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「卵巣がんの疑い」で手術した65歳オバ記者、心配だった医療費のこと 12日間の入院で負担額は?

オバ記者
手術を終えたのもつかの間、今度は支払いの心配がのしかかる
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「卵巣がんの疑い」で10月初めに手術を受けた、ライター歴40年を超えるベテラン、オバ記者こと野原広子(65歳)。手術後の検査の結果、卵巣がんではなく「境界悪性腫瘍」という診断だった。そんなオバ記者が12日間の入院で心配だったのは医療費のことだった――。

* * *

私の身に起きたことは「まさか」の連続

「人生には上り坂、下り坂、そしてもうひとつ、まさかという坂がある」って、キャーッ。わけ知り顔のオヤジじゃあるまいに、こんなベタなこと、誰が言うか!と思っていた私。

ずい分前に森進一がラジオ番組で自身の離婚についてこう言ったときは、「うまいこというなぁ」と感心したけれど、あちこちで聞くようになるともう使えない。言っている人を見ると、こっちが気恥ずかしくて裸足で駆け出したくなったわ。

オバ記者
自分にも「まさかという坂」が訪れるなんて
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なのに、この夏から秋にかけて「卵巣がんの疑い」で入院、手術した私の身に起きたことは、この言葉通りのことの連続だったんだよね。

手術で取り出した卵巣と子宮を徹底的に顕微鏡で調べた結果、がんではなくて「境界悪性腫瘍」という、良性と悪性の中間という診断で、まずはめでたし。「よかったです」という担当医の晴れやかな笑顔を思い出すと、今でも1秒で涙が出るわよ。でも、“まさか”はそっちじゃないの。

「卵巣がんの疑い」と言われ頭が働かなかった

お腹が異様に膨らんできた私は重い腰をあげて区の婦人科検診を受け、そこから婦人科の専門クリニックへ。さらにがん細胞のありなしを写すというMRIのある病院に行き、その画像をもって大学病院へ。そこで約1か月、検査、検査、また検査で、病院内のいろんな科を渡り歩いた結果が「卵巣がんの疑い」。初めてこう言われた時は、頭が働かないというか、「がん」という言葉が腑に落ちないんだよね。

オバ記者
お守り代わりに飾っていた愛猫・三四郎のTシャツ
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その夜はベッドに寝ころんで天井を見ながら長いこと腕組みがほどけなかったわよ。これから先、どうしよう。私の中に潜んでいる“がん細胞”が、これからどんな暴れ方をするのかと思うと、寝返りばかり打って身体の位置が定まらない。

担当医は「卵巣の場合、手術で取り出してみないとハッキリしたことはわかりませんが」と前置きして、「がんだったとしても、今のところでいうと、ステージ1a、でしょう」というから、いますぐ日常生活が断ち切られることはなさそうだけど、それにしても心配なのが治療費よ。

オバ記者
入院当日、海外旅行みたいだけど気持ちが弾まない…
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『50才、貯金ゼロ』という女性誌の特集で、「2か月分の生活費があれば、何があっても大丈夫」と大口を叩いたばかりだ。仕事を失っても、1か月の間に職探しをしながらアルバイトをすれば、次の月につながる、と。でもそれって、健康でさえいれば、という大前提があってなんだよね。

「だから貯金しておけって言ったのに」という母ちゃんの言葉が

その大前提が崩れたら私はどうすんのよ。「いつまでもあると思うな、親と金と健康」という言葉が天井から降ってくる。「だから貯金しておけってあれほど言ったのに」と、墓場に入ったはずの母ちゃんの尖った声が聞こえてきた気がする。

オバ記者の母親
母ちゃんの声がどこからか聞こえる。耳が痛い(汗)
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「子供がいないと年取ったら寂しくなるよ」とは一度も言ったことがない母ちゃんも「いつまでも独り身じゃ、しゃあ~あんめ(仕方ないでしょ)」って、これは一度だけ言ったっけ。

もし私にパートナーと呼べる人がいたら、こんなに震えるような思いをしなかった?

大学病院で診察、検査をすると、次の検査の予約票を渡されて、それから会計をするんだけどPET検査のときは3万円弱。あとCT検査のときも万札だったっけ。とはいえカード払いだから実感がない。だけど入院、手術となるとどれだけかかるのか。

入院費を問い合わせると「70万円」!?

おめでたい私は「加入しているがん保険が2件入るから大丈夫」と思う一方で、「でもがんじゃなかったら?」と弱気になったり。およそ65歳のする心配じゃないわよ。茨城の弟は、「姉ちゃん、困ったら言って」と言ってくれたけど、“姉ちゃん”が11歳年下の弟に「困った」なんて言えるかよ。

オバ記者
いくら困っていても弟だけには頼れない
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それで明後日には入院という時になって、あらためて大学病院のパンフレットを開いたら、入院費を問い合わせる電話番号が目に飛び込んできたの。電話をかけると私の診察番号を聞かれ、少し待たされた後で、「だいたい70万円と考えていただいたらいいと思います」だって!!

オバ記者
おいしかった病院食
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耳の奥がジーンと痺れてきた。70万円なら全財産とほぼ同額だ。払える。でも電話では、こんなことも言われたの。「現状での計算ですから手術中に何か起きたり、術後の経過が悪くて入院が伸びると、金額が変わります」と。私の絶句が電話線を通って聞こえたのかしら。「気になるようでしたら、高額医療費制度の申請をしておくといいですよ。詳しいことは区役所に行けば教えてくれます」と。

「低額所得者」だから結局、負担額は?

翌朝、区役所に行ったわよ。「明日から入院なんです」と言うと、すぐに「限度額適用・標準負担額認定証」を発行してくれたの。その証書を見たら、私の適用区分は「オ」。ネットで調べたら「低額所得者」で、1か月の自己負担限度額は3万5400円だって!

これはあくまでも医療費で、入院中の食費と差額ベッド代は別なんだけどね。それでも10万円前後で済む計算よ。

確かにここ数年はギリギリ、カツカツの収入だったけれど、区から「低額所得者」と言われちゃうとねぇ。もっと働いて、アイウエオに分かれている所得区分の順位をあげていかなくちゃ!

オバ記者
入院中、物思いにふけっていた場所
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70万円から10万円に。これもずいぶんな“まさか!”だったけれど、もうひとつオマケがあるの。実は私、退院して1か月以上たつのに、まだ入院、手術費を払ってないんだよね。予定では退院して3週間目の診察のときには計算を済ませておきますって話だったんだけど、「実はまだ計算が終わってないんですよ」だって。

大学病院は、「低額所得者」の入院費を計算する気が失せた? まさかね(笑い)。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

【323】「卵巣がん疑い」65歳オバ記者、ついに最終診断の日 医師が告げると「ひざから崩れ落ちそうになった」

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