健康・医療

《鼻血が1時間止まらない》女優・古村比呂(59)「餌を食べている感じ」「内側から心臓を殴られる苦しさ」つらすぎる副作用【壮絶がんサバイバーの告白2】

4度のがん宣告を受けた
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黒柳徹子の実母をモデルにした1987年の連続テレビ小説『チョッちゃん』でヒロインを演じ、一躍人気女優の仲間入りをした女優・古村比呂(59才)は、これまで4度にわたって「がん宣告」を受けた経験がある。子宮頸がんに始まった13年にわたるがんとの闘いや、激しい抗がん剤の副作用、絶望の淵でも救いになった3人の息子たちへの思いを語った。【全3回の第2回】

――再発~再々再発では、抗がん剤治療が中心になったようですね。

「薬の種類によって、効きやすいがんの部位が異なるのですが、私は子宮頸がんに使える抗がん剤はほとんど試しました。治療を受ける中で知ったんですが、子宮頸がんは他のがんと比べて薬が少ないんだそうです。乳がんの罹患率は9人に1人ですが、子宮頸がんは70人に1人くらい。臨床試験をするにも患者が集まりにくく、どうしても研究がスローペースになる場合もあるそうです」

――抗がん剤と副作用は、切っても切れない関係にあります。

「私も副作用には苦しめられました。手足のしびれ、味覚障害、吐き気、歯茎の腫れ、鼻血、目の乾燥や充血、発疹、むくみ、脱毛、高血圧……、挙げれば切りがないくらいです。

初めて抗がん剤治療をしたのは2017年3月の再発のときでした。放射線治療を週に5日連続で28回受けて、並行して抗がん剤治療を週に1度を5回です。治療は1か月とすこしかかりました。副作用の症状は、抗がん剤治療を始めてしばらくすると出始めるんです。手のしびれが出ると包丁は握れないし字も書きづらくなる。力の感覚がわからないんです。鼻血は一度出たら1時間は止まらなくて、出やすい状態が1、2か月続く。口の中には口内炎がたくさんできるし、他にも舌の痛みで食べられないということもありました」

4度のがん宣告を受けた古村
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「食事というより餌を食べている感じ」

――特に味覚障害はつらかったようですね。

「体力をつけるために食べなきゃいけないのに、吐き気で食べられないうえに、何を食べても金属の味がするんです。スプーンをなめている味というのかな。大好きなアイスも頭ではこういう味だとわかっているのに、口に入れると甘味はまったくなくて金属の味しかしない。ショックでしたよ。

唯一食べられたのは、ゆずの風味をたっぷり効かせたそうめん。それでも、おいしいとは感じられませんでしたけど、何か食べないことには体力が消耗する一方ですから。あの頃は食事というより餌を食べている感じでした。息子たちにもそう愚痴っていました。体重は48kgからどんどん減って、40kg台前半にまでなっていました。だから抗がん剤治療が終わって、サムゲタンを食べて“味がわかる!”って思ったときは、心の底から嬉しかったです。

いまも抗がん剤治療を続けています。『キイトルーダ』という薬です。薬も進化しているようで、味覚障害はありません。吐き気もほとんどありません」

――抗がん剤以外の薬の副作用にも苦しめられたそうですね。

「抗がん剤の影響で高血圧になるので、血圧を下げるために降圧剤を服用していました。あるとき歯がグラグラする感覚があって、慌ててかかりつけの歯医者に行くと歯茎に異常はないと。そこでお医者さんから“降圧剤飲んでませんか?”って。どうやら、のんでいた降圧剤にそういった副作用があったようでした。

それから、急にドンと体の内側から心臓を殴られるような苦しさ、呼吸ができなくなるような感覚があったことがありました。これも抗がん剤の副作用ではなく、抗がん剤で白血球が減少してしまって風邪などの他の病気に感染しやすくなるため、白血球を増やす薬の副作用だったみたいです」

――子宮を全摘出した影響もあったと聞きました。

「全摘出の後遺症として、排尿、排便障害や腸閉そく、リンパ浮腫があります。当時は正直がんのことで頭がいっぱいで後遺症はどこか他人事な感じもあったんですが、実際に子宮を全摘出したあとに私も左脚にリンパ浮腫が出ました。息子から“左脚どうしたの!?すごく腫れているよ”って言われて。いまでも、いつも弾性ストッキングを履いているんですけど、左脚がちょっと浮腫んでいるんです。

リンパ浮腫によって左脚が大きく浮腫んでいる(本人提供)  
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脚が浮腫むと仕事に影響があるので、脚を組んだり正座をしたりしない、長時間同じ姿勢でいない、マッサージでリンパの流れを良くして、寝るときは脚を高くするといったことをして、予防には取り組んでいたんですけど、結局リンパ浮腫は出ました。

浮腫みがあるため、左右異なるサイズの靴を履いていたという(本人提供)
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リンパ浮腫の治療もずっと続けています。弾性包帯を使った圧迫療法をしていたときには、浮腫んでいる脚に包帯を何本も巻くので靴が入らなくなるんです。右は自分の靴、左は4cmも大きい息子の靴を履いて生活していた時期もあります。リンパ浮腫は完治が難しくて、これ以上悪くならないようにケアをしながら付き合っていく病気です。がんよりつらいという人もいます。冬の寒さや気圧の変化でひどく浮腫むし、夏は弾性ストッキングが蒸れてその対策も必要。着る服も靴も選びますし、女性にとってはすごく厄介な病気です」

がん闘病は、肉体的にはもちろん、精神的な負担も大きい。それでも古村が闘い続けられるのは、3人の息子たちの存在があるからだ――。

【全3回の最終回】へ続く

 

取材・文/伏見 友里 撮影/横田 紋子

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