女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第74回は、夫婦で向かった長野県の「白駒池(しらこまいけ)」について。
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あれは去年の秋ぐらいだった。友達が一緒に飲んでいる時に「この間、白駒池に行ったんだけどすごく良かったから是非行ってみて~」と言っていた。
場所を調べてみると長野県だった。写真を見せてもらったが、ジブリの世界のような苔の森と空を写すほど静かな水面。とても綺麗な場所だった。瞬間的に行きたい!と思った。しかし、遠いのでなかなか機会がなかった。すごく綺麗な場所だから行こうよ~と夫を誘っていたが、スケジュールがなかなか合わなくて日々が過ぎていった。
秋も終わりかけのある朝、コーヒーを飲んでいると夫が「白駒池行ってみる~?」と言った。実は私もその朝、白駒池に行きたいなと思っていた。同時に同じ事を考えているのが面白い! 気持ちの良い青空の朝だったからだろうか。すぐに「行こう!」となり、大急ぎで用意して向かった。
東京から車で3時間半。森の近くは車の窓を開けるだけで空気が綺麗で気持ち良い。山道をクネクネ走って行くと、ゲートがあった。何だろうと思ったら、看板にその日あと30分で冬季閉鎖と書いてあった。ガーン。春までこの道路に入れないらしい。夫としばらく悩む。ゲートから白駒池までは車で7分くらいだ。ちょっと見て、引き返して来れるのか? もし、ゲートが閉まってしまったら出られなくなってしまうのか? このまま帰るのも寂しい。しかし悩んでいる時間も勿体ない。
他の車も見当たらない。不安だけどちょっとだけ行ってみよう!という事になり、車で向かってみるが白駒池の駐車場も見つけられなかった。グーグルマップで見るとこの辺りのはずなのに…。ああ~、残念だが引き返す事にした。春になってからだね~と話しながら、無事にゲートが閉まる前に出られた。
春になって再び「白駒池」へ!しかし…
そして春になり、白駒池今度こそ!と思い夫とモチ(トイプードル・女の子)も一緒に向かった。新緑が綺麗だ。前回とは、何だかグーグルマップが教えてくれる道のルートが違うが無事に到着した。前回とは反対の方向から来たのだろうか雰囲気が違う。
「ああ!」と夫がうめく。何々?と思ったら、「ここは御射鹿池(みしゃかいけ)だ!」と言う。あれ、私達が行きたいのは白駒池だ。二人ともなぜか御射鹿池を白駒池と思い込んでいた。御射鹿池も綺麗だが、ここではない。でもせっかくだからモチと一緒に散歩する。車に戻り、調べてみると白駒池もそんなに遠くない。気を取り直して、私達は白駒池に向かった。
そして、無事に白駒池の駐車場に到着! こんなに駐車場大きかったんだ。しかもほぼ満車だ。前回は焦っていたのでここまで来ないで途中で諦めてしまったんだ。駐車場に停めようと料金を払おうとしたら、おじさんに「あ、ワンちゃんは入れませんけどどう しますか?」と尋ねられた。しまった! そうか犬はダメなんだ。
私達は、またしても諦めて帰った。
(次回に続く)
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。