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実はもらい損ねているケースも!「申請すればもらえる年金」を社労士が解説

年金手帳
申請するだけでもらえる年金とは?お金のプロが解説(写真/photo AC)
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年金にはさまざまな仕組みがあり、意外ともらい損ねていることがあると話すのは、『年金最大化生活』(アスコム)の著者・社労士みなみさん。そこで、申請すればもらえる年金と、年金額を増やすための方法について教えてもらった。

申請しなければもらえない年金がある

年金だけで暮らしていくためには受給額が重要だが、実は申請さえすれば、受給額を増やすことができるという。その1つが「加給年金」だ。年金版の家族手当のようなもので、要件を満たし、申請をすれば誰でももらうことができる。

年金手帳とスマホ
「加給年金」は、要件を満たして申請すればだれでももらうことができる(写真/photo AC)
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加給年金で受給者本人に求められる要件は、65歳以上で厚生年金または共済年金(2015年に厚生年金に統合)の加入期間が20年以上あり、要件を満たす、生計を維持している配偶者や子どもがいること。家族に求められる要件は、配偶者は年収850万円以下であること、子どもの場合は高校3年生まで、または1級か2級の障害の状態にある20歳未満であることだ。

もらえる金額は、配偶者がいれば23万4800円、子どもがいれば2人目まではそれぞれ23万4800円、3人目以降は7万8300円だ。

「配偶者がいる場合は、受給者の生年月日に応じて3万4700~17万3300円の特別加算ももらえます。これから年金をもらい始めることになる人は1943年4月2日以後の生まれですから、特別加算は17万3300円です。つまり、加給年金の合計額は年間40万8100円になります」(社労士みなみさん・以下同)

65歳以降でも上乗せされる「振替加算」

加給年金を申請すれば年間約40万円の年金がプラスされるが、配偶者の年齢が65歳になると終了する。しかし、条件によっては65歳以降も配偶者の年金に「振替加算」が上乗せされることがある。対象は1966年4月1日以前(4月1日含む)に生まれた人。加給年金の受給者本人が亡くなっても、配偶者は一生もらうことができる。

ただし、これから65歳を迎える人が加算される額は年間で約1万5000円~約3万円と、大きな額ではない。そのため、将来の年金額が増えることを優先して、振替加算をもらわずに繰下げ受給を選ぶ人もいる。

「それでも、繰り下げた年金をもらい始めると加算されるので安心してください。大きな金額でないとはいえ、請求しなければもらえません。振替加算の対象の人は、きっちりもらっておきましょう。年金最大化とは、そうした積み重ねでもあるのです」

振替加算を請求し忘れる2つのパターン

請求しないともらえない振替加算には、請求をし忘れやすい2つのパターンがある。1つは、配偶者が年上のパターンだ。加給年金は配偶者が年上だともらえないが、振替加算は配偶者が年上でも、受給者本人が65歳になったときに配偶者が要件を満たしていればもらうことができる。

もう1つのよくある請求し忘れパターンは、後から受給要件を満たすパターンだ。

「受給者が65歳時点で要件を満たしていなくても、その後、要件を満たして加給年金をもらえるようになることがあります。そうすると、配偶者にも振替加算の権利が生まれます」

特定の時期に生まれた人だけがもらえる年金もある

さらに、年金には60~64歳まで受給できる、「特別支給の老齢厚生年金」というものもある。要件の1つは生年月日で、男性は1961年4月1日以前の生まれ、女性は1966年4月1日以前の生まれであること。もう1つは、国民年金の受給資格期間が10年あり、厚生年金に1年以上加入していることだ。

「もらえる金額は、現役時代にもらっていた給与や賞与で変わってきます。これを、報酬比例といいます。当然ながら、現役時代の給与が高く、厚生年金への加入期間が長いほど多くなります。また、条件によっては加給年金がもらえなくなるケースもあります」

複雑な仕組みのため、正確な金額を知りたい場合は日本年金機構のねんきんネットで確認してみるのがおすすめだ。

iDeCoなど私的年金も年金額を増やすのに適した制度

個人で自主的に加入する「私的年金」も年金額を増やすのに適している。私的年金のなかでもまず検討したいのが「iDeCo」だ。

毎月定額の掛金を支払い、自分で商品を選んで運用する必要があるが、月額5000円という少額から投資できるうえ、税金面で優遇されているというメリットもある。積み立てるときの掛金は全額所得控除の対象であり、運用することで得た利益も非課税だ。

iDeCo
iDeCoは年金額を増やすのにおすすめな制度(写真/photo AC)
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「金融機関が取り扱っているiDeCoの運用商品は複数ありますが、大きく分けると定期預金、保険、投資信託です。元本割れしたくない人は、定期預金や保険。元本割れリスクはあるが、リターンを狙いたい方は、投資信託の中から商品を選ぶとよいでしょう。増えたお金は、60歳以降に受け取ることができます」

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