ふたりが維持する絶妙なバランス
間宮さんと佐藤さんの演技の関係は、最初から最後まで絶妙なバランスを保っています。
佐藤さんの演技がとてもポップなので、栗原のキャラクターはときにコミカルなものに映ります。もしもこれが行き過ぎると、作品は緊張感を失いかねません。佐藤さんといえばこれまでにも数多くのコミカルな役どころを演じてきました。本作ではこのコミカルな要素を自在に操っている印象がありますが、やはり経験値が物を言うのでしょう。そのさじ加減に唸るばかりです。
そして、間宮さんがシリアスな演技に徹することによって緊張感を生み出し、作品がコミカルなほうに傾いた際の軌道修正を担っている。これで今度はシリアスなほうばかりに作品が傾くと、佐藤さんが軌道修正する役割を担う。こうして絶妙なバランスを、この関係は最初から最後まで維持しているのです。
本作は幅広い層に支持されていますが、それは間宮さんと佐藤さんの力が大きいのではないかと思います。大衆を惹きつける特異な物語だけでなく、その演技によってシリアスかつコミカルに作品をドライブさせているのは彼らですから。
◆文筆家・折田侑駿さん
1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun