《一躍注目!》ふるさと納税100万円の返礼品「1年間キャスター券」に応募した77才女性「1日の感謝・感動があってこその人生。そういうことにお金を使いたかった」
昨年10月から月1回、兵庫県多可町のケーブルテレビ「たかテレビ」でキャスターを務めている“ふーみん”こと松村二美さん(77才)。きっかけは「ふるさと納税」で、寄付額はなんと100万円という。どんな人なのか? 千葉県いすみ市から多可町まで、時間をかけて収録に向かう彼女に同行した。
「100万円でニュースキャスターになれる」ユニークな返礼品に興味
「これまでもふるさと納税の寄付を全国のいろんな場所にしてきましたが、目的は主に返礼品の食品でした。『食べておいしかったな』で終わり。体の栄養になるけど、心の栄養にはならない。なんとなく物足りなさも感じていたんです」(ふーみんさん・以下同)
昨年の春、あるバラエティー番組のふるさと納税特集で、「100万円でニュースキャスターになれる」というユニークな返礼品があることを知り、興味を持ったという。
「その番組で芸人さんが、『こんなのに応募する人がおるわけがない』などと、けちょんけちょんに言っていたんです。私はその言い方に憤慨し、返礼品を企画した兵庫県の多可町について調べ始めました」
すぐに電話やメールで多可町役場とやりとりを始め、実際に役場とたかテレビ局を訪れ、詳しい説明を聞いてから寄付を決めたという。
「多可町は私の故郷、奈良県桜井市によく似た山に囲まれた盆地で、皆さんとてもやさしいんです。それに、なんといっても多可町という名前がいい。だって“多くの可能性がある町”って、とてもいい響きですよね! 調べる中で“敬老の日発祥のまち”ということも知りました。『キャスターになれる』なんて素敵なことを考える人がいる、この町に寄付したい!と心から思ったんです」
この返礼品の考案者である多可町税務課の笹倉敏弘さんは、こう振り返る。
「全国的に知名度がない多可町をアピールするために、ふるさと納税の返礼品を100種類にしようということから『1年間ニュースキャスターになれる券』を思いつきました。ニュースキャスターは男女ともに人気の職業のひとつ。ふるさと納税で夢を実現してもらいたいと思ったんです」
2014年に寄付の募集を始めたものの10年間寄付はなし。ふーみんさんからの問い合わせも、正直、実現は難しいと思ったそう。
「1年間務めるキャスターですが、交通費や宿泊費の支給はありません。ふーみんさんは千葉県にお住まいと聞き、100万円の寄付も交通費もとなると負担が大きすぎると思ったんです。でも、『100万円なんか惜しくない』と言ってくださり、心からありがたいと思いました」(笹倉さん)
収録に向かう旅程も楽しいひととき
奈良県桜井市出身のふーみんさんは元小学校の先生。奈良で3年、結婚を機に東京に移り、定年まで教師を続け、退職後は千葉県いすみ市で暮らしている。子供の頃からの夢は教師、新聞記者、小説家で、キャスターへの興味はまったくなかったが、新しい体験への好奇心と興味は人一倍強い。
「100万円はふるさと納税の控除上限をはるかに超えていますが、いままで頑張って働いて得たお金は日々の感動のために使っていいと思う。
1日の感謝・感動があってこその人生だと思っているので、そういうことにお金を使いたかったんです」(ふーみんさん・以下同)
もう1つの決め手は、多可町に行くことで、桜井市の施設で暮らしている母の西川鈴子さんに会いに行けることだった。
「多可町に行く途中で施設に寄れば、母との時間も過ごせます。だから毎月私は1泊2日で通っています。
1回の面会時間は20分ほどですが、母の顔を見て話し、夫が作ってくれる母の好物の焼きいもと和洋菓子を差し入れ、スマホの写真を見せながら近況報告するのは楽しみです」
交通費、宿泊費などはできるだけ節約している。
「JRの『ジパング倶楽部』会員なので、特典を利用するため新幹線はひかりに乗り、名古屋からは特急券を使わず桜井市へ。桜井駅からは母が入所している施設まで約20分の上り坂を歩きます。これは交通費の節約というより、運動不足の解消のためかな(笑い)」
昼食はパンとトマト、果物を持参。電車の中で食べるという徹底ぶりだ。いざ多可町役場に到着してからは、1時間ほどで収録を終えるという。
「リハーサルなし、NGもほとんどないから、あっという間。でも、ファンレターやメッセージを見せてもらい、担当の皆さんとお話をするのが何よりも楽しい。今年9月で終わるのは寂しいけれど、あと少し楽しみます!」
取材・文/山下和恵 撮影/奥田珠貴
※女性セブン2024年9月12日号