普通の生徒にスポットを当てた『鈴木先生』
2010年ごろになると、わかりやすい不良はいなくなり、「人知れず悩む」がキーワードに。
2011年、印象深かったのが長谷川博己さん主演の『鈴木先生』で、誰もが何か抱えているドラマだった。普通の生徒が、誰かがさぼった分の掃除だったりを人知れず負担することになり、毎日少しずつとても静かにパワーをすり減らしていく、という回があった。
これを「今の学校教育は、手のかからない生徒の“心の磨耗”の上に支えられている」という言葉で問題提起した回は「そうなんだよ! 大変なのは特別な事情を抱えた子たちばかりじゃないんだよ! よくぞ描いてくれた」と感動した。馬場俊英さんが歌うエンディング曲『僕が僕であるために』も沁みたなあ。
数十年を一気に振り返ったが、どの学園ドラマも、ドキドキ、ズーン、ウルウル、キャッキャすべてが詰まっている。そりゃそうだ。人生で一番多感な時期が、さらにドラマチックに描かれているわけなのだから! 教師の熱演、名言、生徒たちの話し声、黒板に文字を書くカツカツという音などが響くなか、主題歌のイントロが重なり、OPタイトルが来て、歌詞がバーンと流れる……。
それが合図となり、私たちの目の前に「もう一つの青春」がやってくるのだ。
みなさんの心に残る学園ドラマはありましたか。もちろん「あのドラマが入っていないではないか」というポイズン(異論反論)、おおいに認めます!
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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