長すぎて暑すぎる残暑が嘘のように、肌寒い季節がやってきた。季節の移り変わりを感じる間もなく訪れた秋、体調を崩す人は多い。医師と食のプロ10名が、不調も病気も寄せつけない「体温を上げる」食品と習慣を全力で提案する。
以下の10人の「医師」と「食のプロ」におすすめの食品と習慣を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。
・石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)・磯村優貴恵さん(管理栄養士)・金丸絵里加さん(管理栄養士)・川崎真澄さん(グラン治療院東京院長)・佐々木欧さん(秋葉原駅クリニック医師)・佐野こころさん(医学博士)・清水加奈子さん(管理栄養士)・谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)・中沢るみさん(管理栄養士)・望月理恵子さん(管理栄養士)
「冷え」は健康にとっても美容にとっても大敵
男性に比べ、冷え症になる割合が高い女性にとって、「冷え」は健康にとっても美容にとっても大敵だ。平熱が低い状態が続けば、単に冷え症というだけでなく、重篤な病気を呼びこむ可能性もある。温活に関する知識を伝える「日本温活協会」で温活指導士を務める、グラン治療院東京院長の川崎真澄さんが話す。
「体温が低いと体の機能がうまく働かず、血流や免疫機能、代謝の低下などが現れます。『冷えは万病のもと』といわれるように、むくみや肩こり、腰痛、不眠、自律神経の乱れなどにつながります」
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんも続ける。
「血液には酸素や栄養素を体中に運び、不要になった代謝物や老廃物を回収し排出する役割があります。体が冷えることで血流が悪くなると、それらの働きが弱くなり、内臓や脳、皮膚など至る場所に不調が起こる。特に女性の場合、お腹が冷えると子宮筋腫やホルモンバランスの乱れ、便秘、むくみなどが生じます。
免疫力も低下し、がんや心疾患などのリスクも高まることに。肌にも水分や栄養が行き届かなくなるので、ターンオーバーが遅くなりしわやシミ、くすみの原因になるのです」
だからこそ普段の体温を少し上げるだけで、体は驚くほど激変するという。
「体温が1℃違うと、代謝が約13%変わってきます。同じ物を同じ量食べても、低体温の人の方が太りやすくやせにくい。免疫力は1℃で約30%変わるので、体温を上げれば風邪や感染症にかかりにくくなり、かかったとしても治りが早くなります。
また、体内で食べ物を消化したりエネルギーに変える役割を果たす酵素は37℃前後でもっとも活動的になるとされていて、体温が下がれば活性が低くなる。体温を上げることは不調改善、病気予防につながります」(石原さん)
スパイスが血行を促進
体温を上げ、病気知らずの体になるために、これからの季節にマストで取り入れるべき食品は、1位の「しょうが」。専門医と食のプロからも圧倒的な支持を得た。管理栄養士の磯村優貴恵さんも自身の1位にしょうがを挙げた。
「生のしょうがに含まれるジンゲロールという成分は発汗を促し、末梢部位の血流アップに役立ちます。しょうがを乾燥、加熱するとショウガオールという成分に変わり、これには体の深部で熱を産生する働きがある。料理や飲み物など幅広く手軽に取り入れられるので、積極的に摂るといいでしょう」(磯村さん)
しょうがに続いて、2位には「スパイス」、3位には「にんにく」と香りの強い香辛料や香味野菜がランクイン。いずれも血行や血流をよくすることで体内に酸素や栄養を行き渡らせ、代謝を高めて体温を上げる。秋葉原駅クリニック医師の佐々木欧さんはスパイスの効能をこう話す。
「シナモンやカルダモン、クローブなどといったスパイスは、古来から体を温める成分として漢方や薬膳に取り入れられてきました。紅茶とスパイスを煮詰めるチャイはいちおしです」
川崎さんも重ねる。
「シナモンには、毛細血管を丈夫にする働きのあるTie2という物質を活性化する成分が含まれています。血液の流れがなくなって消えていく毛細血管は『ゴースト血管』と呼ばれますが、ゴースト化を予防するのにTie2の活性化と血流アップは重要だと考えられています」
スパイス料理の定番と言えばカレー。管理栄養士で国際中医薬膳師の清水加奈子さんは、「カレー粉に含まれる辛み成分が代謝と血流をよくし、末梢の冷えも改善する」と太鼓判を押す。
たんぱく質が熱を生み出す
体温上昇には、熱を生み出すたんぱく質も欠かせない。あらゆる肉や魚の中で、プロたちが票を投じたのは5位の「ラム肉」だ。管理栄養士の中沢るみさんは、「食品の中でもっとも熱を生み出す」と、その効果について解説する。
「食べ物を食べることによって体温を上げる働きは『誘発性産熱』と呼ばれ、脂肪や炭水化物に比べたんぱく質が圧倒的に高い。なかでもラム肉は北欧やモンゴルなど寒い地域で好んで食べられるほど体を芯から温める効果が期待されます」
たんぱく質ではほかにも、11位の「さば」や、12位の「納豆」、13位の「牛肉」が挙がった。ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さんは、「ボーンブロス」を推奨する。
「ボーンブロスとは“骨からだしをとったスープ”のことで、鶏肉や牛肉、鯛や煮干し、えびの殻などを使います。アミノ酸が豊富に含まれ、代謝をサポートし体を内側から温める効果がある。肉や魚を食べる場合には、骨も有効活用しましょう」
健康効果の高い腸活も、体温を上げるのに一役買う。そのためにぜひ習慣に取り入れたいのが発酵食品だ。4位に「みそ」、8位に「キムチ」、12位に「納豆」が入った。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが解説する。
「発酵食品自体に体を温める効果があり、整腸作用で腸が活発に動くとエネルギー代謝が高まります。みそやキムチと、食物繊維が豊富な根菜類などのみそ汁や鍋料理がおすすめです」