
今、加湿機能がついたエアコンが出ているのをご存じでしょうか。暖房運転と同時に加湿もできるエアコンで、一般的な加湿器のように定期的にタンクに水を入れたり、そのタンクを洗ったりする必要がありません。ボタンひとつで暖房と加湿運転ができ、さらに換気までしてくれる手軽さが、最大のメリットです。家電ライターの田中真紀子さんに、加湿機能つきエアコンの構造や、メリット・デメリットを教えてもらいました。
エアコンに加湿機能があれば、加湿器は買わなくていいの?
そもそも、加湿機能つきのエアコンは、どういう構造になっているのでしょうか?

「仕組みとしては、室外機に搭載されたシロッコファンが水分を含んだ空気を集め、その水分をゼオライト(デシカント)と呼ばれる乾燥剤に吸着させます。そこにヒーターの熱を当てると、水分がゼオライトから離れ、エアコンの風とともに室内に送られるのです。エアコンの気流に乗せて水分が運ばれるのは効率的ですよね。
ちなみにエアコンの加湿機能は暖房時のほか、単独でも稼働しますが、冷房と同時には稼働しません」(田中さん・以下同)
加湿器と違って給水の手間がない
メリットは主に2点。

「一般的に、加湿器はタンクに入れた水を利用して加湿しますが、エアコン加湿は空気中の水分を利用するため、給水の必要がありません。この手軽さが最大のメリットでしょう。また、基本的には加湿器を別に用意しなくてもいいため、加湿器一台分の設置スペースが空くのも魅力です」
さて、これからの乾燥が強まる季節に気になるのが、エアコンの加湿機能の実力。加湿機能つきエアコンが一台あれば、その部屋に加湿器は要らないのでしょうか。それとも併用ありきで考えたほうがいいのでしょうか。
「現在発売されているメーカーに関しては、基本的な加湿能力は十分あると考えられます。ただし、空気中の水分を集めるという仕組み上、空気が乾燥していると湿度が上がりにくくなることがあります。また湿度を設定しても、部屋の温度が上がると相対湿度が下がるため、設定湿度に達しないことがあるなど、条件によって左右されてしまいます。
したがって、基本的にはエアコン加湿だけでも問題ありませんが、確実に加湿をしたいという人は加湿器を使ったほうが安心でしょう」
室外機の大きさ、電気代などに注意
注意点は、他にもあります。
「室外機に加湿ユニットを搭載しているため、室外機が通常より大きくなります。またヒーターを使用するため、暖房とは別に電気代がかかります。さらに、通常、室内機と室外機は空気のやり取りをしていませんが、加湿機能付きは換気機能付きでもあるため、空気のやり取りができる構造になっています。そのため送風音が気になる場合や、外の騒音、ニオイが室内にはいってきてしまう場合があります」
どちらかといえば、幹線道路に面した住宅より、静かでクリーンな環境に位置する住宅で使う方が、メリットを享受しやすいかもしれません。
なお、現在、加湿機能付きエアコンを発売しているのは、パナソニックとダイキンのみ。それぞれの加湿能力や特徴を、田中さんに教えてもらいました。
【1】ダイキン『うるさらX Rシリーズ』

外気中の水分を取り込み、暖房しながら部屋を加湿

「ダイキンは1999年に世界で初めて、外気中から集めた水分で加湿できるエアコンを発売。暖房しながら加湿できるエアコンとして20年以上の実績があります。
加湿能力も高く、無給水でも、(冷房能力)2.2kWクラスで600ml /h、9.0kWクラスでは1030ml/hもの加湿能力を発揮します。気になる送風音も、室外機内部に『吸音マフラー』を搭載することで、風量を上げても抑えることできます。ほか、給気・排気換気機能もいち早く搭載し、屋外ほか、給気・排気換気機能もいち早く搭載し、屋外から新鮮な空気を取り込んだり、室内も湿気を排出したりするなど、空調コントロールをサポートしています」
【2】パナソニック『エオリア LXシリーズ』

暖房で部屋を暖めながら、スピーディーに加湿

「パナソニックは2021年より室外機に『換気・除加湿ユニット』を搭載し、給水レス加湿機能を搭載したエアコンを発売。
一般的な吸湿素材であるゼオライトの約5倍の吸湿量があるという『高分子収着剤』を使用しており、水分をたっぷり取り込めます。また、スピーディーに加湿できるのも特徴です。加湿量は(冷房能力)2.2kWクラスで560ml/h、9.0kWクラスでは860ml/h。さらに同ユニットで水分を取り除いたあと、乾いた空気のみを室内に戻すことで除湿も可能に。従来のように室温を下げすぎずに除湿できるようになりました」
どちらの機種もハイクラスのため、換気や加湿以外の機能も充実しています。加湿器を買わずに済ませたい人は要チェックです。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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