更年期症状を感じている女性のうち約7割が「手指の不調」を自覚しながらも、「重症ではない」などの理由で医療機関を受診していないという(※)。放置したり、見当違いの診療科で診察を受けると、悪化して痛みや腫れが生じたり、再発したり、関節が曲がったまま戻らなくなったりすることも。そんな手指の不調は、東洋医学で未然に防げるという。そこで、東洋医学で手指の不調を改善してきた整体師の筒井浩一郎さんに、何才からでもできる、予防のための食事やエクササイズについて聞いた。
※大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部「女性の健康推進プロジェクト」が、50~64才の一般女性207名を対象にインターネットで「更年期の手指の不調に関する調査」を実施(2024年7月26日~8月7日)。
“腎”がホルモン バランスを整える
「東洋医学では、成長・発育・生殖にかかわる泌尿器、生殖器、腎臓などの機能を総じて“腎”と呼び、中でも腎臓には、血液中の老廃物をろ過し、余分な塩分を尿として排出する役割があります。そのため、腎臓が弱るとさまざまな病気を発症。手指の不調もそのひとつです」
と筒井さんは言う。“腎”には、腎臓の上部にある副腎も含まれており、ここから自律神経に関係するホルモンのほか、女性ホルモンの前駆体も分泌される。したがって、“腎”を健康にすれば、女性ホルモンのバランスも整い、手指の不調の予防に効果的なのだという。
甘味や加工食品を控え胸郭と太ももを柔軟に
それではどうしたら“腎”を健康にできるのか。
「“腎”の中で最も重要な腎臓に悪い食べ物は控えましょう。たとえば、コーヒーや緑茶といったカフェインを含んだ飲み物、酒、菓子や果物などの甘いもの、小麦などのグルテンを含むもの、乳製品、ハムやベーコン、スナック菓子などの加工食品です」(筒井さん・以下同)
こうした食品を控え、水を多めに飲むことで、2~3週間で手指の不調が軽減されるという。さらにエクササイズもおすすめだ。
「胸椎・肋骨・胸骨からなる胸郭が硬くなってゆがむと、その中にある腎臓も窮屈になって血行が悪くなり、疲れやすくなります。
また、手指に不調のある人は太ももも硬い傾向にあるので、この2か所を併せてほぐすといいでしょう」
やり方は簡単。以下の4つのレッスンを毎日1〜2分ずつ行うだけ。朝夕2回行うのが効果的。朝は体が硬くなっているのでまず行い、夕方疲れたときにもう1回。時間がないときは「手首回し体操」だけでも続けてみよう。
体のゆがみを解消して腎臓の疲れを取るエクササイズ
体のゆがみを解消して腎臓の疲れを取るエクササイズを紹介する。
【レッスン1】ヒールアップ
【1】机などに手を置き、足を肩幅に開いて立ったら、かかとを上げる。
【2】【1】の姿勢を保ちつつ、ひざが完全に曲がるまで下まで深くしゃがむ。お尻が出っぱらないように注意。次に【1】の状態に戻ってかかとを下ろす。ここまでを1セットとして5セット行う。最後に20秒ほど手をブラブラさせる。
腰が痛くてこのエクササイズができない場合は、片方のかかとで、もう片方の足の甲を1分踏む方法もおすすめ。
【レッスン2】にわとり歩き
足を肩幅に開いて立ち、体を倒して両手で両足首をそれぞれつかむ。ひざがつらくない程度に足を伸ばし、前に10歩、後ろに10歩、左右に3歩ずつゆっくり歩く。終えたら体を起こし、20秒ほど手をブラブラさせる。
【レッスン3】足上げ・腕上げ体操
【1】胸にクッションを当ててうつぶせになったら、左右の足を交互に曲げ伸ばしする。さらに、両ひざを軽く曲げたまま左右に倒す。これらを20回ずつ繰り返す。
【2】片方のひざを90度に曲げたまま少し内側に引き寄せて上に上げる。このとき、お尻を引き締めること。このまま10秒間キープ。逆の足も同様に行う。左右2回ずつ行う。
【3】片方の腕を水泳のクロールのような形にして10秒間キープして下ろす。手はできるだけ床から離し、高く上げること。左右2回ずつ行う。
【レッスン4】手首回し体操
【1】手を上げてひじを伸ばし、万歳の姿勢をとる。
【2】息を吐いて手の力を抜いてひじを曲げたら、1分間手首を回す。回す方向は自由。これを2回繰り返す。
◆三起均整院・院長・筒井浩一郎さん
鍼灸師、均整師、整体師。1991年、へバーデン結節を主とした慢性症状・難病専門の治療院「三起均整院」を開業し、延べ20万人以上の治療を行ってきた。主な著書に『へバーデン結節の8割は食事でよくなる』(青春出版社)など。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2024年12月5日号