生存率は上がっているが、いまだに日本人の2人に1人が患うがん。実際に自分ががんと告知されたら、家族や大切な人にどう伝えるべきか。現在も闘病中の経済アナリスト・森永卓郎さん(67才)のがん告知は、妻と“同時”だったという。
医師からの告知中「何を他人事のように聞いているんですか」
「今回の取材で、世間一般的にはがんの告知を受けてからその事実を配偶者に伝えるものだと聞いて、びっくりしました。ウチは違いますから……」驚いた表情で語る森永さん。昨年11月にすい臓がんのステージ4と診断された森永さんは、「ウチは全部、妻とペアで動いています」と語る。
「病院に行くのも診察室に入るのもひとりのときは一度もなく、常に妻と一緒。だからがんの告知を受けたときも妻が隣にいました。医者に質問するのも9割以上が彼女で私はずっと黙って聞いていたので、途中で医者から“これあなたの話ですよ。何を他人事のように聞いているんですか”とちょっとキレ気味に言われたほどです(苦笑)」(森永さん・以下同)
予後の悪いすい臓がんの告知を受けたものの体は元気なので診断を信じ切れず、セカンドオピニオン、サードオピニオンを受けた。
「すべて妻が一緒でした。彼女は表面的にはうろたえていなかったけど内心はすごく驚いていたと思います。最初の告知後、すぐLINEで子供たちに連絡して、それから医者や私のマネジャーと話をして、一緒に動いてくれました。
結婚してから40年、夫婦の間で一切秘密を持たないことをルールにしてきたので隠すことも伝えることも何もなく、闘病中に体調が急変しても、妻がいるから対応できます。彼女がいなかったら、とうの昔に死んでいたでしょうね」
私がいなくなったら妻は自由に生きてほしい
すい臓がんはのちに「原発不明がん」(転移したがんであることがわかっているが、最初に発生した部位が不明の悪性腫瘍)と再診断され、最大で90kg近くあった体重は50kgまで減少した。それでもがんと闘いメディアに出続ける森永さんは最近、自分に課したことがある。それは、ずっと「ペア」だった妻を「独り立ち」させることだ。
「いまのところがんは小康状態ですが、何か月後に死ぬかわかりません。そのとき、妻の性格からすると、私の死を絶対に引きずるんです。彼女はこれから20年も30年も生きる可能性があり、私がいなくなったらひとりで自由に生きていってほしい。
だから私が行っていたお金の管理や税金の処理、パソコンのセットアップまで、心を鬼にして全部やらせています。でも、40年間も一緒にいると冷たく突き放すことがなかなかできない。その葛藤にいま、いちばん苦しんでいます」
◆経済アナリスト・森永卓郎さん
1957年東京都出身。獨協大学経済学部教授のかたわら、タレントとしても活躍。2023年末、すい臓がんを告白(その後、「原発不明がん」と診断)。現在も闘病中。
※女性セブン2024年9月12日号