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年間80~90日旅をするフードアナリストの“ひとり旅”の楽しみ方「食費だけは青天井。宿泊費と交通費で節約する」 

「あなごめしうえの」(広島県)の「あなご弁当」(2700円)
「あなごめしうえの」(広島県)の「あなご弁当」(2700円)は帰りの新幹線のお楽しみ
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いまの65才以上にとって「定年後は悠々自適な暮らしを」は、ひと昔前の話。物価高や老後2000万円問題の危惧などさまざまな問題に直面している。でも、65才以上だからこそリッチな旅をリーズナブルに楽しめる裏技がある。“駅弁の女王”ことフードアナリストの小林しのぶさん(67才)に、その方法を聞きました。

“食”は豪華に。宿泊費と交通費は節約

仕事とプライベートを合わせると、年間80~90日は旅をしているというフードアナリストの小林しのぶさん。

夏が旬のハモの天ぷらを頬張る小林しのぶさん
夏が旬のハモの天ぷらを目あてに京都へも足を延ばす
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「私の旅の主役は“食”。春は山菜、夏は小イワシ(広島)に花咲ガニ(北海道)、秋は芋煮(山形)ときのこ(新潟)、冬は寒ダラ(山形)と寒ブリ(富山・新潟)など…食べたいものを決めてから行き先を決めます。ですから、食費だけは青天井。代わりに宿泊費と交通費で節約するのが、リッチだけどリーズナブルな旅の秘訣です」(小林さん・以下同)

現地で食べ歩くため、2泊3日など時間に余裕を持たせた行程が多いという。

岐阜・大垣で2泊3日“食い倒れツアー”リアル旅程表

岐阜・大垣で2泊3日“食い倒れツアー”リアル旅程表
岐阜・大垣で2泊3日“食い倒れツアー”リアル旅程表
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岐阜・大垣を代表する和菓子の名店「餅惣」の水まんじゅう
岐阜・大垣を代表する和菓子の名店「餅惣」の水まんじゅう。水まんじゅうが大好きな小林さんは1日4軒の水まんじゅう店を巡るという
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【1日目】
朝:新幹線こだまの自由席に乗車。

昼:到着後、水まんじゅうの店に1軒立ち寄る。

夜:早めにビジネスホテルへチェックイン。ホテル近くの居酒屋で夕食。

【2日目】
朝~昼 水まんじゅうの店を4軒巡って食べ比べ。昼食は飛騨牛のステーキ。

夜 長良川温泉へ。1泊2食付きの旅館へ宿泊。

【3日目】
15:00頃 混雑する前に、早めに帰路につく。

「交通費節約のため、停車駅の多い新幹線の自由席に乗ることがほとんどです。東海道新幹線の場合は『こだま』ですが、始発の東京駅から乗車すれば、ほぼ確実に座れます。時間がかかるといってもせいぜい1時間ほど多く乗るだけ。

自由席なら安いし平日はすいているので、複数のシートを占有して、めいっぱい足を伸ばして座っています(笑い)。乗り遅れたり混んでいたりする場合、一本見送って次の新幹線に乗ります。時間があるシニア世代だからこそ、旅は急がず。ゆとりを持てるのが65才以上の特権ではないでしょうか」

こだまに乗る理由は、時間があって安いからだけではない。車内でゆっくり駅弁を食べる楽しみを満喫するためでもあるという。

「目的地に着いてからが旅行ではありません。車内でも非日常を楽しむべき。私は漆器のマイぐい呑みを常備して、新幹線内で日本酒やワインをいただきます。プラスチックのカップより味わい深い気がします」

これからの季節は岐阜、北海道、広島へ

そんな“食道楽”の小林さんが、夏にすすめる旅先は、水まんじゅうがおいしい岐阜・大垣と、花咲ガニが旬を迎える北海道・根室、そして小イワシがおいしい広島だという。小林さんは「ジパング倶楽部」を活用し、運賃30%割引で出かけるという。

東京のおいしいものを詰め込んだ「東京弁当」(1850円)
東京のおいしいものを詰め込んだ「東京弁当」(1850円)を往路のお供に、「こだま」に乗り込む
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「『ジパング倶楽部』は、年会費が3840円(JR東日本の「大人の休日倶楽部ジパング」は別途カード年会費が524円)ですが、全国のJR線のきっぷが年間20回までは最大30%割引になります。JR西日本線のきっぷもネット購入で何回でも30%割引。関西に2回も行けば元が取れます」

小林さんの旅を聞いたら、65才からのひとり旅が楽しみになった。

◆“駅弁の女王”こと小林しのぶ

フードアナリスト/特に旅先での食や郷土にまつわる取材活動を続ける。駅弁の“研究”は30年以上におよび、食べた駅弁の数は1万食以上。“駅弁の女王”の異名を持つ。主な著書に『日本が誇る 絶品の食遺産100』(天夢人)など。

取材・文/番匠郁

※女性セブン2024年7月25日号

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