
度重なる物価高に苦しめられた2024年も、残すところあと1か月と少しとなった。新しい一年を迎える前の大掃除では、ぜひ「お宝」を見逃さないようにしてほしい。インフレが止まらないいま、価値が上がり続けている「不用品」がしまい込まれているかもしれない。
いま、意外なものの「買取価格」が高騰
希少価値が高いことから価値が下がりにくいとされる「有事の金」。その値段がいま、爆発的に上がっている。この10月末、地金小売価格はついに1g1万5000円を超え、前年同月の平均価格9246円から約1.5倍、10年前からは約3.5倍もの高騰となった。
それに引っ張られるようにして意外なものの「買取価格」が高騰していると話すのは、リユース経済新聞編集長の瀬川淳司さんだ。
「代表的なものは、昭和天皇即位60年記念金貨。額面は10万円ですが、現在の価値は30万円前後にまで上がっています。発行枚数が多いので、お宝とは知らずに家庭に眠らせたまま忘れている人も多いかもしれません」
金の価格高騰だけでなく、インフレや円安の影響で、いま、あらゆるものが値上がりしている。新品の値段が上がれば、中古品の買取価格、すなわち二次流通価格も高くなるからだ。

「例えばシャネルの代表的なハンドバッグ『マトラッセ』(25cm)は定価の改定が頻繁に行われており、2020年4月時点で66万円だったものが2024年11月時点では175万円となりました。
シャネルやヴィトン、エルメスなどの高級ブランドバッグは、新品・中古に限らず、今後も中長期的には価格が上がりやすい。欲しいものがあるなら、いま買っておくのがいいかもしれません」(瀬川さん)
これほど新品の値段が高くなれば、比較的安い中古品の需要が高くなるのは必然だろう。ウリドキ代表の木暮康雄さんは「いま、中古品販売市場は大幅に拡大している」と解説する。

「中古品販売市場は2030年には4兆円規模まで成長するとみられています。以前は限られた古物商のみが出入りしていたオークション会場がコロナ禍でオンライン化して新規参入が増えたことも要因の1つ。競争が激化した結果、落札価格はさらに上がっています。
また、日本の二次流通品は海外と比べて状態がいいものが多いうえ、いまは円安。国内よりも海外に売られるケースが多いため、日本人の売り手にとってはより高く売ることができる絶好のチャンスなのです」
「レトロ需要」でビデオテープがお宝に
もちろん、値上がりしているのは高級ブランド品だけではない。いま狙い目のキーワードは「レトロ」だ。

ファッションアイテムや食器などが国内の若い世代や海外インフルエンサーなどを中心に人気を集めているほか、レコードも人気。特に山下達郎や大滝詠一、竹内まりやなど、1970年代シティポップのアナログレコードは数千円から、状態によっては6万円ほどで取引されることも。
世界3位の規模を誇るアメリカの「ヘリテージ・オークションズ」では、なつかしの名作映画のビデオテープ(未開封)が高額落札された。
「『ロッキー』の1~3作がセットで約800万円、『グーニーズ』が約750万円、『スーパーマン』が約600万円、『スター・ウォーズ』『ジョーズ』はそれぞれ約480万円で落札されました」(木暮さん・以下同)
さらに「平成レトロ」を感じさせるアイテムも人気。2000年代前半に流行したコンパクトデジカメが「ノスタルジックな写真が撮れる」と注目を浴びているのだ。


2000年代の「CCDセンサー」のカメラは“旧式”として買取価格は100円前後だったが、近年のレトロブームで人気に火がつき、いまでは1万~2万円で取引されているケースも。
また中古のガラケーも同様に、一部の“アナログ”商品は希少性が高まっている。スマホでは、AndroidよりもiPhoneの方が人気の傾向にあるという。
「中古スマホはいま、世界的に需要が高まっています。それも国内の個人のユーザーではなく、新興国の都市開発によって消費者のニーズが加速度的に増えているのです。このため需要は中長期的に見ても高まっていくと考えられています」
古いスマホは下取りより専門店へ
不用品販売は、「いつ、どこに売るか」も重要だ。
「買取価格は市場の相場以外にも、買い取る企業の専門性や在庫状況によって常に変動します。また、日本のリユース品においては、海外バイヤーからの買い付けピークが6月と11月の“バカンス前”なので、その時期を狙って売るのもいいでしょう」
スマホの場合、メーカーやキャリアが下取りなどを行っていることもあるが、専門業者に出すのも検討すべき。専門業者は買い取りから販売までの中間コストが少ない分、買取価格が高くなりやすい。
事前に吟味せず、「近所にあるリサイクルショップ」や「以前、高く買い取ってくれた店」に行くのはNG。基本的に、スマホはスマホの、ブランド品はブランド品の専門業者に「直接」持ち込むのが定石だ。
「スマホやブランド品は一般的に専門店の方が高く売れる販路を持っていることが多いため、買取額も高くなりがちです。
一方、衣料品はフリマアプリがベスト。そもそも衣料品は季節やサイズ、デザインなど、購入者が求めるさまざまな条件が合致しなければ売れ残るリスクがあるため、業者が高値で買い取るのは難しい。その点、アプリなら使用者が直接購入するので、業者よりも高値で買われやすいのです。もちろん、確実に売れる保証はないので、その点は留意する必要があります」(瀬川さん・以下同)
最後に、いま注目すべき「意外なお宝」が「酒」。10月に香港で酒類の関税が緩和された影響で、中国のバイヤーを中心に買い付けが増えており、価格も高騰しているのだ。

「特にジャパンウイスキーは一貫して人気が高く、国内需要で不足気味なところに海外でもブームが来て値段が吊り上がっており、すでに買い付けは抽選になっているほど。
例えば、『山崎』の18年ものなら2024年4月時点で一般市場価格は12万円ほどですが、リユース市場ではそれ以上。販売当時は8万円だった25年ものに至っては、現在100万円以上で取引されています。
古くなるほど希少性が増すので、いま持っているならすぐに売るのもよし、さらに値段が上がるまで持ち続けてもいいでしょう」
あなたの家の押し入れにも、お宝が眠っているかもしれない。年末の大掃除ではぜひ「高値で売れるお宝」を探してみてほしい。
※女性セブン2024年12月5日号