症状がある場合に受けるべき子宮体がんや卵巣がん検診
一方、同じく婦人科系のがんである子宮体がんや卵巣がん検診は、症状がなければ受けない方がいい。
「特に卵巣がんは超音波やCT、MRIでも発見が難しく、偽陽性になる確率も高い。検査によって早期発見できた、死亡率が低下したというデータがないうえ、結果的に偽陽性でも『陽性』と出てしまった以上は精密検査が必要になり、精神的、肉体的に健康を害する恐れがあります」(室井さん)
受けるべき検診と同じか、それ以上に重要なのはどこで受けるかということ。とりわけさまざまな検診オプションが並ぶ人間ドックではメニューの取捨選択が重要になる。
「受けるなら国立がん研究センターが作成した『有効性評価に基づくがん検診ガイドライン』に人間ドックなどの任意型検診で、適切な説明を受けたうえで実施できるとされているものから検討するべきです。大腸がんの内視鏡検査、乳がんの超音波検査など、5大検診をより詳しく調べ補完するものとなります。
結局信頼できるのは知り合いの医療関係者
反対に、慎重に考えてほしいのは、甲状腺がんを調べる頸部エコー。進行が遅いので、見つけてもがんが進行する前に別の原因や寿命で亡くなる可能性が高く、過剰医療につながります」(若尾さん)
尾崎さんが警鐘を鳴らすのはPET検査だ。
「早期の病気を見つけるのが得意ではない検査。がん検診の目的は早期発見なので向いていません」
菊池さんは、ムダな検査として腫瘍マーカー検査を挙げる。
「採血で特定の物質の値を調べるだけで、さまざまながんのリスクを調べられると人気ですが、もともとはがん患者が治療効果を確認するためのもの。がんを見つけ出すための検診としては適していません」
民間企業が行うような簡易検査の中には信頼性が乏しいものも少なくない。
「特に“血液一滴、尿一滴でわかる”ものはお手軽ですが、従来の検査方法に比べて信頼度は劣る。問題がないからと安心して、がん検診を怠る危険があります」(室井さん)
いざがん検診や人間ドックを受けるなら、どんな施設を選べばいいのか。尾崎さんは「知り合いの医療関係者に教えてもらうのがベスト」とアドバイスする。
「医療関係者なら責任をもって、いい施設を教えてくれる。周囲に信頼できる人がいれば、ぜひおすすめを尋ねてみてください」
ツテがなければ、インターネットの情報を頼りに施設を選ぼう。
「日本総合健診医学会で『優良認定施設』と認定されている施設や、日本人間ドック・予防医療学会で機能評価認定施設になっている施設を選ぶといい。規模の大小は関係ありません。日本人間ドック・予防医療学会では、施設の評価も公開されているので参考になります。マンモの読影医や内視鏡の専門医の数などをチェックするのもおすすめです」(若尾さん)
検診を正しく受けて、健康につなげよう。
◆教えてくれたのは
・きくち総合診療クリニック院長、総合診療医・菊池大和さん
・国立がん研究センターがん対策情報センター本部副本部長・若尾文彦さん
・常磐病院乳腺外科医・尾崎章彦さん
・医療経済ジャーナリスト・室井一辰さん
・新潟大学名誉教授・岡田正彦さん
※女性セブン2024年6月20日号
●秋野暢子さん、がん闘病を経て「人生に限りあることは身に染みた。やりたいことはすぐ行動」1人でハワイ旅行も
●《なぜ中性脂肪がたっぷりと?》今すぐ注意すべき「メタボリック・シンドローム」、心臓病、がん、糖尿病を引き起こすメカニズムとリスク