おかげさまで!
「『あ行』には、人に共感する言葉、感謝や尊敬を示す言葉が集中しています」
【6】すごい!
【7】すてき!
【8】すき!
【9】するどい!
【10】すばらしい!
「『す』からはじまる言葉には、初めてのものを見聞きしたときの、新鮮な驚きを好意的に伝える言葉が集まっています」
言い方次第で使える「なるほど」
リアクションで多用しがちな「なるほど」も、使い方次第で会話を盛り上げるリアクションとして使うことができます。「『なるほど』を使って相手の共感を得るには、『なるほど』を感嘆詞として使うことです」とひきたさん。例えば、「なるほど! そういうことだったんですね」といったイメージです。
「何に『なるほど』と感嘆しているかということまで、しっかりつけてリアクションすると、より相手に気持ちが伝わります」
◆教えてくれた人:コミュニケーションコンサルタント・ひきたよしあきさん

大阪芸術大学芸術学部放送学科客員教授。早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種、世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授。著書に『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)など。https://smilehikita.com/