
お金を貯めようと思っても、給料振込口座にいれたままになっていると、ついつい使ってしまい、思うようにお金が貯まらない。といった人におすすめなのが「定期預金」。マイナス金利政策解除の影響を踏まえて、メリットやデメリットなどを節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに詳しく教えてもらいました。
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マイナス金利政策の解除の影響は定期預金にも
定期預金とは、期間を決めたうえで銀行に預け入れる預金のことです。自由に口座から現金を引き出すことができる「普通預金」と違い、定期預金は原則、指定した期間中は引き出すことができません。預け入れる期間は銀行によって異なりますが、1か月~10年程度が一般的です。
普通預金よりも金利が高い定期預金
定期預金のメリットの1つは、普通預金よりも金利が高いことです。銀行は預金者から預かったお金を企業への融資などに使用して収益を得ていますが、定期預金は預け入れる期間が決まっている分、銀行にとっては普通預金よりも安定的に運用できるといったメリットがあります。そのため、金利が高めに設定されています。ただし、昨今は長引く低金利の影響で普通預金と定期預金の金利差が非常に小さくなっており、0.001%の差しかないこともあります。
また、3月19日の金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の解除を決定しました。このことで、金融機関は日銀に当座預金を預けた際にかかっていたマイナス金利がなくなったため、普通預金や定期預金などの金利も上がっていくことになるでしょう。

メガンバンクの三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、普通預金金利を0.02%に引き上げると発表しました。他行もこれに続くとみられます。また、三菱UFJ銀行、三井住友銀行は定期預金金利も引き上げると発表しました。
注意点としては、今後段階的に定期預金金利が上昇してきた場合、金利が低い段階で長期に預け入れをしまうと、その期間は低い金利で固定されてしまいます。そのため預け替えができない期間は機会損失が発生する可能性があるので、今後の金利の動向にも注目したいところ。
マイナス金利が解除されて金利が上昇する局面では1年ほどの定期預金に預け入れて、金利が上がったら預け替えて様子を見ながら預けるとよいでしょう。また、各金融機関の金利の動向やキャンペーンを活用してより有利になるように預けましょう。
元本割れがない点も定期預金の魅力
投資信託や株などは相場の変動や値動きによっては元本割れのリスクがありますが、定期預金は普通預金と同様に、元本割れがない点もメリットと言えます。元本割れが起こらない商品で資産運用をしたい場合は定期預金が選択肢となるでしょう。

具体的な例として、今は使わないある程度まとまったお金があるとします。3年後のライフイベント時に使いたいと考えた場合、普通預金よりも有利かつ、目的外に使いたくないお金の預け入れ先として定期預金が選択肢となるでしょう。
自由に引き出せない点は定期預金のデメリット
一方デメリットとしては、預け入れ期間中に普通預金のように自由に引き出しができないことが挙げられます。
満期前にお金を引き出すためには定期預金を解約する必要がありますが、定期預金の金利は満期まで預け入れた場合の金利のため、途中で解約すると「中途解約利率」や「期日前解約利率」が適用されます。この解約利率は、銀行ごとに決められており、満期まで預けた場合の金利よりも低くなることがほとんどです。しかし、中途解約をした場合でも元本が減ることはありません。
満期を迎えた際に注意したいこと
満期を迎えたときの取り扱いは「自動解約型」と「自動継続型」があります。
「自動解約型」は満期を迎えたときに解約となり、元本と利息分が普通預金口座へ入金されます。「自動継続型」は満期日を超えてそのままにしておくと、同じ条件で新たに定期預金が始まります。

定期預金を始めるときは、どちらのタイプにするのか、また現在預けている定期預金のタイプを確認しておき、「自動継続型」かつ満期時に使う予定があるなら事前に満期日に解約となるように手続きをしておきましょう。
保護の範囲が1000万円まで+利息等である点には注意
預金には「預金保険制度」という仕組みがあります。これは、銀行が破綻した場合に預金の元本と利息分を保護してくれるものです。定期預金もこの預金保険制度の対象であるため、利息の付く普通預金などと合算して、1金融機関あたり1000万円とその利息分が保護されます。
一方、見方を変えると、「1000万円を超えた分は保護されない」ということです。預金額が1000万円を超えそうな場合は、そのまま預けるのか、別の金融機関に預けるのかなど一度検討するといいでしょう。
「スーパー」「大口」…定期預金の種類
一口に定期預金と言っても、いくつか種類があります。1か月、3か月、半年などあらかじめ銀行側が定めた選択肢のなかから預入期間を選ぶ、最も一般的な形式が通常「定期預金」と呼ばれるものです。金融機関によっては「スーパー定期」といった名称がついていることもあります。
さらに、1000万円以上など、一定の金額以上を預け入れるタイプは「大口定期預金」と呼ばれます。
このほか、預け入れ後に満期日を設定できる「期日指定定期預金」や、普通預金口座から自動的に毎月一定額を積み立てる「積立定期預金」、一定期間ごとに金利が変更される「変動金利定期預金」といったものもあります。

どう使うのがおすすめ?定期預金の活用法
低金利時代において、普通預金より金利が高いという定期預金の魅力は薄れています。しかし、定期預金のデメリットである「自由に引き出せない」という点は、裏を返せば、途中で手を付けられない分、普通預金より貯めやすいということでもあります。また、普通預金でやりくりすることの多い生活費と区別できるため、どのくらい貯蓄できているかも明確にすることができます。
数年後に使う予定のお金を預け入れるのに適している
定期預金は投資信託や株のように元本が減るリスクがないため、数年後に使う予定のお金はその年数に合わせた定期預金として預け入れたり、仮に収入が途切れたときでも生活できるようにする「生活防衛資金」を短期の定期預金として預け入れたりする、といった使い方が考えられます。
定期預金は元本が減るリスクがない一方で、インフレリスクには対応していません。今後インフレが継続することで、預け入れているお金の価値が、満期時に目減りしている可能性が十分にあります。

中長期で資産運用をする場合、金利がほとんどつかない定期預金だけではなく、新NISAなどを活用し、その一部を投資に回して資産形成をする方法もおすすめです。
投資信託や株などは価格が下がることもありますが、インフレリスクにも対応しているため、プラスになることもあります。中長期で運用するなら、定期預金と投資の併用も検討してはいかがでしょうか。
◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん

節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
構成/新藤まつり