
コンタクトレンズは目に直接つけるもので、生活の質にも影響するにもかかわらず、こだわりをもって選んでいる人は多くないかもしれない。そこで、『いつも使っているコンタクトレンズのことを、あなたはほとんど知らないかもしれない』(アスコム)の著者で、コンタクトレンズ会社社長の吉田忠史さんに、コンタクトレンズの選び方や安全に使うための心得について教えてもらった。
進化を続けているコンタクトレンズ
コンタクトレンズ業界13年の吉田さんはユーザーの声を聞いた体感として、度数を都度変えながら、最初にすすめられたものを使い続けている人が多いと話す。
「iPhoneの新機種が出るたびに最新のものに取り換えている人やファッションの流行を追って、毎シーズン新しい服を購入している人が一定数いるにもかかわらず、『最新のコンタクトが出たから試してみた!』という人は、まず見かけたことがありません」(吉田さん・以下同)
中には10年以上同じ商品を使い続けている人もいるというが、技術開発が進み、コンタクトレンズの品質はかなり高くなっているという。
「車に例えるなら、エアコンもなく、ハンドルを回して窓を開けていたのが、エアコンからパワーウィンドーが標準装備で、iPadなどを車載モニターにできちゃう、というくらいの進歩です」

機能性のアップデートはもちろん、性能が同じでも、企業努力で価格を抑えたものが販売されている可能性もあるため、一度最新のコンタクトレンズについて調べてみることを吉田さんはすすめている。
初めてのコンタクトレンズ選びのポイント3つ
コンタクトデビューを迷っている人はもちろん、以前挑戦してみてイマイチだったという人こそ、最新のコンタクトレンズを試してみてはどうだろうか。
コンタクトレンズは、「同じ価格帯のものであれば、クオリティーの差がだんだんとなくなってきているのも事実」と吉田さん。とはいえ、合う合わないは個人差があるため、使う人が実際に使用してみないことにはベストなものを見つけるのは難しいようだ。
そこで、初めてのコンタクトレンズ選びについて吉田さんに聞くと、3つのポイントがあると教えてくれた。
安くなるからといって最初から大量購入しない
何度も買いに行くのが面倒だったり、まとめて購入すると安くなるといった誘い文句を聞いたりして、最初から大量に買ってしまいたくなる人もいるだろう。眼科ですすめられたものなら安心と思いがちだが、吉田さんは、そのコンタクトレンズが自分に合っているかどうかは、「最低でも朝晩通して1週間は装着してみて判断するのがおすすめです」と話す。
そのコンタクトレンズを装着して生活してみることで、「夕方になると目が疲れる」など試着の際には気にならなかったことが出てくる可能性があるからだ。そのため、初めて買う場合も買い替えをする場合も、まずは1か月分で始めてみよう。

特に下記のような症状が続く場合は、別の商品を試した方がいいという。
・生活をしていて見えづらくて困るときがある
・目がゴロゴロする
・よくはずれる
・よく目が充血している
また、高価なもの=自分に合うものとは限らないため、性能だけに注目するのではなく使用感を重視することが大切だ。
見え方の違和感をそのままにしない
また、眼科や店舗で試着した際に見え方に違和感を覚えても、「あとでなじむだろう」などと言われるがままに購入してしまうのもNG。「視覚というとても重要な感覚に関わることですので、じっくりと選んだほうがいいですし、どう見えているのかを一番よく理解しているのはあなたです」と吉田さん。
例えば、「遠くまではっきり見えなくてもいい」など「見え方の好み」も人それぞれ。さらに、「遠くまでよく見えても手元が見えにくい」「見えすぎて目が疲れ、頭痛がする」といった不調の原因にもなりかねないという。店が混んでいるなどプレッシャーを感じるような状況でも、目の健康や生活のことを考えていったん立ち止まってみよう。
「コンタクトを試着する時は、手元と遠くをしっかり見ながら、自分の見え方の好みを担当の方にしっかりと伝えましょう」

使用頻度を考えずにタイプを選ぶ
コンタクトレンズは2weekタイプよりも1dayタイプの方が、一般的にはコストは高い。しかし、週末に運動するときだけなど使用する場面が限られており、毎日使うわけでなければ使用ペースに合ったものを購入した方がいい場合がある。
毎日使うのか、週何回使うのか、など、自身のライフスタイルを踏まえて、タイプを選ぶことが無駄な出費を防ぐことにつながる。
目の健康のために状態に合わせて使用を
コンタクトレンズに慣れていても、目の状態によっては使用を避けた方がいい場合があることにも注意が必要だ。
「目の状態が悪いときにつけることは、大切な目を傷める危険性を高めてしまいます」

目の不調を知るための「装着前の目の20秒チェック」
「一生見える人生」を守るために、下記の「装着前の目の20秒チェック」をして、気になるところがある日は、できるだけコンタクトレンズの使用を控えるのがよい。
・乾燥していないか(10秒間、まばたきをせずに目が開けられるか)
・目ヤニが出すぎていないか
・かゆみはないか
・充血していないか
・コンタクトをつけたときにゴロゴロしていないか
病気にもつながる目の危険信号
チェックをつけた項目ごとに、目がどんな状態で、どういう危険性があるのか、簡単に解説してもらった。

・乾燥していないか(10秒間、まばたきをせずに目が開けられるか)
「この状態でコンタクトを使うとドライアイが進行しかねません。角膜が乾燥することによって、表面に傷がつき、『角膜上皮障害』という状態になり、視力低下などを引き起こすことがあるので要注意です」
・目ヤニが出すぎていないか
・かゆみはないか
「普段より目ヤニが多かったり、かゆみが多かったり目がかすんだりすると危険信号。『巨大乳頭結膜炎』という、レンズの汚れが原因で上まぶたの内側にブツブツができるアレルギー性の眼障害に発展することがあります」
・充血していないか
「充血は、目の疲労の蓄積や炎症を起こしているなど、目の状態が悪いサイン」
・コンタクトをつけたときにゴロゴロしていないか
「角膜に傷がついていたり、『アレルギー性結膜炎』になっていたりする可能性があります。これは、花粉やほこり、ダニなどが原因でまぶたの裏側や白目の部分がアレルギーにより炎症を起こした状態です。コンタクトのケア用品でなる場合もあります」
その日のコンディションで化粧品を使い分けたり、メイクを休んだりするように、コンタクトレンズの使用も目のコンディションを考慮することが、健康的なコンタクトライフを送るために必要だといえそうだ。
◆教えてくれたのは:株式会社パレンテ代表取締役・吉田忠史

よしだ・ただし。2011年に株式会社パレンテ代表取締役就任。コンタクトレンズECサイト「レンズアップル」を運営するほか、 自社ブランド「WAVE」では「“見える”をもっと楽しく。 “見える” をもっと手軽に。」 をコンセプトに、コンタクトの枠を越えた商品・サービスを展開し、 視覚を通じて人生を豊かにすることに貢献。 日本一コンタクトを愛し日本一コンタクトを売りたい男として、YouTube「コンタクト社長よしだちゃんねる」 を配信している。https://www.youtube.com/channel/UC42lUmww3cdxr0nUKiS647g
◆監修:眼科医・河内敏
かわち・さとし。コンタクトレンズの正しく安全な使用法を啓もうすべく、 株式会社パレンテと組んでさまざまなプロジェクトを企画したり、ラジオパーソナリティやイベントでの講演も行なったりしている。