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《警察犬が多様化》トイプードルやビーグルも!「災害現場の狭い場所での捜索では大型犬よりも有利なケース」行方不明の高齢者や子供の捜索でも活躍

トイプードルの警察犬・アンズちゃん
トイプードルの警察犬・アンズちゃん(写真提供/鈴木博房さん)
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「警察犬」と聞くと、一般的にイメージするのは大きくて力強いシェパードだろう。しかし、警察犬も多様化が進み、小型犬が活躍できる時代になったという。小さいからこそできる仕事がある―第一線で活躍する“現役”に話を聞いた。

トイプードルの警察犬・アンズちゃん

つぶらな瞳に、もこもこの毛が愛らしいトイプードルのアンズちゃん(メス、12才)。しかし、彼女はかわいいだけではなく、勇敢な一面も持つ。

実はアンズちゃん、警察犬指導士の鈴木博房さんのもと、茨城県警で活躍する警察犬なのだ。警察犬には各都道府県警察が飼育・訓練する「直轄警察犬」と、一般人が飼育・訓練する「嘱託警察犬」の2種類があり、アンズちゃんは後者になる。

DNA鑑定など科学捜査の手法が進歩した現代でも、警察犬の出番はなくならない。日本警察犬協会の事務局長が言う。

「犬は人間の300~1億倍といわれるほど嗅覚力が優れているので、捜査現場になくてはならない存在。主な仕事は、犯人のにおいから逃走を追跡する『足跡追及』や、現場の遺留品と容疑者のにおいが一致するかどうかを識別する『臭気選別』、行方不明者の『捜索』などです」

2022年、安倍晋三元首相の銃撃事件で捜査にあたる警察犬
2022年、安倍晋三元首相の銃撃事件で捜査にあたる警察犬(写真/時事通信社)
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警察犬の犬種が増えている背景には時代の変化

日本では大正時代から警察活動に犬が活用されていたが、現在の嘱託警察犬制度がスタートしたのは1952年のこと。1956年には、直轄警察犬制度が発足した。

日本警察犬協会が警察犬と指定しているのはシェパード、ドーベルマン、コリー、エアデール・テリア、ボクサー、ラブラドール・リトリーバー、ゴールデン・リトリーバーの7犬種。どれも大型犬だが、近年は嘱託警察犬を7犬種以外に拡大する動きが各道府県の警察にある。主に小・中型犬が増えて多様化の時代になっており、朝日新聞の調査によると2015年には全国で18種だったが、2024年には31種になったという。犬種が増えている背景には時代の変化がある。

小型犬
小・中型犬が増えて多様化の時代に(写真/PIXTA)
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「大型犬は散歩するにも周囲への配慮が必要ですし、住環境の変化により、都市部で大型犬を飼育することが難しいことも影響していると考えられます。また、災害現場で狭い場所を捜索するなど、大型犬よりも小型犬が有利なケースもあり、犬種を問わない動きがあるのでしょう」(前出・日本警察犬協会事務局長)

アンズちゃんが茨城県警初の小型の嘱託警察犬となったのも、2016年度の採用から門戸が広がったからだ。

「優秀であれば、犬種を問わず採用する方針に転換しました。現在、トイプードル以外にもプードル、ブルテリアなどが活動していますし、過去に柴犬やミックス犬が在籍したこともあります」(茨城県警鑑識課)

神奈川県警も2021年に制限を撤廃し、今年からビーグルが活動を始めている。

ビーグル犬
ビーグル犬(写真/PIXTA)
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嘱託警察犬は年1回、各道府県警察の審査会によって選定され、合格すれば1年間警察犬として活動する。アンズちゃんは今年で10年目の大ベテランだ。採用の基準は各道府県警によるが、警察犬に必須となる「足跡追及」「臭気選別」の試験が行われることが多い。

鈴木さんは、認知症患者が増え自宅から出て徘徊してしまう高齢者など、早期の保護が必要な「特異行方不明者」が増加傾向にある現代で、小型犬の需要を実感する。

「犯罪性のない現場では大型の警察犬が行くと、近隣に注目され、家族に迷惑がかかってしまう。事件でもないのにSNSなどで個人情報が拡散されるリスクもあります。その点、アンズのような愛玩犬は、散歩を装って歩けば違和感がありません」