
花粉症は食事や予防で早めの対策を
日本気象協会が発表した「2024年春の花粉飛散予測(第2報)」によると2024年のスギ花粉の飛散量は全国的に例年よりやや多い傾向とのこと。地域によってはすでに飛散が始まっています。「早めの対策をすることで、症状を軽くすることが期待できます」と話す薬剤師の山形ゆかりさんに、今から実践したい花粉症対策について教えてもらいました。
* * *
花粉症の症状と原因
花粉症は、正式には「季節性アレルギー性鼻炎」といい、日本人のおよそ4人に1人が発症しているといわれています。花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目や皮膚のかゆみ、熱感、下痢などです。原因は、スギやヒノキなどの花粉に対するアレルギー反応によるもので、体内の免疫システムが花粉を異物と判断し、抗体が過剰に反応することによって起こります。
スギ花粉は早ければ2月から飛散している
年間飛散量のデータを見ると、スギは2月から、ヒノキは3月から飛散量が急激に増えることがわかります。(アレルギーポータル「花粉症」https://allergyportal.jp/knowledge/hay-fever/)

早ければ2月から飛散するスギ花粉
そのほかにも花粉症の原因はシラカンバ(シラカバ)、イネ、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどが挙げられます。1年を通して何かしらの花粉が飛散しているため、体質によっては冬から春以外にも花粉症を発症する人も少なくありません。
花粉症対策を早めに始めたほうがいい理由
花粉症の症状を抑える有効な手段は、マスクやメガネなどを着用し、花粉をなるべく体内に入れないようにすることです。スギやヒノキの花粉の大きさは30~40μm(1μm=0.001mm)で、これは髪の毛の1/3ほどのサイズになります。
新型コロナウイルスの大きさは約0.1μmのため、花粉はその300~400倍の大きさです。マスクでも一定の防護効果があり、吸い込む花粉の量を1/3から1/6ほどに減らし、症状を少なくする効果が期待できます。(厚生労働省「平成22年度花粉症対策」 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/ippan-qa.html)

マスクなどをして、なるべく体内に花粉を入れないように
花粉症は一度症状が出てしまうと、鼻や目の粘膜が敏感になり、どんどん症状がひどくなってしまいます。症状が強いと薬を使っても抑えられなくなる可能性があるため、症状が出始める前に対策することが大切です。早めに対策すると、発症を遅らせたり、発症しても軽い症状で抑えられたりします。
花粉症の予防に役立つ食材
花粉症の症状を和らげるには、免疫力アップやアレルギーの発生・アレルギー症状と関係がある物質の働きを抑制することが有効です。そこで、それぞれに効果が期待できる食材と効果的な摂り方を紹介します。
ヨーグルト
整腸作用や有害な菌の繁殖を抑える働きをもつ腸内細菌であるビフィズス菌が含まれるヨーグルトを食べ、腸内環境が良好になると、免疫システムが整い、花粉症の症状の緩和が期待できます。

腸内環境を整えることが花粉症の症状緩和につながる
腸内には全身の免疫システムを担う免疫細胞が約7割生息しています。また、腸内細菌の働きは全身の免疫バランスと密接に関係しています。
ビフィズス菌の働きにより腸内の免疫システムが整うことで全身の免疫バランスも整い、花粉に対するアレルギー反応の緩和につながります(岩淵紀介、清水金忠「ビフィズス菌による抗アレルギー作用」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/21/2/21_2_112/_pdf/-char/ja)。
ビフィズス菌を含んでいることをわかりやすく表記しているヨーグルト製品も多く販売されており、スーパーなどの身近なところで手に入れることができます。花粉症の症状が出始める前に免疫バランスを整えるために、ビフィズス菌入りヨーグルトをこれからの食生活に取り入れるとよいでしょう。
青魚
青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)は、アレルギーを引き起こすロイコトリエンという物質の作用を抑制するため、花粉症にも一定の効果が期待できます。

DHAやEPAも花粉症の症状を抑えるのに有効
DHAやEPAが豊富な代表的な青魚は、サバ、イワシ、ブリ、アジ、サンマなどです。サバ缶(水煮)の場合、100gあたりDHAは1300mg、EPAは930mgも入っています。(文部科学省「食品成分データベース」https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10164_7&MODE=4)
とくに冬のサバは「寒サバ」と呼ばれ、旬のおいしいものが出回ります。焼き魚のほかにも、味噌煮やマリネなども合います。なお、サバは傷みやすいため、なるべく新鮮なうちに食しましょう。
チョコレート
チョコレートに含まれているカカオポリフェノールは、くしゃみやかゆみの原因になるヒスタミンの放出を抑える作用がある栄養素です。また、抗体の過剰な増殖を抑えるため、花粉に対する免疫機能の過剰反応を防ぎ、花粉症の症状を緩和する効果が期待できます。

カカオポリフェノールを多く含む高カカオチョコレートが◎
カカオポリフェノールは600mg程度摂取するとよいといわれており、1枚5gの高カカオポリフェノールチョコレートを1日に3〜5枚食べると、十分な量のカカオポリフェノールを摂取できます。チョコレートには覚醒作用をもたらすカフェインが含まれているため、食べ過ぎや食べるタイミングに気をつけましょう。
花粉症には漢方薬も役立つ
花粉症対策には、鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状を抑える作用に加え、根本から改善するために「水分の循環をよくする」「炎症を和らげる」「消化・吸収機能をよくして抵抗力を高める」といった漢方薬を選びます。

花粉症の症状緩和に効果が期待できる漢方薬2つ
おすすめの漢方薬
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
水分排出を促し、鼻炎などの症状を和らげる漢方薬です。体が冷え、サラサラとした透明な鼻水で、鼻がむずむずしてくしゃみが何度も出るような症状に用いられます。
・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
水分の巡りをよくするとともに、体の上部にたまった熱を放出することで炎症も和らげる漢方薬です。粘り気のある鼻づまり、鼻の熱感、目の充血やかゆみなどの症状を緩和します。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

薬剤師の山形ゆかりさん
やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。