遺品整理・生前整理などの事業を展開し、おひとりさまシニアのサポートも行っている山村秀炯さん。多くのおひとりさまと関わってきた山村さんは、老後をいきいきと過ごすためのカギを著書の『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)にまとめている。ひとり暮らしだからこその自由さを手に入れることができる一方で、身近に頼れる人がいないなど、いざというときのリスクも考えておく必要があるという山村さんに、“壁”を越えられない人の特徴について教えてもらった。
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老後ひとり暮らしの壁を越えられない人の特徴2つ
山村さんは、老後ひとり暮らしの壁を越えるには「自己決定すること」と「孤立しないこと」がコツだと話す。そして、その人が壁を越えられるかどうかは、部屋を見るだけでもわかる場合があるという。自宅が“壁”を越えられない部屋になっていないか、確認してみよう。
玄関や靴が整理されていない
まず、目に入る場所である玄関に特徴がある、と山村さん。
「とくに靴、履物の状態は、つい気になってしまいます。ボロボロでかかとが潰れたスニーカーが無造作に玄関に転がっていると、あまり積極的に外出したり、人と会ったりすることがない人なのかなと思います」(山村さん・以下同)
山村さんが見てきたのは、ボロボロの靴といっても外に出かけることが多く履き古されているのではなく、「サンダルのようにつっかけて近くのコンビニやスーパーにいく程度のケースがほとんど」だという。あまり出歩かないからこそ履き心地が気にならない、あらためて人と会う機会も少ないために見た目も気にしていないのだろうと推測している。
足元は性格やこだわりが出やすく、生活感がにじみ出る部分だといえる。また、山村さんの経験上、靴がこのような状態の人は、たいてい部屋も散らかっているのだという。
貴重品があちこちに散らかっている
山村さんのような業者が遺品整理を行う際に、お金や通帳、印鑑など貴重品のありかを早めに確認するという。
死後の手続きに必要なものだからというのが、その理由。後になって見つからないと騒ぎになったり、うっかり処分してしまうことを防ぐためだ。ゴミだと思われるようなお菓子の箱を開けたら、札束が詰まっていたこともあったという。業者であれば、中を逐一確認するものの、家族であれば気付かず捨ててしまう可能性もある。
「こうした貴重品の類がなかなか見つからなかったり、あちこちに点在したりしている人は、やはり総じて整理整頓がなされていません」
このように自己管理が苦手な人は、思わぬ資産があとから出てくることがあるなど、相続の際にトラブルが起きがちだという。
「決して誤解してほしくないのですが、貴重品をわかりやすいところにまとめておきましょう、と言いたいわけではありません。防犯の意味では、見つかりにくいことはむしろメリットでもあります」
つまり、わかりにくい場所にしまうにしても、あくまで意図して管理できているか、ということである。また、自己管理ができる人は、ものが少ない傾向にあるという。
「他人からすると散らかり放題に見えても、自分の中では何がどこにあるかがだいたい把握できているといった経験があなたにもありませんか?」と山村さん。それはつまり、「自分の生活を自分で管理できているから幸せといえる」のだと続ける。
そして、「ゴミ屋敷」と「モノ屋敷」は違うとした上で、自分で自分の生活を管理することも年をとるにつれて難しくなってくる、と山村さん。
「自分の管理能力の衰えに備えて、決められるうちに決めておける人の部屋は、比較的モノが少なくシンプルな傾向にあると思います」
老後ひとり暮らし5つの壁
老後におひとりさま生活を謳歌したいと考えているなら、そのときが来るまでに準備や知識を備えておく必要がある。
「『おひとりさま』は気楽で自由です。だからこそ本人の性格や生活スタイルが如実に表れます。そしてそれは、老後ひとり暮らしの壁を越えられる人と、見て見ぬ振りをする人との違いにも通じていると思います」
そう話す山村さんが老後ひとり暮らしの壁として挙げる、5つの項目を紹介する。
お金の壁
ひとり暮らしはお金がかからないように感じられるものの、家賃や光熱費など夫婦2人で稼いで支出をシェアした方が効率的。収入がひとり分であることは、老後資金の用意など経済的なリスクが生じる危険性がある。
「年をとると判断能力がおとろえ、お金の管理が困難になっていきます。認知症になってしまうと、自由に預貯金をおろすことすらできません」
健康の壁
体調を崩した際のセルフケアが難しい、体調不良の時に適切な治療を受けられないなど、健康に関するリスクが高くなる可能性がある。とくに大きな病気やけがで入院するときに問題となる。
「通常、病院に入院するときには、支払いの連帯保証人、万が一の事態に備えての身元保証人、そして自分が意識不明になったときに職場や大家さんなどへの連絡や着替えの洗濯など、ちょっとした用事を代行してくれる世話人が必要になります。同居人のいない『おひとりさま』の場合、これらを誰に頼むかが難問となります」
心の壁
家族やパートナー不在の生活では、人との交流が日常的に不足しがちなため、孤独感と社会的孤立のリスクがあげられる。
「その結果、強い孤独感にさいなまれたり孤立におちいったりすることがあります。また生活の悩みやストレスをひとりで抱え込むことで、精神的負担が蓄積していくと、うつ病などを発症する危険性が高まります」
介護の壁
老後に徐々に身体や精神が弱ってきたときに、誰に面倒を見てもらうかも難問となる。
「回答としては、老人ホームなどの高齢者施設に入居する、になりますが、入居に当たってはまとまった金額が必要になるので、あらかじめ用意しておく必要があります」
死後の壁
老後に自分の世話をしてくれる人や、自らの財産を相続させたい相手がいないとなると、孤独死のリスクが予想される。
「あらかじめ死後の後始末の算段をつけておいて、いつ死んでもいいように準備をしておくのが、『おひとりさま』としての社会に対する礼儀ではないでしょうか」
◆教えてくれたのは:山村秀炯さん
やまむら・しゅうけい。株式会社GoodService代表。愛知県を中心に遺品整理、生前整理などの事業を行う中で、ひとり暮らしシニアのさまざまな問題に直面。親族や友人に頼れない、頼りたくない「おひとりさま」という生き方を尊重し、なおかつ不安やトラブルなく生きていくためのサポート事業を新たに立ち上げる。メディアへの出演・取材協力も多数。著書に『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)。https://shukei-yamamura.com/