【7月7日は「ドリカムの日」】『大阪LOVER』『朝がまた来る』も…届かない願い、叶わない夢も丸ごと包んで歌うDREAMS COME TRUEは“やっぱり強い”
『大阪LOVER』女の子の「その後」を想像してしまう
私は大阪在住なので、38thシングル『大阪LOVER』(2007年)を避けて通るわけにはいかない。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(略してユニバ)のアトラクション「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」のために作られた楽曲で、とてもかわいい東京と大阪の遠距離ソングだ。
東京在住の女の子のほうが愛強め。一緒に住みたいから、大阪に来いって言ってほしい……という思いを、不慣れながら関西弁で語る歌詞がいじらしい。「大阪のおばちゃんになりたいんよ」とまで迫る積極性もナイスだ。
リリースから17年が過ぎた今、猛アピールした女の子のその後を想像してしまう。
同棲、もしくは結婚し、「あかんがな」とか「知らんがな」とか、すっかり関西弁をモノにし、「ほんまに大阪のおばちゃんになってもうたわ、しもた〜!」と自虐ネタまで飛び出すくらいに染まっているかもしれない。
そして、彼は相変わらず「そやなぁ」が口ぐせで、彼女に引っ張られ、通天閣やユニバでデートしていたらいいな、と思うのである。
「願いは届かない」と歌う『朝がまた来る』
昔リア充ソングと思っていたドリカムだが、冒頭で記した通り、改めて歌詞を見ると、意外に「願いが叶っていない」状況であることが多いことに気づくのである。この『大阪LOVER』もそうだ。女の子が必死で、男の子は生返事のまま終わる。『やさしいキスをして』(2004年)の孤独感もすごいし、もとに絶対戻らない「喪失感」をはっきり描いていたりもする。
23thシングル『朝がまた来る』(1999年)では、「願いは届かない」という、言葉が繰り返される。
大切な人が二度と戻らない。そのどうしようもない思いが空に昇る日まで、ただただ、変わらぬ一日を過ごす。「頑張って乗り越えよう」「いつか忘れられる」ではなく、「今はこのまま」と歌うのである。
届かない願いがある。叶わない夢もある。悲しみを振り払わず、丸ごと包んで歌ってくれるドリカム。彼らの「夢が叶う」の定義は、(こうなりたい)思いが成就するだけでなく、(つらい)思いが静かに消えることも入っている。小さな祈りの積み重ねかもしれない。
今年でDREAMS COME TRUEはデビュー35 周年。7月26日より全国公開となる映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』では、主題歌を担当している。
曲のタイトルは『Kaiju』。雷鳴と雨音に乗せ、音楽MONSTERと呼ばれしドリカムが投げかける、「Kaijyu」という暗号——。
不穏さと、守られている感の両方がやってくるから不思議だ。
やっぱり、ドリカムは強い。
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。新刊『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社刊)が好評発売中。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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