「薄毛」の悩みは、もはや男性だけのものではない。女性のためのケアもどんどん進化して、選択肢が広がっている。薄毛に関する疑問や根本的に改善する新治療について、専門医に教えてもらった。
【目次】
Q.女性の薄毛の特徴は?
A.女性は更年期前後から髪の毛が全体的に薄くなりやすい
「男性が頭頂部や生え際が薄くなるのに対し、女性の薄毛は髪の毛が全体的に薄くなるのが特徴。特に更年期前後で薄くなったと感じる女性が多いですね。もちろん個人差があるので、女性でも若いうちから発症する方や、部分的に脱毛するケースもあります」(湘南AGAクリニック新宿本院 院長・斎藤浩一さん)
下記のリストのような症状があれば、薄毛が進行している可能性あり。
<こんな症状があれば要注意>
□薄毛が目立つ
□頭皮の地肌が透けて見える
□分け目が広がってきた
□おでこが広くなってきた
□抜け毛が増えてきた
□髪のボリュームが減った
□髪のハリ、ツヤ、
□コシがなくなった
□白髪が増えた
□頭皮のかゆみや
□ベタつきが気になる
(湘南美容クリニックホームページより)
Q.女性の薄毛の原因は?
A.女性ホルモンの減少による毛周期の乱れが主な原因
「加齢とともに女性ホルモンが減少することで毛周期が乱れ、髪が充分成長する前に抜け落ちてしまうことが大きな原因です。そのほか過度なストレスや生活習慣の乱れ、誤ったヘアケアといった原因が考えられます」(斎藤さん)
Q.毛根が死んだら毛は生えてこないって本当?
A.薄毛が進行すると髪の寿命が縮み死んだ毛根から毛は生えない
「正常な毛周期は2~6年ですが、薄毛が進行すると正常時よりも短い期間で、短く柔らかい毛が抜け落ちてしまいます。毛髪の寿命が一気に縮んでしまい、数か月から1年になってしまうことも。死んでしまった毛根からは、新たな髪の毛は生えません。そうなると治療しても発毛できないので、早めに医師に相談することが大切です」(斎藤さん)
Q.薄毛治療はいつから始めたらいい?
A.「あれ?」と思ったら受診。早めに治療を始めるのがベスト
「女性は男性と違い髪全体がまばらに薄くなっていくため、薄毛に気づきにくく、気になった頃にはかなり進行しているケースも多いんです。薄毛治療は『あれ?』と思った段階で受診するのがおすすめ。早い段階でスタートすれば、外用薬と内服薬だけで改善することもありますし、治療回数も少なくなります」(聖心美容クリニック横浜院 院長・佐々木直美さん)
Q.どんな薄毛治療があるの?
A.内服・外用薬から再生医療まで多くの選択肢から選べる
「現在は、再生医療を用いた最先端の治療から、内服・外用薬による手軽な治療まで、多くの選択肢があります。内服・外用薬で物足りない結果しか出ていない人は、複合的な治療を試してみる価値があります」(佐々木さん)
Q.薄毛治療にはどれくらいの期間が必要?
A.原因や症状によって異なるが半年から1年ほどで効果を実感
「薄毛の原因や症状は人それぞれで、治療内容も異なるため一概には言えませんが、早い人だと内服薬を服用して2か月くらいで改善が見られることも。半年から1年ほど治療を続けることで効果を感じる方が多いですね」(斎藤さん)
Q.話題の再生医療ってどんな治療?
A.幹細胞などを利用して人間の再生力を引き出し、機能を取り戻す医療
再生医療とは人間の再生する力を利用して、機能不全となった体の機能を取り戻す治療のこと。
「ノーベル賞を受賞したiPS細胞やES細胞(※1)、自身の幹細胞や血液由来成分を使うものなどがあります。高度な技術や医療機器が必要なため、限られたクリニックでのみ受けられます。薄毛治療以外にも、美容分野では豊胸や若返り治療などにも用いられ、近年は幹細胞そのものでなく、幹細胞を培養した上澄み(上清液)を利用することも増えています」(佐々木さん)
こんなにスゴイ!体性幹細胞
現在、実用化されている再生医療の中心は体性幹細胞。体性幹細胞は臍帯血や骨髄、内臓、脂肪など人間の体に存在する細胞で、皮膚や赤血球、血小板など様々な組織の細胞に変化する能力を持つ。傷ついた細胞を修復する働きを治療に利用し、失った機能を回復させることができる。
薄毛を改善する主な再生治療
・自身の脂肪由来幹細胞を培養して注入
体への負担が少ないお腹の脂肪から採取した幹細胞を培養して頭皮に注入。
・自身の脂肪由来幹細胞を濃縮して注入
お腹などの脂肪から採取した幹細胞を培養せず、濃縮したり、加工したりすることで活性化させて頭皮に注入する。
・幹細胞培養上清液を注入
幹細胞を培養した培養液から幹細胞を取り出した上清液には、エクソソームや成長因子といった細胞の再生や修復をサポートする成分が豊富。それらを注入することで頭皮環境を改善。自身由来のもの以外に、臍帯血由来などの上清液を精製して使用することも。
・自身の血液成分を抽出して注入
自身の血液を採取し、そこから細胞の再生や修復を促す成長因子などが含まれた成分を抽出して注入する。PRP療法と呼ばれ、副作用が起きにくいといわれている。
※1 iPS細胞、ES細胞は治験段階です。
◆教えてくれたのは:聖心美容クリニック横浜院 院長・佐々木直美さん
2008年に開設した毛髪再生外来では、再生医療を中心とした薄毛治療に取り組む。多くの選択肢から悩みや生活スタイルに合った最適な施術を提案。
◆教えてくれたのは:湘南AGAクリニック新宿本院 院長・斎藤浩一さん
湘南AGAクリニックゾーン統括ドクター。確実に結果を出し、生活の質を改善する医療をモットーに治療を行う。植毛の年間症例数は250件以上。
取材・文/青山貴子
※女性セブン2024年10月17日号