ゲップは誰にでも起こる生理現象だが、あまりにも頻繁に出たり、急に数が増えたりしたときは病気のサインの可能性もあるので注意が必要だ。医師の木村眞樹子さんにゲップの原因と対処法、ゲップ対策におすすめの食材などを教えてもらった。
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ゲップがよく出る原因
ゲップとは、胃や食道にたまった空気が逆流して口から出る現象です。食事や会話のときに空気を飲み込んだり、炭酸飲料を飲んだりするとゲップが増えることがありますが、それは生理現象なので問題ありません。
しかし、胸やけや胃もたれを伴う場合には、逆流性食道炎などの病気が隠れている可能性があります。逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流する病気で、逆流に伴ってゲップが増えます。
また、精神的なストレスによって無意識に空気をのみ込む「呑気症(どんきしょう)」という病気もあり、ゲップや腹部膨満感が代表的な症状です。
そのほか、女性は更年期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少すると、自律神経が乱れて消化機能が低下し、ゲップが増えることがあります。
ゲップの対処法
ゲップが気になる人は、お腹を締め付けないことや正しい姿勢を意識する、食生活を見直すといった対処法を意識的に取り入れてみましょう。
お腹を締め付けない
お腹を締め付ける服などで胃が圧迫されると、ゲップが出やすくなります。胃への圧迫を避けるため、ウエストのきつい服を着たりガードルを履いたりするのは避けた方がよいです。ワンピースやウエストがゴムのパンツなど腹を締め付けないゆったりとした服装を選び、食後にはベルトをやや緩めましょう。
また、お腹に圧力が加わるタイプの筋トレや、重い荷物を持ちあげる作業などを行うと胃酸の逆流が起こりやすくなる場合があります。とくに食後は、運動や作業をなるべく控え目にするのが理想的です。
正しい姿勢を維持する
スマホやパソコンを使用していると、姿勢が崩れて猫背や前かがみになりがちです。そうすると、お腹に圧力がかかりゲップが出やすくなります。
お腹への圧迫を避けるには、背筋を伸ばして正しい姿勢をキープすることが重要です。あごを軽く引いて胸を張ると、きれいな姿勢を保ちやすくなります。
また、できるだけ仰向けの姿勢で就寝するようにすると胃への圧力を避けられます。横向きで寝る際には、体の左側を下にして寝るとゲップの悪化を防ぐことができます。胃は左側が膨らんだ形をしているため、左側を下にすると胃の中にたまった胃酸や食べ物が逆流しにくくなるためです。
食生活を見直す
脂質や糖分の多い食事は消化に時間がかかるため、胃に負担がかかります。香辛料やアルコールなどの刺激の強い飲食物も、胃への負担となるので摂りすぎに注意が必要です。また、炭酸飲料は胃にガスがたまるため、ゲップが多い人は飲むのを控えることをおすすめします。
食事の内容だけでなく、食べるスピードにも注意が必要です。早食いをすると食べ物と一緒に空気を飲み込みやすくなるので、ゆっくりと一口ずつ噛んでから食べるようにしましょう。食べすぎると胃の内圧が高まってゲップが出やすくなるため、過食を避けることも重要です。
また、食べてすぐに横になると胃酸が食道に逆流して逆流性食道炎になるおそれがあるため、食後3時間程度は横にならないようにしましょう。寝る直前に食べたり、夜食を取ったりするのもNGです。
ゲップを減らすために役立つ食材
消化のいい食材を摂って胃への負担を減らしたり、胃の粘膜を守る食材を取り入れたりすると、ゲップを減らすことにつながります。
胃酸の逆流や胸やけを感じるときは、お粥やうどん、バナナ、じゃがいもなど消化にいいものを食べましょう。キャベツやトマト、アスパラガスなどの胃の粘膜を健やかに保つビタミンUを豊富に含む食材を摂るのもおすすめです。
また、胃腸が冷えると消化機能が低下するため、冷たい食べ物を避けたり、胃腸を温める食べ物を積極的に食べたりするといいでしょう。生姜は体を温める食べ物の代表格で、血行をよくして胃腸での消化吸収を助ける働きが期待されています。
ただし、生姜は繊維質なので比較的消化しづらく、大量に食べすぎると胃に負担をかける場合があります。生姜を食べるときは1日10g以下(農林水産省「生姜は体を温める効果があるそうだが、どのような成分が働いているのですか。」https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1811/01.html)を目安にしてください。
ゲップの改善は漢方薬も役立つ
ゲップが多い場合には、食生活の見直しや姿勢の改善などに加えて、「胃腸の働きをよくする」「胃に停滞した飲食物やガスを取り除く」などの漢方薬が有効です。
おすすめの漢方薬
・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
「気(エネルギー)」の流れを整えて胃腸の働きをよくし、胃の蠕動(ぜんどう)運動を促すことでゲップに働きかけます。みぞおちがつかえ、悪心や嘔吐があり、お腹がゴロゴロとなる人に向いています。
・平胃散(へいいさん)
胃腸の機能を整えて停滞した飲食物や腹部のガスを取り除くことで、ゲップを改善します。胃がもたれて消化不良になる人に向いています。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:医師・木村 眞樹子さん
きむら・まきこ。医師。都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。 自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。 症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でもサポートを行う。
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