健康寿命を延ばすうえで重要なカギとなる「目の老化」 最初に来るのが「老眼」、つづいて「白内障」「緑内障」 予防のためには“40才を過ぎたら1、2年に1回の眼科検査”
「アイフレイル」とは?
「アイフレイル」という言葉をご存じだろうか。
日本眼科学会や日本眼科医会などでつくる「日本眼科啓発会議」が提唱している概念で、「加齢に伴って目が衰えてきたうえに、様々な外的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態」と定義されている(日本眼科啓発会議「アイフレイル啓発公式サイト」より)。フレイルとは「虚弱」の状態を指し、この状態を放置すると日常生活に支障が出たり、重篤な病のリスクが高まるため、いま「目の老化」の早期発見は健康寿命を延ばすうえで、重要なカギといわれている。
なぜなら年をとれば、誰もが目の衰えを感じるようになるからだ。同会議が2021年6月に40~89才の男女を対象に行ったインターネット調査(有効回答数1万3157人)によると、「健康面で不自由を感じていることは何か」という問いに対して、半数近く(47.7%)が「目(視覚)に関すること」を挙げた。これは「聴覚」「歩行や動作」「物忘れ」など全7項目の中で、最も高い割合だった。
さらに「目について気になっていること」をたずねたところ、「小さな文字が読みにくい」が最も高く、51.3%。以下「目が疲れやすい」(42.8%)、「視力が低下している」(40.7%)、「目がかすむ」(32.8%)、「目の疲れからくると思われる肩こり・頭痛」(22.4%)の順に多かった。
これらの回答を見て、「自分も心当たりがある」という人も多いだろう。
基本は視力検査、眼圧検査、眼底検査
必ずしも順番通りというわけではないが、目の衰えを真っ先に感じるのが、近くや小さな文字が見えづらくなる「老眼」だ。
人間の目にはレンズの役割をする「水晶体」がある。水晶体は近くを見るときには厚くなり、遠くを見るときには薄くなる。ところが、年齢とともに弾力性が失われ、その厚さを変える「毛様体筋(もうようたいきん)」の動きも悪くなり、近くにピントが合わなくなるのだ。吉野眼科クリニック院長の吉野健一医師は、程度の差はあれど、これは誰しもが抗えない老化現象だと話す。
「40才を超える頃には、誰もが平等に老眼になります。近視だとなりにくいと思っている人がいるのですが、気づきにくいだけ。老眼は予防も難しい」
次に訪れるのが、目のレンズの役割をする「水晶体」が白く濁って視力が低下し、ものがぼやけたり、かすんだりする「白内障」だ。こちらも早い人では40代から始まり、50代で40~50%、60代で70~80%、70代で80~90%、80代でほぼ100%が白内障になっているといわれている(眼科医監修サイト「白内障LAB」より)。
さらに年をとると、眼圧のために視神経が障害されて視野が狭くなり、視力が低下してしまう「緑内障」も増える。この病気も意外に患者が多く、有病率は40才以上で5%、60才以上では1割以上と推計され、日本人の失明原因の1位となっている(日本眼科医会サイト「緑内障といわれた方へ—日常生活と心構え—」)。
言うまでもなく「不自由なく見える目」を維持することは、健やかな老後を迎えるためにも大切だ。それを実現するにはどうすればいいだろう。大学病院レベルの専門治療を行う、札幌かとう眼科院長の加藤祐司医師はこう話す。
「40才を過ぎたら人間ドックを受けるのと同じ感覚で、1、2年に1回くらい、眼科で異常がないかをチェックしておくことをおすすめします。視力検査、眼圧検査、眼底検査が基本で、まずはこの3つを受けるといいでしょう。
老眼かと思ったら白内障や緑内障だったということもあります。特に急に視力が低下した、見え方がおかしい、片目で見て異常に気づいたという人は、早めに受診してください」
そして、もし病気になったときには、どんな眼科医にかかればいいのか。実績豊富な眼科医にそのヒントをたずねるとともに、お互いが信頼する全国の眼科医を紹介してもらい、リスト化した。ぜひ参考にしてほしい。
(第2回につづく)
レポート/鳥集徹(ジャーナリスト)と本誌取材班
※女性セブン2024年11月7日号