厚生労働省の調査によると、55才以上の2人に1人が歯周病を進行させているという(厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」より)。歯周病は歯茎の腫れや出血、口臭の原因になるだけではなく、深刻な全身疾患を誘発するため、お口のケアこそ、健康寿命を延ばすために重要なのだ。そこで、口の中を清潔に保つことに加えて、美しさを維持するためにすべきケア方法を紹介する。
若さと健康には口まわりの筋肉が影響
口腔内を清潔に保つことは重要だが、加えて口まわりの筋肉が正しく動くと、全身の健康維持により効果的だと、歯科医師の小島理恵さんは言う。
「口まわりの筋肉は、かむ、飲み込む、話すなどといった重要な働きを担っているため、ここが衰えると健康を害する恐れがあります。
見た目にも影響し、顔の左右でゆがみの差が大きくなったり、肌のたるみやしわ、ほうれい線などが目立つようになったりします。
口まわりの筋肉をこわばったままにしておくと、ブラキシズム(歯ぎしりや食いしばり)から、顎関節症、肩こり、頭痛を引き起こすことにもなりかねません」(小島さん・以下同)
ではどのように鍛えたらいいのか。
「口まわりの筋力が衰えると、舌の先が下がります。加齢も一因ですが、話さない・ものをよくかまないなどで、舌を動かさないでいると、舌の筋肉も舌を支える筋肉も衰えて、舌が上がらなくなってしまうのです。舌は本来、上あごについているもの。それが下がってしまって『低位舌』になると、口が無意識に開いて口呼吸になりやすくなり、それにより唾液の分泌量が減るので、虫歯や歯周病にかかりやすくなります」
それを防ぐため、舌、頰、唇などの口まわりの筋肉を効率よく動かすエクササイズを小島さんが考案。それが上記で紹介している「歯ヨガ」だ。
「口を閉じたとき、舌先の位置が上あごのスポットと呼ばれる部分(上の前歯の後ろ。やや膨らんでいる部分)についておらず、舌全体が上あごについていない人は、すぐに“歯ヨガ”に挑戦してみてください。舌が正しい位置にあれば、鼻呼吸ができている証拠です」
歯ヨガを続けると、たるみ改善や小顔効果なども期待できるとか。まずは自分の口まわりの筋肉の状態を知るため、「こわばり度チェック」を試してみよう。
まずは口まわりの筋肉のこわばり度をチェック
まずは口まわりを動かして、筋肉のこわばり具合をチェックする。「歯ヨガ」を始める前と終えた後に行うと動きがスムーズになるなどの違いが実感できるという。顎関節症の改善にも効果的。
【1】左右にこわばりがないか確認する
背筋を伸ばして軽く口を開き、10秒ほどかけて、下あごを左右に大きくゆっくり、動かしてみる。左右差があるならこわばりが。
【2】前方にこわばりがないか確認する
軽く口を開き、10秒ほどかけて下あごを前に大きくゆっくり動かしてみる。動かしにくい部分があればこわばりのある証拠。
【3】口が大きく開くか指を使ってチェック
口を縦に大きく開ける。指が縦に2本半入るくらい開かなければ口まわりの筋肉にこわばりが。顎関節症の疑いも。ただし、無理に開けないこと。