Q.一度やめても再開できる?
A.中止も再開も自由だが、必ず医師に相談を
更年期の諸症状が続く期間は、人によってさまざま。短期間で終わる人がいる一方で、長い人では10年以上続く場合もある。
「HRTはいつやめても問題ないので、一度やめたいと思ったら医師に相談してみることです。やめたものの、やはりHRTをしていた方が調子がよいと実感し、再開を希望する場合も医師に相談して問題がなければ再開できます。HRT使用期間の制限はありません」(三羽さん)
Q.薬をのみ忘れたり、貼り忘れたりしたら?
A.1日くらいなら忘れても大丈夫
家事や仕事、介護に忙しい更年期世代。うっかり服薬を忘れることもあるだろう。
「1日なら忘れても問題ありません。気がついた時点で摂取を。数日間だと出血することがあるので、医師に相談して」(三羽さん)。
Q.HRTが受けられないのはどんな人?
A.乳がん、心筋梗塞、脳卒中などの経験者
HRTで乳がんのリスクは上がらないが、乳がんの治療中の人や経過観察中の人、過去にかかった人は受けられないという。狭心症や心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症などを過去に患ったことのある人も不可となる。
「経口エストロゲン製剤が、このような病気の再発リスクを高めるとされているからです。経皮エストロゲン製剤にはそのような報告はないのですが、積極的におすすめはしていません」(八田さん)
Q.治療中、出血すると聞いたけど……
A.不安な場合は医師に相談を
HRTには「周期的併用療法」と「持続的併用療法」がある。どちらも子宮のある女性に向けた治療法で、「周期的併用療法」は、エストロゲン製剤を毎日、黄体ホルモン製剤を10~14日間併用する。
「持続的併用療法」は、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を毎日使用する。前者が出血を伴うのに対し、後者は出血が起きないとされるが、最初の数か月間は出血する可能性もある。不安な場合は療法や薬量を変えれば調整できるので医師に相談して。
Q.併用してはいけない薬は?
A.エストロゲンに影響を与える薬は不可
エストロゲンは体内に吸収されると肝臓内で「チトクロームP-450 3A4」という酵素によって分解されるため、酵素の働きに影響を与える薬は、血液中のエストロゲンの濃度に影響を及ぼす。その結果、HRTの効果を弱めたり、強めたりするので、併用して薬をのむ場合は医師や薬剤師に相談しよう。
エストロゲンの効果を亢進する可能性のある薬
HIVプロテアーゼ(抗HIV薬)
マクロライド系抗生物質
イミダゾール系抗真菌剤
トリアゾール系真菌剤 など
エストロゲンの効果を弱める可能性のある薬
リファンピシン(抗結核剤)
バルビツール酸系製剤(睡眠薬、鎮静薬)
カルマバゼピン(てんかん、三叉神経痛治療薬)
セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート/サプリメント)含有食品 など
保険適用外の最新治療 アンチエイジングにも効果的な「ナチュラルホルモン補充療法」
更年期の諸症状を改善するための一般的なHRTとは別に、自然由来の成分が原料のホルモン製剤を使用した最新の治療法がある。それが、「ナチュラルホルモン補充療法」だ。
「一般的なHRTに用いられているのは合成ホルモンで、これは化学構造が人体のそれとは異なります。ナチュラルホルモン補充療法は、いもやオリーブオイルなどの植物を原料に、人体に存在するホルモンとまったく同じ化学式の“ナチュラルホルモン”を取り入れます」(渋谷セントラルクリニック院長・河村優子さん)
更年期に減るのは、エストロゲンや黄体ホルモンといった女性ホルモンだけではない。グラフにあるように、テストステロン、成長ホルモン、DHEA、メラトニンといったさまざまなホルモンが減少する。ナチュラルホルモン補充療法では、こういった女性ホルモン以外のホルモンもバランスよく補充するという。
「体全体のホルモン量を整える治療法と考えてください」(河村さん)
これにより、更年期症状の改善だけでなく、生活習慣病の予防やアンチエイジングも期待できるという。診療には食事指導なども含まれ、費用は1か月に3万~5万円ほど(保険適用外)。50代からの不調を改善・予防する方法のひとつとして知っておきたい。
◆教えてくれたのは:公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会理事長・三羽良枝さん
1996年、現協会の前身となるボランティア団体「メノポーズを考える会」を設立。以後、国内外で健康調査などの活動を展開し、女性の生涯を通した健康作りとよりよい働き方の啓発とサポート活動を実施。女性の健康とメノポーズ協会https://www.meno-sg.net
◆教えてくれたのは:聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長・八田真理子さん
順天堂大学、千葉大学医学部附属病院、松戸市立総合医療センターなどを経て1998年、現クリニックを開業。著書に『自分でできる! 女性ホルモン高めかた講座』(PHP研究所)、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)など多数。聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 http://juno-vesta-clinic-hatta.net/
◆教えてくれたのは:渋谷セントラルクリニック院長・河村優子さん
2009年、医師の大友博之さんと共同で新しいエイジング治療を目指す渋谷セントラルクリニックを設立。日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本女性医学会会員。渋谷セントラルクリニックhttps://doctors-gym.com
参考資料/最新版『ホルモン補充療法(HRT)ガイドライン2017年度版』
取材・文/上村久留美
※女性セブン2024年11月21日号