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《風邪が長引いていると思ったら…》副鼻腔炎は放置すると重症化する可能性も!食事や漢方薬などでセルフケアする方法

鼻を押さえる女性
感染症がきっかけで起こることがある副鼻腔炎
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風邪やインフルエンザなどの感染症にかかった後に鼻水や鼻詰まりなどの症状が長く続いている場合、副鼻腔炎になっている可能性があります。薬剤師の山形ゆかりさんは「副鼻腔炎は、ただの鼻詰まりではありません。慢性化し、重症化すると手術が必要なこともあります」と話します。そこで、副鼻腔炎を改善する治療法や食材、漢方薬について教えてもらいました。

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副鼻腔炎の症状と原因

副鼻腔炎の主な症状は、鼻水、鼻詰まり、鼻の内部の異臭、味覚異常、頭痛・頭重感、目や頬の顔面痛などがあります。これは、鼻腔(鼻の穴)の周囲にある空洞の部分(副鼻腔)の炎症が原因で起こります。さらに、副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎を併発することが多いといわれています。

また、一般的に知られている「蓄のう症」も副鼻腔炎のことで、副鼻腔に膿がたまった状態を指します。

副鼻腔炎が悪化すると味覚障害や鼻ポリープにも

副鼻腔炎には「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」があります。

急性副鼻腔炎は、風邪などの細菌感染で起こり、通常1~2週間、長くても1か月ほどで治ります。ただし、急性副鼻腔炎が3か月以上長引き、慢性化してしまうと慢性副鼻腔炎と呼ばれます

鼻をかむ女性
急性副鼻腔炎が悪化して慢性副鼻腔炎になってしまうことも
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慢性副鼻腔炎はさらに「好酸球性副鼻腔炎」と「非好酸球性副鼻腔炎」に分かれます。これらは急性副鼻腔炎の症状に加え、味覚障害が起こったり、鼻の内側の粘膜の一部が腫れて垂れ下がる鼻茸(鼻ポリープ)が発生しやすくなったりするといわれています。

副鼻腔炎の原因

副鼻腔炎は、細菌やウイルス感染などによって起こります。抗菌薬が効きにくい、または効かなくなった薬剤耐性菌が増えている昨今は、急性副鼻腔炎の患者がさらに増加しているといわれています。

薬と聴診器
薬剤耐性菌が増えたことで副鼻腔炎が増えている
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副鼻腔で炎症が起こると、粘膜の腫れ、鼻水などで、鼻腔と副鼻腔をつなげる「自然口」が塞がってしまいます。自然口が塞がると分泌物や異物を正常に排泄できなくなり、さらに炎症が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。これが副鼻腔炎です。

一方で、明確な原因が特定されていない好酸球性副鼻腔炎もあります。これは国の指定難病でもあります。鼻茸や嗅覚障害の症状が強い、鼻の両側で症状がみられるなど、好酸球性副鼻腔炎の疑いがある場合は必ず医師に相談しましょう。

副鼻腔炎の予防・治療法

副鼻腔炎にかからないためには、感染症予防をすることが大切です。また、もしもかかってしまった場合にも、市販薬などによるセルフケアで改善が見込める可能性があります。

風邪に負けない体づくりで予防

続いて、副鼻腔炎の予防法とセルフケアでの治療法を解説します。副鼻腔炎は、多くの場合風邪などの感染症をきっかけに発症するため、感染症予防を行うことが副鼻腔炎の予防につながります。

感染症予防の原則は、感染経路の遮断、感染源の除去、抵抗力を高めるの3つです。外出後の手洗いうがいはもちろん、人との密な接触や人混みを避けること、マスクの着用、規則正しい生活習慣を心がけましょう。

免疫力をアップさせるには、体温を上げ、代謝をよくすることが重要です。軽いジョギングなどの運動をする、風呂はシャワーで済ませずに湯船にしっかり浸るなど、体を冷やさず、温めることを意識しましょう。

副鼻腔炎のセルフケア方法

副鼻腔炎は市販薬などを利用したセルフケアでも症状が改善する可能性があります。ウイルス性の感染症をきっかけに発症した副鼻腔炎の場合は、通常1週間以内に自然に治癒するといわれています。

ティシューを取り出している
副鼻腔炎は通常1週間程度で治癒する
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また、急性副鼻腔炎であれば、鼻水、鼻詰まりの改善や鼻の奥にたまった膿を出しやすくする市販の点鼻薬や抗菌薬の服用で症状が治まる場合もあります。膿が出ている場合は鼻洗浄をすると症状改善につながることもあるでしょう。

症状がなかなか改善しない場合や、症状が良くなったり悪くなったりする状態が3か月程度続くようであれば、慢性副鼻腔炎の可能性があります。これらの症状が見られる場合は専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。

副鼻腔炎の予防に役立つ食材

副鼻腔炎の原因となる、風邪などの感染症にかからないためには免疫力を高めることが有効です。免疫細胞の働きを高めるために、たんぱく質と、ビタミンA、ビタミンB群を多く含む食材を摂取しましょう。

それぞれの栄養素には役割があるので、ひとつの栄養素だけを取り入れればいいというわけではありません。

まず、たんぱく質は免疫細胞の主成分で、肉や乳製品、大豆、魚類などに多く含まれています。とくに、冬が旬のまだらは高たんぱく質な魚です。低カロリーなのでたくさん食べても肥満につながる心配が少ないのも魅力です。

焼き魚
たんぱく質豊富なたら
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そして、免疫細胞だけではなく、細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割をする粘膜の強化も欠かせません。粘膜の強化には、ビタミンA、ビタミンB2が有効です。

これらを多く含む食材には、ほうれん草があります。鍋にしてまだらと一緒に食べたり、まだらの煮物におひたしを添えたりするなど、組み合わせを工夫して食卓に取り入れるとよいでしょう。そのほか、ビタミンA、ビタミンB2は豚・鶏レバーにも多く含まれています。

たらの西京焼きとほうれん草のおひたし
たらとほうれん草の組み合わせが◎
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副鼻腔炎には漢方薬も役立つ

漢方薬には「副鼻腔炎(蓄のう症)」「鼻詰まり」などに効果が認められているものがあります。

副鼻腔炎の対策には、「血流をよくして鼻の粘膜を強くする」「鼻の粘膜の炎症を和らげる」「水分代謝を促し、副鼻腔炎の原因となる鼻水を改善する」「消化・吸収機能をよくして抵抗力を高める」といったはたらきを持つ漢方薬を選び、根本改善を目指します。

小皿に入った生薬
「副鼻腔炎(蓄のう症)」「鼻詰まり」の改善に効果が期待できる漢方薬を紹介
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おすすめの漢方薬

・辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

鼻水が黄色くドロっとして、閉塞感がある場合に適した漢方薬です。体にこもった熱を冷まし、鼻やのどなどの炎症を鎮める効果があります。

・葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

粘り気のある鼻水が目立つ人に処方されます。水分代謝を促して体にたまった余分な水分を排出し、鼻粘膜の腫れを緩和し、鼻詰まりや慢性鼻炎、副鼻腔炎に効果を発揮します。

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。また、植物や鉱物などの生薬から作られる自然由来の薬で、一般的に副作用リスクは西洋薬より低いといわれています。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

白衣の女性
薬剤師の山形ゆかりさん
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やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。

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