
のべ8万人の体を見てきた整体師の吉田佳代さんによると、さまざまな不調は足を温めることで改善できるのだとか。その効果とケアの方法についてまとめた『不調を解消する すごい足温め』(あさ出版)を、医学博士・医師の白澤卓二さん監修のもと上梓しています。この著書の中でも紹介している不調の原因となる冷えが起こる4つの理由と足を温めることの健康効果について、吉田さんから教えていただきました。
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冷えが起こる大きな原因は4つある
病気になりにくい健康的な体の大敵は「冷え」だといいます。
「冷えは体のさまざまな要因によって体全体、または一部分が温まりにくい状態になることで起こります」(吉田さん・以下同)
冷えが起こる大きな原因は次の4つ。
【1】血液の循環が悪い
【2】筋肉量が少ない
【3】自律神経の乱れ
【4】ホルモンバランスの乱れ
それぞれについて詳しく知り、冷えづらい健康な体を目指しましょう。

血液の循環が悪いと熱が体に与えられない
東洋医学では、昔からさまざまな病気の原因だと考えられてきた、血液の汚れ。血液の汚れとは、老廃物が滞留している状態などのことを指します。汚れた血液はドロドロとして流れにくく、循環が悪くなります。
「その結果、細胞が活性化するための酸素や栄養素の供給が不足し、新陳代謝の働きが滞ってしまいます」
人を含む恒温動物は、血液が流れることで全身に熱が与えられます。そのため、血液の循環が悪いと、熱量が不足し冷えにつながります。
筋肉量が少ないと熱が生まれない
体の熱を作り出す役割をもつのが筋肉です。運動不足で筋肉をあまり使わない生活をしていると、熱量が不足して体が冷えた状態が続くといいます。
厚着をしたり、暖房をつけたりしても体が温まりづらく、冷たいのが当たり前の状態になってしまうのが冷え性です。歳とともに筋肉量は減ってしまうため、年齢を重ねると冷え性になりやすくなります。
「熱を作り出す筋肉の多くは、下半身にあります。そして筋肉中には血液がたくさん通っています。日頃から歩いたり、ストレッチをしたりして下半身を温め、適度に筋肉を刺激し、熱を発する体を作っておきましょう」

自律神経が乱れると体温調節がうまく機能しなくなる
自律神経が乱れると、体温調節がうまく機能しなくなることがあります。例えば、自律神経の乱れが原因の「冷えのぼせ」は、上半身に熱がこもって、下半身に熱が足りないという状態です。これにともなって、足の冷えや心臓のドキドキ、めまい、頭痛といった不調が現れることもあるといいます。ストレスや不規則な生活が続くことは、自律神経が乱れる原因になります。
「『心のバランスが偏っているな』『緊張が続いているな』というときは、体が冷えている可能性があります。お風呂に入るなどして、まずは体を温め心身ともにリラックスさせましょう」
ホルモンバランスの乱れが自律神経の乱れにもつながる
排卵や生理、更年期など、男性よりもホルモンバランスが乱れやすい女性。ホルモンバランスが乱れると、自律神経も乱れやすくなります。
「自律神経が乱れて血液循環が悪くなり、冷えの症状が出てきます。リラックスするためにも、シャワーだけで済ますのではなく、ゆっくり湯船に浸かって体を温めましょう」

足を温める3つのメリット
足を温めることが不調改善につながると話す吉田さん。とくに知っておいていただきたいというメリットは3つ。
肝臓が元気になる
肝臓は絶えず熱を作り出すために動いているうえに、栄養分を体が必要なものに変える代謝機能や栄養素の貯蔵、解毒など生命維持に欠かせない役割を担い、365日間働き詰めの臓器です。そして、流れてきた血液を、体の免疫力を高める血液にして送り出す役目もしています。
「その肝臓が冷えてしまうと、機能が弱まり、免疫力も低下するため、さまざまな体調不良を引き起こします」
足を温め、血液を温めると、肝臓が血液を温める必要がなくなるため負担が減ります。そして、肝臓自体も温まるため、他の役割を高めることができるといいます。つまり、肝臓が元気になることは、体全体が元気になることにつながるのです。
血流の悪さが解消される
血流が悪くなると、体に老廃物が溜まりやすくなり、さらに血流が悪くなるという悪循環におちいります。それは、全身に血液を送っている心臓に負担がかかってしまうということ。また、血流が滞り、血液が冷えることも心臓の機能低下につながり、心臓への負担も増加します。

「足を温めると、血管が拡張するため、血液が流れやすくなります。血液が流れるようになることで溜まっていた老廃物も少しずつ流れはじめ、血流はどんどんスムーズになり、心臓への負担がぐんと減ります」
ふくらはぎを快調にする
「第二の心臓」と言われるふくらはぎは、心臓のポンプ機能によって全身に送り出された血液を、足から心臓まで押し戻すポンプの役割を果たしています。
「足は重力によって血液やリンパ液、老廃物など、いろいろなものが溜まりやすくなっています。これらもふくらはぎの筋肉がポンプ役となり、押し返しています。冷え性になると、このポンプの役割が鈍くなり、血流が悪くなってしまううえに老廃物が溜まると、むくみ、痛みとなってあらわれ、ひいては神経痛、腰痛、頭痛などに発展してしまいます」
その予防のためには、両手の親指でふくらはぎを軽く揉んで、ふくらはぎの働きをサポートするのがおすすめ。血流がよくなり、健康の大敵である「足冷え」を解消できるので、時間があるときに行うといいでしょう。

「肝臓(体の肝)、心臓、ふくらはぎ(第二の心臓)が元気に活動してくれれば、体全体も元気になり、それぞれの機能が、それぞれの役割を果たしてくれるため、よい状態を保つことができますよ」
◆教えてくれたのは:吉田佳代さん

よしだ・かよ。株式会社カバーリング代表取締役。吉田佳代ボディケアビューティークリニック代表。ジャパンスタイルヘルスケア協会代表。日本手技療法士認定協会公認手技療法士、整体師、体幹ストレッチインストラクター、AIASオーストラリア国家資格ビューティーセラピストといった資格を取得。自然医学の理論と健康・美容技能の解析と応用を学び、骨・筋肉・経路・経穴・リンパのすべてからアプローチした独自の足ツボ療法および、全身オイル整体技術を開発する。延べ約8万人の施術および指導実績をもつ。https://www.kayoyoshida-beauty-clinic.com/
◆監修:医学博士・医師 白澤卓二さん
しらさわ・たくじ。医学博士・医師。白澤抗加齢医学研究所所長。お茶の水健康長寿クリニック院長。国際予防医学協会理事長 Residence of Hope館林代表。1982年、千葉大学医学部卒業後、東京都老人総合研究所老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーなどを経て、2007年から8年間順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授を務める。著書・監修書に『すごい塩』『ボケないのはどっち?』(ともにあさ出版)など。