妊娠を機に体重が大きく増えても、産後にすんなり元の体重や体型に戻れる人と、全くやせなくなるだけでなく不調がちになる人がいるのは、なぜでしょうか。その違いについて、パーソナルトレーナーの隅田咲さんは「姿勢が崩れ、体の奥にある脂肪燃焼が大得意な筋肉が衰えたから」と指摘します。隅田さんの著書『やせる背骨しぼり』(サンマーク出版)の内容を一部加筆し、この違いについて解説します。
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「産後は一生続く」とは?
「いつもしんどいし、ぼーっとしてくるから整体通いが欠かせない」
こう仰ったのは産後ダイエットの相談にいらした40代の女性です。妊娠してから出産までに体重が17キロ増え、産後さすがに11キロは落ちたものの、そこから数年やせられないとお悩みでした。
この方は、これまで炭水化物抜きや1日1食を水で溶いたプロテインパウダーに置き換えるなど、さまざまなダイエットに挑戦しいっときは体重が落ちるものの結局、リバウンド。エクササイズ系のダイエットは続いた試しがないこともあって食事系のダイエットに取り組んでいましたが、食べるのを我慢することに疲れきってしまったそうです。
出産後の数年間、首のこりと腰痛がひどくなり、ひざの痛みにも悩まされるようになったこともあり、定期的に整体に通わないと体がいうことを聞かなくなっていたとか。
まわりの若いお母さんたちは産後に体型が戻っているのに、自分は戻らないし体調は悪くなるばかり。年齢のせいかと思い悩んでいたところ、相談にいらっしゃいました。
まず、このかたが立った状態での姿勢を見させていただいたときに気になったのが、肩が上がっていて背すじは丸まっていることでした。これは出産後の子育てに忙殺された方に多い姿勢で、抱っこひもを使って長時間抱っこをしたり背の低いベビーカーを押したりするうちに、このような姿勢がクセになってしまうのです。
この「産後」という言葉がじつはくせもので、出産直後のことを思い浮かべる方が多いのですが、じつは産後は一生続くもの。たとえば出産で赤ちゃんが産道を通る際に開いた骨盤がうまく戻らなければ婦人科系の不調に悩まされやすくなりますし、インナーマッスルがゆるんだままだと骨盤を中心とした姿勢が崩れやすくなります。
その状態のまま慣れない子育てに追い立てられ体のケアをできずにいると、崩れた姿勢がクセづいて関節の可動域が狭まり、体の奥で姿勢を維持する際に動いていた脂肪燃焼が得意な筋肉が休眠状態に。これが「産後、全くやせなくなる」の大きな原因の一つです。
じつは、その状態から生涯抜け出せなくなる方も大勢いらっしゃいます。だから産後は一生、続くものなのです。
「やせる背骨しぼり」で筋肉の衰えを改善
だとしたらシンプルに姿勢を正せばいいのかというと、話はそう簡単ではありません。いくら姿勢を正したとしても、姿勢を維持するための筋肉が衰え、関節の可動域が狭まっていたら、正しい姿勢を長時間維持することができないからです。
このかたには1分間背骨をしぼりあげる「やせる背骨しぼり」をお伝えし実践いただきました。一例をご紹介すると、背すじを伸ばし、腰を正面に固定。胸が真横を向くほどしぼり続けるエクササイズです。