秋の行楽シーズン到来で、お出かけを計画している人も多いはず。一方で、トイレが不安で外出に二の足を踏んでしまうという声も――。そこで、『女性セブン』の読者に、外出時のトイレ対策についてアンケートを実施し、徹底調査。「トイレが見つからない」「数が足りない」「汚い」「紙がない」「虫だらけ」「行列」「流れなかった」「つまらせた」など、「外出先でのトイレで困った経験あり」と答えた人は、なんと85%にも及んだ。なかなか相談しづらい問題を検証する。
※アンケートは『女性セブン』の読者(全国の20~80代男女)3446人が回答(回答期間2024年9月11~23日)。
きれいなトイレが無料で使えるのは贅沢
ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)によると、世界では約3人に1人がトイレを使えない生活を送っている(※ユニセフとWHOが2011年の統計をもとに予測。2015年までに世界でトイレを使えない人の数は、世界人口の3分の1にあたる約24億人にのぼると発表した)。
「日本のトイレ環境は、質・量ともに世界トップレベル。不特定多数の人が無料で利用できる公共トイレも、海外に比べて圧倒的に数も多く清潔です」と、トイレ研究家の白倉正子さん。海外では紙が備え付けられていなかったり、使用が有料のケースも多い。
にもかかわらず、日本のトイレ環境に不満がある人は多く、外出先のトイレで困った経験がある人は85%。その理由のうち最多は、「汚い・臭い」、次いで「行列していた」だった。
「行列ができる原因のひとつが便器の洋式化です。和式に比べて洋式は、快適ゆえに利用時間が長くなりがち。トイレの回転が悪くなるので、行列ができやすくなります」(白倉さん)
贅沢な悩みを抱えているわけだが、困っているのは事実。具体的に何に困り、どう解決しているのか、見ていこう。
【ぶっちゃけトイレ話】失敗エピソードから学ぶ、外出先でのトイレ対策
「女性セブン」読者から寄せられた外出先でのトイレ失敗談に、思わずうなずく人も多いのでは?“あのとき、どうすればよかったのか”を解説。
・つまって困った【1】
「美容院で腹痛になり急いでトイレへ。ところが、トイレットペーパーがつまってしまったんです。何とか流そうと試行錯誤しましたが、汚物が逆流して床まであふれ返る大惨事に……。店に申し出て謝罪しましたが、あれほど恥ずかしかった経験はありません」(63才・主婦)
・つまって困った【2】
「行列していたトイレにやっと入れたと思ったらつまっていて逆流中! 私のせいじゃないのに、店の人に報告せざるを得ず、腹が立った」 (48才・主婦)
・紙がなくて困った【1】
「トイレットペーパーもポケットティッシュもなかったことが! 仕方ないので、乾くまでじっと待っていたことがあります。行列していなかったのと、小さい方だったのが幸いでした」(55才・主婦)
・紙がなくて困った【2】
「よりによって“大”の後に、トイレットペーパーがないことに気づきました。しかも並んでいる人がいたので大焦り。携行していた生理用品を当てて取りあえず出て、別のトイレに入り直しました」(48才・会社員)
・見つからなくて困った
「外出先で急にお腹が痛くなり、切羽詰まった状況に。道行く人にトイレの場所を尋ね回っていたら、“近くだから”と自分の家のトイレを使わせてくれた救世主が!」(37才・会社員)
・行列していて困った
「ライブ会場のトイレはいつも激混み。40分並んでも辿り着けなかったことが。そこで、間に合わなさそうなときは開演前に用を足すのはあきらめ、始まってからフリートークのときなどに抜けることに。誰もいないのですぐに入れます」(42才・会社員)
・汚くて困った【1】
「おしゃれなレストランで女子会を開催。みんなからも好評でしたが、トイレが1個しかないうえ、男女共用で汚くて……。楽しい気分が台無しに」(51才・主婦)
・汚くて困った【2】
「潔癖性なので、ズボンのすそが床につく和式はもってのほか。洋式も肌が座面につかないようお尻を浮かして用を足しています。トイレに行かずに済むよう、外出は2時間以内にしています」(73才・主婦)
・間違えて困った
「トイレの男女を示すアイコンが鳥の絵で表現されており、わかりづらかったため、間違って男性用トイレに入ってしまいました。使用後、扉の前に男性が並んでいて、お互いにビックリ」(53才・主婦)
・わかりづらく間違えて困った
「最近のトイレは、流し方がレバーだったり、ボタンだったり、手をかざしたりといろいろ。特に新しい施設などでは、まったくわからない場合があり、あたふたします」(50才・主婦)
・渋滞にはまって困った【1】
「高速道路で渋滞にはまり、がまんできず、ティッシュペーパーを入れたビニール袋に用を足しました。しかし量が多くて、2袋に分けたほど……。においも漏れて大変でした」(37才・会社員)
・渋滞にはまって困った【2】
「渋滞にはまってトイレに行けず、ようやくパーキングエリアへ。トイレのドアを閉めた瞬間、間に合ったという気の緩みか、その場で全部漏らしました…」(45才・会社員)
・恥ずかしくて困った【1】
「お腹を下してトイレへ行ったら大行列。漏れそうで危なかったので"緊急事態なんです!"と半泣きで叫んで、先頭の人に譲ってもらいました」(62才・パート)
・恥ずかしくて困った【2】
「トイレットペーパーをお尻に挟んだままズボンをはいたようで、ウエストからペーパーがはみ出していました。後ろにたなびかせたまましばらく歩いていたのですが、親切な人が教えてくれて助かりました(恥)」(60才・主婦)
トイレ研究家&トイレ診断士が悩みに回答
日本人初の世界トイレ協会理事でトイレ研究家・白倉正子さんやトイレ診断士1級、臭気判定士・山戸伸孝さんが、そんな悩みに答えてくれた。
【Q】外出先のトイレをつまらせた! どうしたらいい?
【A】何をつまらせたかにより対処法が変わる。知らん顔で出るのだけはやめよう!
放置すると被害を拡大させる可能性があるので、すぐに店員を呼ぶのが正解。
「便器には、トラップと呼ばれる水がたまっている部分があります(別掲イラスト参照)。ここはS字型になっていて、たまった水が蓋の役割をし、下水道からのにおいや虫の侵入を防いでいます。
便やトイレットペーパーが詰まった場合は、水でふやければ流れる可能性もありますが、ボールペンなどの異物は、S字部分に引っかかるので、手鏡を入れて下から確認して取り除きます。問題なのが生理用品。水を吸収すると固まる高分子吸収ポリマーが使われているので、配管の中で水を吸って広がり、トイレ全体をつまらせます」(山戸さん・以下同)。トイレットペーパー以外は流さないこと!
●ティッシュペーパーの代用は危険
「日本産業規格(JIS)にのっとったトイレットペーパーは、水につけてから100秒以内に溶けるように作られています。逆にティッシュペーパーは水に溶けにくい加工が施されているので、一度にたくさん流すとつまる可能性が」。水に溶けやすいタイプのポケットティッシュを携行しよう。
【Q】汚いトイレは使いたくない!事前に見極める方法はある?
【A】予備のトイレットペーパーが過度に置かれているトイレは要注意
「掃除が徹底されているかを見極めるポイントは、温水洗浄便座のノズル。ノズルがきれいなトイレは、細部まで丁寧に掃除されている証です。気になるかたは、『掃除』ボタンを押すなどして、ノズルの状態を確認してみるとよいでしょう。
さらに、水タンクの上や棚にトイレットペーパーが大量に置いてあるトイレは要注意。清掃員の巡回頻度が低いと考えられるので、管理が甘く、荒れやすいトイレとも言えます」(山戸さん)
【Q】ドライブ中にもよおしたものの渋滞にはまった……どうすれば?
【A】心の余裕のためにも携帯トイレなどの備蓄を!
「車中には携帯トイレや大人用紙おむつを備蓄しておくと安心です」(白倉さん)。携帯トイレにも大小を兼ねるものなどいろいろなタイプが。もよおしたらどうしようという緊張感からトイレが近くなる人もいるが、備蓄しておくと心の余裕にもつながる。
●サービスエリアのトイレ、数があるのに行列ができるのはなぜ?
「数が多いトイレの場合、奥は空いているケースが多々あります。トイレの配置や並ぶ場所に問題があるので、可能であれば奥まで行って確認するのも手」(白倉さん)
自分だけのトイレマップを作る
いくら“トイレ先進国”日本でも、外出時に関しては、必ずしもすぐトイレを利用できるとは限らない。不測の事態に備えて、事前にできることもあると、白倉さんは言う。
「施設やトイレの入り口などに『○階にもトイレがあります』など、ほかのトイレへ誘導する案内が貼ってある場合、そのトイレは混雑しやすい場所だといえます。自分の行動範囲内の穴場のトイレを日頃から意識的に探して調べ、リスト化し、自分だけのトイレマップを作っておくと便利です」(白倉さん・以下同)
トイレマップにはまず、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、デパートなどのトイレ情報を入れておきたい。
「特に『ローソン』は、コンビニエンスストアチェーンで初めてトイレを開放した経緯もあり、企業としてトイレを使ってもらってOKというスタンスを明確にしています。とはいえ、利用する際は、店員に一言断る、一品購入するなど、良識ある行動を心がけて」
市役所や図書館などの公共施設も、不特定多数の人が出入りしているので、トイレだけの利用でも悪目立ちせず利用しやすいという。
では、初めて行く場所の場合、どうしたらいいか?
「グーグルマップで“トイレ”と検索すると、いま自分がいる場所の周辺のトイレが表示されます。ただし、清潔さや機能など、トイレに求める条件が高い人は、トイレ情報を予め調べておいた方が安心。トイレの場所を基点に旅行計画を立てるとよいでしょう」(山戸さん)
バス旅行ならトイレ付きバスを選ぶだけで、精神的な負担も幾分か軽減できる。
「どうしても不安な場合は、尿漏れパッドや大人用紙おむつを着用するのも手。最近は薄くて違和感なく使えるものが増えています」(白倉さん)
トイレ対策も備えあれば憂いなしだ。
◆教えてくれたのは:トイレ研究家・白倉正子さん
トイレ専門の企画会社「アントイレプランナー」代表。2023年5月より日本人初の世界トイレ協会理事となる。著書に『私の人生は「トイレ」から始まった!』(ポプラ社)。https://entoiletplanner.com/
◆教えてくれたのは:トイレ診断士・山戸伸孝さん
トイレの総合メンテナンス会社「アメニティ」の代表取締役。トイレ診断士1級、臭気判定士。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2024年11月7日号