健康・医療

《肥満の目安「BMI」の問題点》体脂肪と筋肉の比率が考慮されず、健康状態をはかる完全な指標ではない 身長と体重が同じなら誰でも同じ結果に

BMIは健康状態をはかる完全な指標ではない(写真/イメージマート)
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正常か、異常か──境界線となるのが「健康基準値」だ。健康診断の結果が、基準値を超えれば要治療となる。しかしその数値は、医療の進歩や医薬品メーカーの都合などで「コロコロと変わる」ものであり、時には気にしないことも重要だというのだ。

BMIの目標値が従来より高めに

たとえば、肥満の目安とされるBMIの値を気にする人も多いだろう。

変更されたBMIの基準値
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BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割って計算される。その数値が高ければ肥満とされる。「肥満症診療ガイドライン」(2022年)によればBMIの目標値は、65才以上の場合、「21.5〜24.9」から「22〜25」と、従来よりも若干高めに変更された。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。

「これまでは、やせていた方が健康にいいという認識がありました。しかし2000年以降、世界的に大規模な追跡調査が行われ、次第にやせている人よりも小太りの人の方が健康だということがわかってきました。そのため、目標値が変更されたのでしょう」

高齢になって心身の活力が低下する「フレイル」になると、BMIが低い人ほど死亡リスクが高くなるという指摘もある。

世界と比べると日本はまだ“厳しい”

そうした流れのなかで目標値は少し変わったものの、世界と比べると日本はまだ“厳しい”ともいえる。まず「肥満」の基準が日本と海外で大きく異なる点に着目したい。

日本では肥満学会がBMI25以上を「肥満」とするのに対して、WHOなど海外の基準では25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と分類している。

小太りくらいがちょうどいい(写真/PIXTA)
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日本独自の肥満基準について、東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは「学会の会員とスポンサー集めの基準」と断じる。

「世界基準に合わせてBMI30以上を肥満とすれば、日本人の肥満は成人の約2.3%しかいません。そうなると、減量に関係する商品や薬が売れないし、学会の活動もできないので、25以上を肥満としているという指摘があります。

世界の調査を見る限り、男女ともにBMIが25〜27の“小太り”が、もっとも死亡率が低い。多少の脂肪がある方が、いざ病気になったときに乗り越える体力がある。日米ともに死亡率がもっとも高いのは、18.5未満のやせている人です」

米ボストン在住の内科医・大西睦子さんは、BMIを過信しすぎてはいけないと注意を促す。

「簡単に計算できるので便利な数値ですが、健康状態を測る完全な指標ではありません。  いちばんの問題は身長と体重だけで判断するので、体脂肪と筋肉の比率が考慮されないことです。当然、血管や臓器の状態なども加味されません。身長と体重が同じなら、誰でも同じ結果になります」  

※女性セブン2024年11月28日号

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