俳優の東出昌大さん(36歳)の等身大の姿を捉えたドキュメンタリー映画『WILL』が2月16日より公開中です。北関東の山中での狩猟生活を基盤にして俳優業に向き合う東出さん。そんな彼に長期密着した本作は、現在の東出さんの生き方や考え方をつまびらかに映し出します。この社会を生きていくうえでの大切な何かが収められている、そんな作品に仕上がっています。今回は、本作の見どころや東出さんの魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。
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俳優・東出昌大に密着したドキュメンタリー
本作は、映像作家であるエリザベス宮地さんがカメラ片手に東出さんの日常に密着したもの。現在の東出さんは北関東の山中に拠点を移し、そこで狩猟生活を営みながら俳優業に向き合っています。
本作が映し出すのは、スキャンダルによって世間からの厳しいバッシングにさらされた経験を持つ東出さんのいまの心境と、自然の中での狩猟生活で見出す「生命とは何なのか?」という問い。
これは芸能界に身を置く“俳優・東出昌大”だけでなく等身大の東出さんの素顔をも捉えた作品であり、この世に存在する“生命”について考える作品でもあるのです。
狩猟生活をとおして“生命”に向き合う
東出さんの事務所退所前にエリザベス宮地監督からオファーをするも、途中で頓挫した本作。それからしばらくして、今度は東出さんからの連絡によってこの企画は動き出したのだといいます。
エリザベス宮地監督といえば、数々のアーティストのミュージックビデオや、2人組バンド・MOROHAのツアーに密着した『劇場版 其ノ灯、暮ラシ』(2017年)、昨年解散した“楽器を持たないパンクバンド”・BiSHを追った『ALL YOU NEED is PUNK and LOVE』(2017年)などのドキュメンタリー映画を手がけてきた存在。
そんな彼が、俳優として、そしてひとりの人間として葛藤し、狩猟生活をとおして“生命”に向き合う東出さんの姿を、非常に近い距離で捉え続けているのです。
現在の東出昌大を囲む人々
本作における東出さんは役を演じていません。これはフィクションではなくドキュメンタリー作品ですから当然といえば当然です。登場するのは彼が日常生活を送るうえで関わり合う人々。
そのうちのひとりである服部文祥さんは、山岳雑誌『岳人』の編集者であり、“サバイバル登山”の実践者。この“サバイバル登山”とは読んで字の如く、サバイバル的に山に挑むというもの。人の手が加えられていない山に簡素な道具だけを携えて入り、食料は現地で調達。いつ死ぬとも知れない状況に身を置くことで、大自然や生命そのものに向き合っているわけです。
それから、猟師であり料理人である阿部達也さん、自身の身体とカメラのフィルターをとおして自然に向き合う写真家の石川竜一さん、点描画を描くアーティストのGOMAさん、東出さんが出演した映画『福田村事件』の森達也監督に、同作で共演したコムアイさんらが登場。
そして、東出さんともエリザベス監督とも親交の深いMOROHAのアフロさんとUKさんが作品内でパフォーマンスを披露し、本作の音楽も担当しています。
そんな作品の中心に立ち続けているのが、多くの映画ファンから支持を集める俳優・東出昌大さんなのです。